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2025.12.07

運転歴65年のプロが語る思い出のクルマ。ポルシェ964、デイムラー ダブルシックス、ルノー サンク バカラを同時所有!?

運転歴65年を超える自動車ジャーナリストの岡崎宏司先生が、今また乗りたいと思うクルマを回想。まさかの電動カートからポルシェ964まで縦横無尽に語ります!

BY :

文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト)
CREDIT :

イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第272回

「もう1度乗ってみたいクルマ達!」その2 

イラスト 溝呂木 陽 運転歴65年のプロが語る思い出のクルマ。ポルシェ964、デイムラー ダブルシックス、ルノー サンク バカラを同時所有!?
「もう1度乗ってみたいクルマ達!」、今回は「少し変わったクルマ!?」からスタートする。

ロングビーチから高速船で小1時間。カタリナ島は小さな島だが、美しい!。そんな島の空気を汚さないよう、特に主要都市のアバロンでは、内燃機関を積むクルマの使用は厳しく制限されている。

では、自由に動きたい旅行者はどんな手段で動けばいいのかというと、、多くは、自転車と電動ゴルフカートで移動している。

わが家も「電動カート」をレンタル。ゴルフ場で使われている4人乗り電動カートを、ほぼそのままイメージしていただけばいい。
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つまり、運転席前のガラス窓と、簡単なルーフ、そして、2人は後ろ向きに座る至極シンプルな4人分の座席があるだけだ。

スピードは出ないが、島を巡るのは、登り下りとカーブの連続する類の道が多いので、トルクと瞬発力のある電動カートは走り易い。

それに、美しく温暖な島の優しい風に包まれて走る心地よさも、忘れ難いものになった。

次は、、いきなり、バイクの話しに移るが、たしか1986年、46歳の時だったと思う。

僕が寄稿していた出版社の若い編集者と仲良くなり、彼がバイク好きだったので、僕もムラムラとなり、リターンライダーに、、。

で、手に入れたのがトライアンフ ボンネビル 650。ほぼ誕生当時のままの姿、そして、並列2気筒360度クランクのエンジがもたらす「独特の鼓動感とサウンド」に惹かれ、すぐ村山モータースに駆け込んだ。

それから2年後、クラシックBMWの中でも貴重な存在だった「R50S」とたまたま出会う幸運に恵まれ、その場ですぐ入手した。僕の車歴? の中で、もっとも自慢したい一台だ。
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同じ時期、マツダが作り、フォードブランドを扱うオートラマ店で販売したコンパクトカー、「フォード フェスティバ」に関わる、大きな仕事があった。

オートラマから、フェスティバのPR誌とフォトブックのメイン部分の構成、文章、写真を全面的に依頼されたのだ。

フォトブックは流石に怖気付き、写真は親しいプロカメラマンに頼んだが、PR誌の方は、構成、文章、写真、、すべてを僕がやった。

取材も海外にまで足をのばす大掛かりなものだったが、細かな注文など一切なく、すべてを任された。

それだけに、大きなプレッシャーがかかるはずなのだが、キャンバストップのフェスティバで駆け巡ったハワイとカリフォルニアでの仕事は、楽しくハッピーな思い出しかない。

ポルシェは僕のもっとも愛するクルマだが、なかでも、兄が持っていた356の最終モデルと、僕が1989年に買った964が、もっとも愛おしい。

964をを買う2年前に930を買ったのだが、正直なところ、静的な面でも、動的な面でも、期待外れだった。
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しかし、964は大きな変身をしていた。静的にも動的にも、「見事な!」と言える変身を遂げていた。930で失いかけていたポルシェへの憧れと尊敬の念は964で一気に戻った。

国際試乗会で964に乗ったその夜、僕はオーダーを入れた。日本人では、多分、もっとも早いオーダーだったはずだ。

964は期待通りだった。日常の走りでも、箱根の走りでも、、満足感に浸る日々だった。

僕はコンパクトなクルマが好きだとは何回も言っているが、その面でも964は文句なしだった。わかりやすくいえば、964のサイズはカローラ並みだったのだ。

パワーがあるとは言えなかったが、コンパクトなサイズと、素直な身のこなしで、気持ちよく、楽しく走らせてくれた。

その後もポルシェはずっと好きなブランドであり続けているが、代を重ねるごとにサイズは大きくなり、僕の愛車候補からは外れた。
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1989年といえば、当時としては「凄まじい‼」と言えるほどの走りの性能で、世界を驚愕させたR32型GT-Rが誕生した年だが、このクルマの開発には初期段階から深く関わっていた。

多くのクルマの開発に関わってきた僕だが、R32型GT-Rはもっとも思い入れが深い。

ただし、街走りでリアウィングのつくクルマに乗るのは照れくさいので、手元に置くことはなかった。

「大きなサイズはノー」と言ってきた僕だが、その壁を突き破ったのがデイムラー ダブルシックス。

エレガントな容姿と、V12エンジンのもたらす心地よく贅沢な感覚とパフォーマンスに惹き込まれ、サイズの壁は破られた。

特に、アイドリングでの囁くような鼓動感には「うっとりさせられる」ほど惹かれた。

エレガントな容姿とは裏腹に、アクセルを深く踏み込んだ時のダブルシックスは速い。一度、筑波サーキットを走らせたことがあるが、下手なスポーツカーなど凌ぐようなタイムを刻んだのには驚いた。
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ちなみに、ダブルシックスは、1991年モデルと最終の1993年モデルを買った。最終モデルはボディカラーも内装もオーダーした。

ポルシェ964とデイムラー ダブルシックスのコンビネーションは最高だったが、家内は一人で乗る時は964にしか乗らなかった。

「ダブルシックスは好きだけど、ヘビーというか、立派すぎて、、私には似合わない」というのがその理由だった。

そんな家内がひと目惚れしたのが、「ルノー サンク バカラ」。仲の良い店長がいたので、なんとなく立ち寄ったルノーデーラーに飾ってあった黒のサンク バカラを見た途端「これ欲しい!!!」となって、その場で決まり!

結果、わが家にはポルシェ964、デイムラー ダブルシックス、サンク バカラの3台が同居することになった。短期間だったが、なんともハッピーな時を過ごした。

1994年、95年には、アルファロメオ164と155がやってきた。164は黒とシルバーの2トーン、155は赤だった。対照的なボディカラーの2台のアルファロメオが、並ぶ光景はなかなかいいものだった。
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164のV6はパワフルでレスポンスもよく、実に気持ちのいい走りだった。加えて、高速の直進安定性がよく、高速道路でスピードを抑えるのはけっこう辛かった。

155は直4の2ℓエンジンだったが、滑らかに気持ちよく、、いや、「艶やかに回る!」エンジンだったと言った方がいいだろう。

164のフットワークは硬めでキビキビしていたが、155はソフトめでしなやか。

同じアルファロメオながら、走りのイメージはかなり異なっていた。だが、「ドライバーを楽しませる!」という点では同じだった。

1995年には、大好きなMGBにもう一度乗りたいとの思いが募り、手に入れた。このMGBの話はもう何度もしているが、「もう一度乗りたいクルマ!」となると、絶対外すわけにはいかない。

当時は、コンディションの良いMGBはなかなか見つからず、よく出入りしていた輸入車販売店のオーナーに相談して探してもらうことにした。

加えて、どうしてもHT付きがほしくて、同時に探してもらったが、こちらもけっこう難航した。
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でも、時間はかかったが、コンディションの良い、MGBとHTが見つかった。日本でも英国でもなく、アメリカで見つかった。

なので左ハンドル。、、だが、僕はそのテのことにあまり拘りがないので、アメリカの売り手の「コンディションはいいよ!」という言葉を信じて買うことを決めた。

ボディカラーはMGBでもっとも多いベージュでHTは白。外観も、パワートレインも、足回りも、コンディションはまずまずだった。ほぼ、そのままでも乗れる状態だった。

でも、ベージュのボディに白のHTの組み合わせは、なんとなくぼんやりしていて面白くない。ホイールもワイヤースポークにしたい。内装も悪くはないけど「イマイチだな」、、と、どんどん思いはエスカレート。

結局は、ほぼフルレストアに近いところまで手をいれることになってしまった。

ボディはブリティッシュグリーン。HTのブリティッシュホワイトもくすんでいたので塗り替えた。ワイヤホイールも手に入れた。もちろんスピンドル センターロック式だ。
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内装にもかなり手を入れ、シートは完全に貼り替え、縁には白のパイピングを入れた。

仕上がった時、作業のほとんどすべてをお任せしたショップのオーナーには、「新車以上に綺麗になっちゃいましたね‼」と、笑いながら肩を叩かれた。

僕が乗った多くのクルマの中でも、このMGBは最高の思い出であり、宝物でもある。
岡崎宏司(自動車ジャーナリスト)
1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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