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2020.01.12

964型ポルシェ911がいま、最高な理由

世界的に高騰を続けるポルシェ911のタイプ964(1989〜1993)。その魅力のひとつがいまではあり得ないコンパクトなサイズ感だ。964を発売当時、愛車にしていた著者がその魅力を改めて検証する。

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文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第125回

964型サイズの911がほしい!   

正月休みが終わってほぼ1 週間。心も身体も、まだまだ「仕事全開モード」には入っていないはず、、お察しします! 笑

僕は穏やかな新年を過ごした、、が、正月2日にiPhoneを11 proに、家内も同時にiPhone7を8に交換。で、その設定に手間取って、悪戦苦闘したのが唯一の汚点!?。

でも、箱根駅伝では青山学院(わが母校)が優勝! 家内共々、iPhone は新しくなったし、お雑煮も数の子も美味しかったし、、いい新年だったとしておこう!

さて、今年初の備忘録は、ポルシェ911を題材にしたボディサイズのあれこれを書かせていただく。

前にも触れたが、僕の身近にポルシェが住み着いたのは1963年。兄が356Cを買ったのが初めてだが、見た目も、走り味も、乗り味も、、すべての点での高い質感に驚き、感激したことを今もハッキリ覚えている。

そして、僕が初めて911を買ったのは1987年。1985年モデルの2年落ちのカレラを中古で買った。生まれて初めてポルシェが僕のものになったことで、有頂天だった。

でも、有頂天だったのは始めのうちだけで、時間の経過と共に、なんとなく喜びは薄れていった。それもけっこう短時間の内に。

930シリーズは1974年を起点にしたモデルで、87年当時にはいろいろな意味でいささか陳腐化していたからだろう。

85 年モデルは、フロアパネルとバルクヘッドの板厚が0.75から1mmに引き上げられ、それ以前のモデルより、ボディ剛性がかなり上がっていたことはプラスだったが、、。

そんなことで、1989年に964型がでたときは迷うことなく買い換えた。即決だった。
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911は、大きく外観イメージを変えることは許されないクルマだが、ディテールは美しくなり、明らかに新しい時代の911へと姿を変えていた。パーツの80 %は新設計され、ボディもフルモノコック化された。

僕がいちばん嬉しかったのは「見た目」のモダン化だったが、もうひとつはボディサイズがコンパクトなままだったこと。そう、964のスリーサイズは4245×1660×1310mm。
ほぼ同時期(1991年)に誕生した7代目カローラ(4270×1685×1380mm)より小さい。

当然、取り回しはいい。加えて、小柄で軽量であれば、スポーツカーとしての動質にも少なからぬプラスを生む。

911のルーフ形状は高速でのリフトには不利で、事実、160k m/h 以上では、誰もが実感できるほどのリフトを招いた。高速になるにつれて接地感はどんどん甘くなり、ドライバーを不安にする。感度のいい人なら120k m/h 辺りから不安を覚えただろう。

それを抑えるため、964以前の911はリアに
固定スポイラーを取り付けていたが、僕はそれが大嫌いだった。しかし、964では80k m/h 以上で自動的に作動する格納式電動スポイラーが組み込まれた。これも964を買う大きな動機のひとつになった。

少しそれたが、本題のサイズの話しに戻ろう。

カローラより小さな964だが、コクピットは十分快適だった。当時から、911は「スーツも似合うスポーツカー」と呼ばれていたが、その通りだった。家内と共に、ドレスアップしてパーティに出かけるようなときにもなんの問題もなかった。

家内も911の運転をとても楽しんでいた。当時はデイムラーダブルシックスも持っていたが、家内はほぼ911しか運転しなかった。
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964はどこに行っても容易に駐車できることがありがたかった。カローラ以下のサイズとなれば、とうぜんそういうことになるが、日本の駐車事情下では大きな魅力だった。

しかし、1990年代に入ると、衝突安全性能の引き上げが重要な課題になり、「衝突安全ボディ」の採用が急ピッチで進み始めた。

衝突安全ボディに対する取り組みは、前後からと側面からの衝撃を吸収緩和するクラッシャブルゾーンの確保がまずは基本になる。

素材技術や構造技術もどんどん開発され進化はしたものの、やはり、クラッシャブルゾーンの確保が基本であることに変わりはない。
その結果、クルマのサイズは大きくせざるを得なくなった。

メーカーは市場のニーズにも応えなければならないが、サイズに対する市場のニーズもまた「大きい方」へ引っ張る力になっている。

同クラスを乗り継ぐにしても、上位クラスに移行するにしても、ユーザーの多くは「現在より立派で快適なクルマを求める人が多い」ことは調査でもでているし、そうだろうことは容易に想像もつく。

そしてもうひとつ、、人々の身長が大きくなっているという事実も無視できない。
多くの国での平均身長は「10年に1cm伸びている」とされるが、ドイツ人男性の現在の平均身長は182cm。70年前のデータでは175cmなのでピタリと合っている。日本男性は現在171cmだが、僕が20才の頃、つまり60年前の平均身長は164cmだったと記憶している。

そんなことで、クルマの大型化は「世の流れに沿ったもの」と言えるのだろうが、そろそろ限界に来ていることも確かだろう。

僕は今、GOLF GTI Perfomanceに乗っている。
ほんとうは、人生最後の1台(になるかもしれない)は911にしたかったのだが、サイズの壁を乗り越える勇気と自信がなかった。
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パワーやスピードは自分の意志でどうにでもコントロールできるが、いろいろな意味での視力が衰えた今、サイズの壁は越えられなかった。

ちなみに最新の911は4519×1852(含むミラーでは2024 )×1300mm。このサイズ、走っている時は問題ないし、「連続したタイトなコーナーを攻めろ」と言われれば喜んで攻める。

それなのに躊躇するのは、旧い規格のままの幅の狭い駐車場が未だ多く存在するから。高齢になりバックが下手になったことと相まって、ここが911の選択を思いとどまらせたいちばんの理由だ。

では、少し旧い911にすれば?、、という話しも出てくるが、高齢者の僕は、できるだけ「最新の運転支援システム」がほしい。なので、買うなら最新のモデルしか選択肢はない。

もしも、964と同じような(長さは4300mm以下、幅は1800mm以下ならOK)コンパクトな911がデビューしたら、僕はすぐデーラーに直行する。

ちなみに、僕が乗っていた964は今も健在。僕からバトンを受けてくれた方が、とてもいいコンディションをキープしてくれている。

元日産の技術者、、R32型GT-Rから始まり、R33型、R34型の開発で多くの接触があった方である。今もいいコンディションとわかっているのは、その方が、数年前、僕に元愛車のステアリングを握らせてくれたからだ。

こんな原稿を書いていると、また964のステアリングをにぎりたくなる。近いうちに連絡して「おねだり」してみようかと思っている。

● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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