2026.04.13
元プロ野球選手:澤村拓一
元プロ野球選手・澤村拓一の腕時計選びの目線は“確かな価値”があるか
時計はオトナの必需品であり、自身の足跡を雄弁に物語る記念品でもあります。巨人軍を優勝に導きメジャーリーグでも剛腕を誇った投手が信じたのは、リアルな価値を持つ本格時計だけでした。
BY :
- 文/長谷川 剛
- CREDIT :
写真/大森 直(Table Rock inc.) ヘアメイク/沖山吾一 編集/長谷川剛(T8)
元プロ野球選手・澤村拓一が惚れた腕時計とは

▲ シンプルながら上質なアイテムを好む澤村さん。オーデマ ピゲのロイヤルオーク オフショア クロノグラフはその象徴たる一本です。トム ブラウンのBDシャツに合わせ、爽やかに付けこなしていました。
読売ジャイアンツでは4度のリーグ優勝に加え、日本シリーズでの優勝にも貢献。NPBにおいては最多セーブの個人タイトルを一度獲得のほか、新人王を攫うなど華々しい経歴を誇る伝説の剛腕、澤村拓一さん。
国内での圧倒的な戦歴のみならず、2021年にはボストン・レッドソックスに移籍し、メジャーリーグでも活躍しました。MLB通算100試合登板と100奪三振を記録するなど、本場米国での無双っぷりは今でも語りぐさになるほど。
その後は、千葉ロッテマリーンズに復帰しつつ、今年2026年の1月に惜しまれながらも引退を表明。現在はプロ野球の試合解説や講演、そしてテレビ出演などにて忙しく全国を駆け回っています。
インタビューに際し、スタイルやファッションに強いこだわりをもつわけではないと前置きする澤村さん。しかし、芯の通った生き方を貫く姿勢は会話の端々からもビシビシと伝わります。もちろん時計に関しても、その選び方は剛直ストレート。今回はなかでも思い入れの深い3本を、特別に見せていただきました。
大事なのは値段や人気ではなく、そのモノの価値
何かの記念日や節目に高級時計を手に入れる選手も多いベースボール界隈。澤村さんもこれまで著名な時計を幾つも手にしてきました。とりわけ思い出深い一本が、オーデマ ピゲのロイヤルオーク オフショアだと語ります。
「必ずしも記念として時計を手に入れるわけではありません。ただ、2015年だけは自分にとって別格でした。その年は先発からリリーフに正式に転向した最初のシーズンです。最終的にセーブ数も36を達成し、年棒が1億を越えました。ひとつのヤマを超えたということで、特別な時計を探したのです。
それまでは、先輩である内海哲也さんからプレゼントされた、シャネルのJ12を付けていたので、このロイヤルオーク オフショアは、自分で手に入れた最初の本格時計です」

▲ ロイヤル オークのスポーツコレクションとして人気を誇る「ロイヤル オーク オフショア」。こちらは44mmケースのクロノグラフモデルです。
そんな重要な一本にオーデマ ピゲを選んだ理由は、どこにあったのでしょう?
「やはり確実な価値ですね。これは時計だけに限りませんが、確かな価値を持つモノにしか僕は興味がないんです。いくら著名で人気があったとしても、価値が伴わなければ自分にとって意味がありません。
その点、オーデマ ピゲは世界的に認められた確かな価値がある。なかでもオフショアはひと目見て気に入ったモデルです。ブティックに行く前からブラック×PGモデルを指名して直接買いに行きました。だから店頭でアレコレと迷うこともありませんでした」

▲ オーデマ ピゲの「ロイヤル オーク オフショア クロノグラフ」は2015年に購入したもの。18Kピンクゴールドのケースに合わせたブラックセラミックベゼルが豪奢な迫力を演出します。内蔵するキャリバーは自社製の3126/3840。55時間のパワーリザーブを発揮。

ロイヤルオーク オフショアといえば、オーデマ ピゲのなかでも迫力あるビッグサイズがポイントです。これを付けて球場などを出入りしたのであれば、さぞかし目立ったのでは?
「まあ、球界には時計ファンもたくさんいますから。僕の場合も『あ、ついに買ったんだ』くらいの軽い反応でした(笑)」
やはりクロノグラフという機能性が、スポーティな感性にマッチしたのでしょうか?
「いや、クロノグラフは特に意識していません。その機能を作動させたこともありません。ただ、以前にトゥールビヨンモデルを使っていましたが、繊細な複雑時計はどうしても気が休まらないもの。飲んでいる時も、どこかぶつけてしまうかと気が気じゃない(笑)。それゆえ煩わしさの少ない、使い勝手の良いモデルを選ぶようにしています」
人との縁が取持ったコスモグラフ デイトナとの出会い

▲ 先輩の紹介で出会うことができたというロレックスの「コスモグラフ デイトナ」。40mmケース径のこちらは、立派な体躯を持つ澤村さんが付けるとむしろシックな印象です。
何よりも価値に重きを置く澤村さん。次に目をつけた一本が、何を隠そうロレックスのコスモグラフ デイトナです。
「実はロレックスも、これまでGMTマスターなどいくつかのモデルを手にしました。しかし本物の価値をもつと自分が最終的に判断したのはデイトナでした。ただし、この一本は自分で探し求めたというより、ある人からのお声掛けで手に入れたもの。ジャイアンツ時代の先輩である炭谷銀仁朗さんと、当時彼が懇意にしていた百貨店に一緒に出掛け、買うことができました」
このコスモグラフ デイトナも先程と同様にブラック×PGスタイルのモデル。このコンビネーションがお好みなのでしょうか?
「ソレは、たまたまの偶然です(笑)。店頭に出されたモデルをそのまま購入しました。これに関しては、まさに人との縁。迷うことなくありがたく購入しました」

▲ ロレックス独自のエバーローズゴールド製のケースは、リッチかつ絶妙な暖かみを放つところが特徴。ブラックラバーベルトがスポーティな印象を引き立てます。
このモデルに関しては、実際に付けてみて気付いた点などありましたか?
「ルックスやサイズなど、シンプルなところが素晴らしいと思っています。大概のスタイルにマッチするところもポイントです」
コスモグラフ デイトナをことのほか気に入った澤村さんは、もう一本、SSモデルをお代わりしたのだとか。

▲ 日常にも使いやすい万能性を持つことでお気に入りのロレックス デイトナ(恐らくref.116500LN)。こちらはステンレススチールケースにセラクロムベゼルをあしらった、いわゆる6世代目となるモデル。
「単純にもう一本欲しくなって手に入れました。理由は確実な価値があることに加え、とてもバランスの良い時計だと改めて感じたから。やはり派手すぎると、そのものだけが目立ってしまいます。デイトナは適度な存在感を放ちながら定番的なデザインで、これ見よがしな印象になりません。そういう意味で気軽に付けられる良い時計です」
やはり目立ちすぎるものよりも、サラッと付けこなせる時計のほうがお好みなのでしょうか。
「時計に限りませんが、ワル目立ちは大人として慎みたいところ。野球選手でも私服が非常に派手好みの人を多く見掛けます(笑)。見栄を張るのも良いのですが、押しつけがましい服装は個人的にいただけません。
その点ではアメリカなど海外選手の方がスマートなように感じています。自分も今年で38歳。良いものをシンプルに身に着けるスタイルで十分だと思っています」

▲ 澤村さんが最高のロレックスと認める「コスモグラフ デイトナ」。初出を2016年とするref.116500LNに採用されるムーブメントは、自社製cal.4130。ホワイト文字盤かつインダイヤルにブラックサークルを配していることから“パンダダイヤル”と呼ばれ、根強い人気を誇ります。
時計も人生もブレずにその本質を見極めることが大事
澤村さんは2021年からメジャーリーグに移籍し、100奪三振などの記録を残しています。アメリカでの野球活動のほか、海外生活において得た事柄やエピソードなどはありますか?
「基本的な考え方には大きな影響はありませんが、“許せる範囲が広がった”という部分があります。アメリカはやはり自己主張の国。ですので“自分はこうしたい”を随所でストレートにこちらにぶつけてきます。逆に自分の主張を抑えていると、ナメられかねないのがアメリカです。
ただし、自己主張とワガママは明らかに違います。厳然としたルールの中で、自分らしさをしっかり確立させるということ。もちろん、自分も主張するワケですから、相手の言い分も受け入れることが求められます。そういった海外選手生活のなかで、変化した部分は少なからずあるでしょう」
しっかり自己主張を行い、自分のリクエストを周囲に認知させるというのは、まだまだ日本人が苦手とするところかもしれません。

▲ 言葉を選んで丁寧に話を進める澤村さん。会話の中にも実直かつ真摯な人柄が見て取れます。
「アメリカで印象的だったのは、あるゴルフ場で見掛けたシーン。ショットをする際、セオリー通りの番手ではないクラブを選択した子供がいました。しかし周囲の大人は特に注意せず、“まずはソレでやってみろ”とばかりに見守っていました。日本ならば“このホールでは、この番手のクラブで打つべき”と制してしまうはず。
まあ、これは日常のワンシーンにすぎませんが、野球の選手育成にも似たシーンがあると感じます。その人の個性を伸ばすことよりも、とにかくセオリーを重視するのが我が国の基本スタイル。そして昨今ではデータを偏重する風潮も強く見られます。個人のスタイルをまず十分に伸ばすことで、初めてその人にマッチした技術が確立します。そこでようやくデータなどが生きてくるように個人的には感じます」
そして澤村さんは、自分なりの技術を確立するには、何よりも“継続”が大事であると強調します。
「いろいろ考え、自分なりに工夫を続けることは、野球に限らずあらゆるシーンで大切なはず。もちろん多くの人も理解していることでしょう。しかし実際に継続できている人は多くありません。
ペンシルベニア大学のアンジェラ・リー・ダックワース教授が唱える“GRIT”は、自分も強く共感する継続に関するキーワード。いわゆるGuts(根性)、Resilience(復元力)、Initiative(自発性)、Tenacity(執念)といった言葉に由来しています。
IQなどに関わらず粘り強く継続することで、誰でも一定の成果を勝ち取れることが、大学の研究にて実証されているのです」

また物事を継続させるためには、本質が伴っていることも肝心だと澤村さんは付け加えます。
「なぜ投げ続けるのか。なぜピッチャーとして挑戦し続けるのか。その軸がブレてしまうと、継続しようにもモチベーションが保ちにくい。
例えば野球のコーチであるなら、若手を育成するという確たる本質があります。にもかかわらず、多数決に忖度したりして保身ばかりに心を砕くようでは、無駄な時間を過ごして終わります。
時計も同様であり、僕の場合は“価値”ある時計に魅力を感じ、そこが本質だと捉えています。だから、手に入れるかどうかは、高い価値を有し、その価値が継続するかどうかが肝心。
一度きりの人生を共にするなら、価値ある時を刻み続けてくれるものであってほしいと願っています。価値ある時計だからこそ、愛用が変わらず継続できるのです」
現在はプロ野球の試合解説、講演、各種テレビ出演にて忙しく活動を続ける澤村さん。また、一方で将来に向けた事業開始の準備にも余念がないと語ります。
いずれにしてもすべてにおいて信念を持って突き進む姿はまさに“男”そのもの。これからの活躍にも注目が集まること間違いありません。

● 澤村拓一 (さわむら・ひろかず)
1988年生まれ、栃木県出身の元プロ野球投手。中央大学野球部を経て2010年、読売ジャイアンツから単独1位指名を受けプロ入り。ジャイアンツでは4度のリーグ優勝、1度の日本シリーズ優勝に貢献。2020年、千葉ロッテマリーンズへ移籍。2021年2月16日にボストン・レッドソックスと2年契約を結ぶ。2023年、千葉ロッテマリーンズが獲得を発表し、3年ぶりに復帰。2026年1月、現役引退を表明。現在は野球の解説、講演、テレビ出演等を中心に活動。
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