2025.06.07
たとえ一時的でも「時を忘れることができる」なんて、さすがエルメス!
腕時計のプロたちが魅了された一本をリコメンドする本企画。今回は時計&モノジャーナリスト/編集者の渋谷ヤスヒトさんが「エルメス」の『エルメス カット タンシュスポンデュ』を選びました! エルメスらしい、そのアイデアと機能が、世界中から改めて注目されています。
BY :
- 文/渋谷ヤスヒト
- CREDIT :
編集/岸澤美希(Web LEON)
選者:時計&モノジャーナリスト/編集者 渋谷ヤスヒト
14年ぶりにあの機構が帰ってきた!


実は、このタンシュスポンデュ機構が搭載されたアルソー タンシュスポンデュがリリースされたのは、今から14年前の2011年のことです。
筆者はその時のバーゼルフェアで当時のエルメス・オルロジェ社のCEOと、この機構を開発したスイス時計業界のレジェンド技術者ジャン‐マルク・ヴィダレッシュさんのふたりにインタビューの機会を得て、「現在時刻をわざわざ、わからないものにする」「異次元の時間に飛ぶ」という独創的なアイデアとメカニズムに感心しました。そして、いつかSSモデルを手に入れられたら……と、ずっと思いながら今日まで来てしまいました。
▲ 39mmという小ぶりなケース径ゆえ、「止まった時間」を共有するペアウォッチとしても最適。 ©Tom Johnson
▲ ほのかにスポーティな雰囲気も感じさせる白文字盤もラインナップ。「エルメス カット タンシュスポンデュ」自動巻き、18KRGケース(39mm)✕ブレスレット。10気圧防水。488万700円(予価・2025年8月発売予定)/エルメス(エルメスジャポン) ©Tom Johnson
▲ 39mmという小ぶりなケース径ゆえ、「止まった時間」を共有するペアウォッチとしても最適。 ©Tom Johnson
▲ ほのかにスポーティな雰囲気も感じさせる白文字盤もラインナップ。「エルメス カット タンシュスポンデュ」自動巻き、18KRGケース(39mm)✕ブレスレット。10気圧防水。488万700円(予価・2025年8月発売予定)/エルメス(エルメスジャポン) ©Tom Johnson
時計は「時間を知る道具」なのですから、それは当然のこと。絶対的で客観的な時間を扱うのが時計というものなのです。
ところがエルメスは、一時的にではありますが「人間の時間感覚に寄り添ってくれる時計」を作ってしまいました。「タンシュスポンデュ」は、英語では「タイム サスペンド」。つまり「時間を保留する」という意味の時計なのです。
「まさに“エルメスだから”なエスプリの効いた一本」(渋谷)

とくに新登場のエルメス カット タンシュスポンデュで感心してしまうのは、「時分を存在しない時間にしてしまう」という演出にくわえて、普通ならスモールセコンドのインダイヤルを、わざわざ逆回転の、しかもあえてスモールセコンドにならない24秒で一回転という動作インジケーターにしていること。
これぞエスプリ、大人の遊び心。今回、一本取られたところです。


● 渋谷ヤスヒト(しぶや・やすひと)
時計&モノジャーナリスト・編集者。中堅出版社で文芸編集者、モノ雑誌編集者となり、1990年代から時計取材を開始して気がつくと30年超え。時計専門誌やウエブマガジンに、時計を中心にあらゆるモノについて、また現場インタビューを展開中。
■ お問い合わせ
エルメスジャポン 03-3569-3300