人気のアンティークウォッチは、いまコレが狙い目！

時計業界で「アンティーク」と言えば、1960年代までの時計を指す。正しく定義をすると今から100年以上前に作られたモノになってしまうが、選べる時計が極端に少なくなる。というわけで、1960年代まで、というのが時計の世界のルールとなっている。

アンティークウォッチはデザインが面白いし、作りも良いし、価格も手ごろなため、最近人気を集めるようになった。しかし、正直なところ、万人向けとは言いがたい。この時代の時計は、防水がまったく効かない上、磁気に弱く、修理費も決して安くないのだ。いわゆる「旧車」と同じで、買いたいものがあっても、うかつに手を出すと火傷をする。

というわけで、一部の時計好きたちは、1980年代から90年代の時計に注目するようになった。普段使いできる実用性を持っている上、今の時計には少なくなった手作業の味も残っているためだ。しかも現行品より維持には気を遣うが、アンティークに比べるとずっと楽だ。クルマに例えるならば、メルセデスのW123や、ポルシェの930だろうか。

1980年代から90年代の、魅力的な時計をいくつか挙げたい。まずはプチコンプリ付きの時計。そもそも機械式時計のリバイバルは、ムーンフェイズとクロノグラフという、クオーツではトルクが足らずに実現が難しかった時計に始まった。従って、各メーカーは、このジャンルには魅力的なモデルを投入した。

筆頭にあげたいのは、ブランパンのトリプルカレンダーだ。プゾーの手巻きやフレデリック・ピゲの自動巻きにカレンダー機構を加えたこのモデルは、クラシックなデザインと、アンティークに通じる丁寧な作り、そして防水の効いた良いケースを備えている。にもかかわらず、価格はまだ控えめなのだ。高級時計とは何か、を知りたい人に、1980年代から90年代のブランパンはうってつけだ。

クロノグラフにも、面白い時計は少なくない。ブライトリングの「クロノマット」は定番中の定番であり、市場の玉数も多い。作りは現行品の方がはるかに良いが、80年代から90年代までのクロノマットには、アンティークに通じる味がある。しかも搭載するムーブメントは汎用品を改造したものなので、維持も決して難しくない。お勧めしたいのは、13***以降のモデルだ。それ以前のモノも魅力的だが、ケースの出来は以降の方がいい。

タグ・ホイヤーの手巻きクロノグラフもまた見逃せない。手巻きのレマニアムーブメントを載せた「カレラ」や「ホイヤー125周年モデル」などは、アンティークそのもののデザインを持っているにもかかわらず、普通に使えてしまうのだ。ケースの完成度は1960年代のホイヤーよりはるかに良く、1990年代を代表する"ネオ・ヴィンテージ"と言えるだろう。

また、ドレスウォッチが欲しい人にとっても、1980年代から90年代は実に魅力的な年代だ。防水も十分ではないが、少なくともこの時代までは、1960年代と同じ時計作りがほぼ残されていた、と言えるだろう。現行品に比べてサイズも小さいし、薄いドレスウォッチを探すなら80年代と90年代のモデルは要チェックだ。

例を挙げるなら、手巻きのロレックス「チェリーニ」には優れたモデルが多い。しかもスポーツモデルほど高くないのである。問題は値段があまり高くないため、市場に出てこないこと。欲しい人は、こまめに探すといいだろう。

この時代は、パテック フィリップやヴァシュロン・コンスタンタン、ブレゲ、オーデマ ピゲなども、薄いドレスウォッチで傑作、佳作を多く作っている。カルティエも同様で、文字盤にPARISと銘打たれた手巻き時計は、今後さらに人気を集めるに違いない。

では、こういった時計を選ぶとき、何に気を付けるべきなのか。アンティークより使えるとは言え、今から数十年前に作られた時計である。もし買うならば、きちんと整備されたものを選ぶこと。

そしてできれば、外装があまり痛んでいないものを選ぶといい。例えば、文字盤にクラックが入っていないとか、針の塗装がはげていないなどである。1980年代から90年代の時計は、それ以前と比べてケースの気密性は高まった。にもかかわらず、文字盤や針が痛んでいる個体は、悪く扱われたと考えていいだろう。

そしてもうひとつが、安物買いは避けること。こういったお約束を知って、こまめに時計屋を回ると、きっと面白いネオ・ヴィンテージが見つかるに違いない。