2018.10.07

敷地9000坪の絶景宿にある、日本に３つだけの名湯って!?

「日本秘湯を守る会」「日本湯宿を守る会」に初代より加盟している新潟、奥湯沢の老舗温泉旅館「貝掛温泉」。大自然の中の日本情緒あふれる佇まいは、心から落ち着ける居心地のよさ。そしてもちろん、食事もお酒も美味です。

CREDIT :: 文／福田豊

今回の目的地は、飛び切り特別な宿。新潟、奥湯沢の「貝掛温泉(かいかけおんせん)」というところです。周囲にスキー場の多いことでも古くから親しまれ、近年はサマフェス会場に近いことから若い常連も増えているそう。でも、それだけじゃない。何が特別なのか、というと……。

歴史、温泉、立地が、とにかく最高。秘湯ロマン、ここにあり

まず、歴史が長い。開湯されたのは700年前といわれ、戦国時代から湯治場として広く知られていました。かの上杉謙信もこの湯に浸かって、傷を癒し、英気を養ったとか。そして幾度もの大洪水で一旦廃業したものの、復興し、いまのカタチになってから半世紀。とにかく古い歴史をもつ名宿なのです。

また、温泉が良い。湯量が豊富で、宿の下から湧き出る完全な自家源泉。しかも日本には３つしかないといわれている“目の温泉”で、明治から昭和初期まで目薬として販売されていた、珍しい湯なのです。また、温度が37度と低めで、ゆっくりと長湯を楽しめるのがよい。湯温を高くした温泉もあり、しっかりと温まることもできるのがうれしいところです。

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木のぬくもりが感じられる昔ながらの構造の内湯。ぬるめの湯なので、じっくりと温っていると、湯の泡が肌を包み、日々の疲れを癒してくれる。
こちらは、湯温を41度前後に加温した内湯の中のあつ湯。高い天井に見える大きな梁に圧倒される。
岩造りの露天風呂は、春は新緑、夏は清流、秋は紅葉、そして冬は、ご覧のような雪景色が楽しめる。この露天風呂の湯口で、手のひらに湯をすくい、目に浸すことで目の疲れも癒える。

木のぬくもりが感じられる昔ながらの構造の内湯。ぬるめの湯なので、じっくりと温っていると、湯の泡が肌を包み、日々の疲れを癒してくれる。
こちらは、湯温を41度前後に加温した内湯の中のあつ湯。高い天井に見える大きな梁に圧倒される。
岩造りの露天風呂は、春は新緑、夏は清流、秋は紅葉、そして冬は、ご覧のような雪景色が楽しめる。この露天風呂の湯口で、手のひらに湯をすくい、目に浸すことで目の疲れも癒える。

さらに、立地が素晴らしい。貝掛温泉が建つのは国立公園内の一角。深い山中に入り、急な貝掛坂を下り、長く狭い貝掛橋を渡って、ようやくたどり着いたところに約9000坪の広大な敷地があり、そこにポツリと建つ一軒宿なのです。だから周囲にはコンビニはおろか、建物なんて一切ない。でもって自動販売機もない。あるのは、豊かな木々と草花と、清冽な渓流と、澄み切った空気。そして夜は満点の星々たち。辺り一面を自然に囲まれているから本当に静かで、心から和んでしまうのですよ。

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新潟の豊かな幸に洒落心を加えた絶品の夕餉に舌鼓

宿は、木造2階建て。本棟は、明治2年に建てられた趣のある館です。客室も畳と障子の日本旅館の伝統のつくりで、部屋風呂はなく、掛け流しの温泉にいつでも浸かれるという、やはり湯宿の伝統の形式。その大浴場と露天風呂が、古の情緒ある風情。そんな素朴で温もりのあるところが、なんとも心地よいのです。

「貝掛温泉」はどれだけ時代が変わっても、きっとこのままであり続けるでしょう。とはいえ、ただ、古いだけではないのです。

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客室「十万石」。部屋は、いずれも畳と障子の和室で、寝る時は布団という日本旅館の伝統そのまま。これぞ、ザ•旅館。
明治時代からの梁が天井をめぐる客室「史の間」は、なんとも言えない風情。この他、眺めのいい客室もあります。

客室「十万石」。部屋は、いずれも畳と障子の和室で、寝る時は布団という日本旅館の伝統そのまま。これぞ、ザ•旅館。
明治時代からの梁が天井をめぐる客室「史の間」は、なんとも言えない風情。この他、眺めのいい客室もあります。

実は、この宿、約10年前に代替わりをした現当主は、東京暮らしも長かったという、クルマやファッションも大好きな、洒落たオヤジさん。そうしてそのハイセンスさで夕餉をさらにお洒落に刷新したのです。

この土地ならではの野菜や川魚、新潟の海の幸も盛りだくさん。もちろん、これは基本。でも、そこに、稀少な味覚もオーダーできるようにしたのです。例えば、日本海沖で獲れた30センチを超えるノドグロの塩焼きとか、敷地内に流れる美しい川で獲れたイワナの刺身。さらにはソフトシェルクラブなんていうのも味わえる。

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また新潟ならではの美味なお酒もたくさん揃えている。もちろんコシヒカリも絶品。朝食も最高に美味なのです。

つまり老舗の伝統を守りつつ、新しい楽しさも加えている、というわけですね。それは、長く付き合える、一生ものの味わいなんです。だから、そんな「貝掛温泉」に足繁く通う、なぁんていうのは熟れた大人のオトコには大オススメ。長く付き合えるものこそが本当に価値のあるもの、というのを体現するライフスタイルです。そしてその助手席に乗る彼女とも、きっと長い付き合いになれる。恋する大人には最高の組み合わせなのですね。