2026.03.15
【イタリア・ピエモンテ州に食旅2】
【ワイン好き必見!】怒涛の11杯テイスティングも。“バルバレスコ”ホテルとロエロの宮殿ホテルが凄かった!
2025年の「The World’s 50 Best Restaurant」は、6月にイタリア・トリノで行われました。現地を訪れ、開催地に魅了された筆者が、トリノをはじめとするピエモンテ州の見どころを3回に分けてお伝えします。第2回はランゲ地方にある2軒のホテルをご紹介!
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- 文/大石智子(ライター)
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編集/森本 泉(Web LEON)
ワイン好きであれば、一度は訪れたいピエモンテ州のランゲ地方。そこはイタリア最高クラスのワイン、バローロやバルバレスコが生まれる地です。ワイナリー見学はもちろん、気になるのはどこに泊まるか。ピエモンテ州シリーズの第2回目は、ランゲ地方にある2軒のホテルをご紹介します。
あるワインに惹かれてホテルを予約

トリノから向かったのはアルバ駅。ともにピエモンテ州に属するトリノからアルバまでは鉄道で1時間20分。ワインと食を目当てに、多くのフーディーがアルバ駅を起点とするランゲ地方を訪れます。
そこは、「ワインの王」と称されるバローロと、「ワインの女王」と称されるバルバレスコを生む場所。どちらもランゲ地方を代表する品種“ネッビオーロ”から作られます。2025年の「The World’s 50 BEST」で32位、ミシュランの3つ星も獲得し続ける「Pizza Duomo」で食事をして、バルバレスコの絶対王者「GAJA」を詣でる。この2軒を巡る人は少なくないですし、アルバは秋の白トリュフ祭りも大人気。
そんなランゲ地方で筆者が向かったのが、「MARCHESI DI GRESY(マルケージディ グレジー)」というワイナリーが営むホテル「Dai Gresy(ダイ グレジー)」。トリノのレストランでそこのワインにすっかり魅了され、「ホテルがあるなら現地で飲んでみたい!」と衝動に駆られて宿泊予約をしたのです。

▲ 「Dai Gresy」のHPに掲載されていた、ワイン好きのおとぎ話みたいな写真。
ブドウ畑の丘の上に立つホテル
タクシーがバルバレスコ村に差しかかると、丘陵地帯いっぱいにブドウ畑が広がります。季節は夏。鮮やかなブドウの葉の緑が、穏やかな海のように人を癒します。

▲ ブドウの四季を感じられる立地。
「Dai Gresy」はブドウ畑を縫うように走った先の丘に立っていました。瀟洒な邸宅かと思う外観で、客室数は11のみ。元は農家の家でしたが、モダンにリノベーションされています。それが、本当にセンスがよく、スモールラグジュアリーを体現する空間。階段に入れた極細照明に始まり、青とも緑ともつかない客室の扉、異なるデザインをあえて並べたタオル掛けなど、すべてのディテールが絶妙な塩梅です。

▲ バルコニーからの空気が美味しい。
そして何といっても、自室の窓の外にブドウ畑が広がるのがたまりません。泊まった7号室はバルコニー付きで、外に出て深呼吸をしたら本当に来てよかったと実感。
小さなホテルなのでラウンジとレストランが一体となり、食事もワインもリビングで寛ぐようにいただけます。そこで飲んだ「2021 Martinenga Barbaresco」が、うっとりするような美味しさでした。ひと口ごとに、ラウンジでの時間が美しく感じるようなワイン。ブドウ畑が見える素敵な部屋で、心から好きだと思えるワインを飲めることは、人生でも数えるほどでしょう。
ブドウ畑を見下ろすプールがあるので、プールサイドでの一杯も至福です。ディナーに再び「Martinenga Barbaresco」を飲むもよし、朝食に同社のシャルドネを飲むもよし。
夕食を終えて部屋に戻ると、ベッドの上には「Buona notte!(おやすみなさい)」のカードとともにクッキーとカモミールティー。こんなの、うれしくない人はいないでしょう! ベッドでかじるクッキーでしか得られない栄養があります。いい夢が見れそう。

▲ 具がハムだけのサンドイッチを自作します。
快眠したら、翌朝の朝食もこれまた最高。特に、ハムがびっくりするほど美味しかったのです。濡れたような舌触りで肉の香りが上品で、薄さも塩気も絶妙でした。普段から何回も食べるハムみたいなものが特別だった時、このうえなく幸せになりますよね。
あっという間の一泊。何かタイトルを獲っているわけでもないホテルですが、バルバレスコという地域を好きになるには十二分の場所でした。チェックアウト後、目指すはワイナリーでのテイスティングです。
怒涛の11杯テイスティング

▲ ブドウ畑の中心に見えるのが「Marchesi di Gresy」。
ホテル「Dai Gresy」から徒歩20分。ワイナリー「Marchesi di Gresy」に到着します。ワイナリー名を直訳すると、グレジー家の伯爵たち。1650年から一族が所有する土地で、1973年にアルベルト・ディ・グレジーがワインを醸造し始めました。

▲ ネッビオーロの繊細な香りを守る樽を使用。
出迎えてくれたのは、クアレッロ・アルベルトさん。大きな地図を手に、出だしから最大のポイントを説明してくれます。
「Martinengaはブドウ畑の名前でもあり、フランスでいうクリュ。バルバレスコ地区にはバルバレスコ村、トレイーゾ村、ネイヴェ村と一部アルバにまたがって66のクリュがあります。そのなかで唯一のモノポールが(フランス語で単独所有畑)がMartinengaです。1973年からこの名前を使用できるのは私たちだけなのです」
通常、有名なブドウ畑は複数の生産者が区画を分け合いワインを造るところ、単独所有だから土壌や日当たりなども好条件を独占できて、造り手の哲学がダイレクトに反映されるといいます。つまり、唯一無二の個性となり希少性も高い。モノポールはブルゴーニュの最高峰に多くみられ、代表的なモノポールに「ロマネ・コンティ」や「ラ・ターシュ」等があげられます。
なおかつ、「Martinenga」の畑は成熟が難しいネッビオーロ種にとって理想の条件。計12ヘクタールあり、そのなかに“Gauin”や“Camp Gros”といった2ヘクタールほどの小区画も含みます。

▲ トリノ出身で、大学時代から醸造学とブドウ栽培を学んでいたクアレッロ・アルベルトさん。
それぞれの個性を詳しく聞きながら試したワインは11種。うち6本が「Martinenga」からで、他はソーヴィニヨン・ブランやモスカートのスパークリングなど。この日は私とスイス人のふたり組の3人だけの会。 11種というのはその場のノリによるサービスも入っていそうで、明確な数は定まっていなそうです。ひとり90ユーロで約2時間。夢のような時間でした。
最後に、「グレジー家とは30年以上の付き合いがあります。ここのワインを語るのは簡単です。なぜなら、本当に大好きだから」とクアレッロさん。
ワインテイスィングは誰が案内してくれるかも重要だな思った瞬間です。ホテルとワイナリーの相乗効果を、テイスティングを経て一層感じたのでした。

▲ ホテルのラウンジの隣にあるテラス。
■ Dai Gresy
料金/1泊320ユーロ〜
国家遺産でもある18世紀のお城に泊まる

▲ 18世紀のイタリア国王も滞在した城。
2軒目のホテルは、「Castello di Guarene(カステッロディグアレーネ)」。こちらに向かった理由は、「ルレ・エ・シャトー」の公式サイトでイタリアを検索した際に、ちょうどアルバ近郊のホテルとしてヒットしたから。
「ルレ・エ・シャトー」は1954年にフランスで発足された、世界中の独立系ホテル・レストランが加盟する組織。これまで、個人的に旅する中で好きになったホテルが「ルレ・エ・シャトー」だったことは数しれず 。さらに「Castello di Guarene」の意味はグアレーネ城。本物のお城に泊まれるとあって、旅のハイライトのひとつになると思いました。

▲ 厳重な門の右側には貴族の家紋。
再びタクシーでブドウ畑を抜け、赤レンガの家が並ぶ古い街を通り、「Castello di Guarene」に到着。鉄格子の門を抜けてもしばらく全貌は掴めず、流石は貴族が所有していた広大な敷地です。
お城でありホテルであり、博物館の意味もなす

▲ この城に住んでいたロエロ伯爵は、どうやら愛犬家(左に注目)。
チェックインまで少し時間があったので荷物を預けて散歩に出ようとすると、レセプションにいた紳士が「館内を案内しますよ」とのこと。その人こそ、GMのGiuseppe Dell’erbaさん。滞在を振り返るとよくレセプション近辺にいらっしゃいました。そういうホテルって、素敵であることが多い。GMによる丁寧な解説が始まります。
「この城は1726年に建設が始まり、主はロエロ地域を治めていたカルロ・ジャチント・ロエロ伯爵でした。ロエロ家は1300年代にはピエモンテに40もの城を所有していた名門貴族。ここの地名もロエロ家が由来です。彼は自分の趣味に合わせて新しい邸宅の建設をフィリッポ・ユヴァッラに依頼しました。ユヴァッラは18世紀のイタリアで最も偉大な建築家のひとり。広い庭園に豪華な装飾。大規模な計画でしたが、伯爵には完遂する能力と財力が備わっていました」

▲ ほぼ全室にムラーノのシャンデリアを設置し、写真の大広間のものが最大サイズ。

▲ 真下から見た大広間のシャンデリア。
話を聞きながら入ったのは、荘厳な大広間。天井からは大きなムラーノのシャンデリアが吊るされています。壁のフレスコ画も芸術的価値が高いもの。聞けば、ロエロ伯爵は大地主であると同時にアマチュア建築家だったとか。建設時は現場監督へ毎日手紙で指示を送ったそうです。
しかし、あまりにこだわり尽くしたため完成まで50年近くかかり、ロエロ伯爵は竣工を待たずして逝去。彼の息子たちが後を引き継ぎ、1775年頃に完成します。ファミリー揃って蒐集家。国内外から銘品を集めているうちに、城は博物館のようになりました。
例えば、城内には『中国の間』と呼ばれる部屋も。そこには1771年に中国からロンドン、マルセイユを経て、最後はラバで運ばれた手描きの壁紙が残ります。当時、それらは貴族の間で裕福さを誇示するために流行。面白いのが、そういった中国のお宝にキャビネット界の巨匠ピエトロ・ピフェッティによる家具が共存することです。250年も前に東洋とのミックスを楽しんでいたわけですから、相当に洒落たファミリーです。

▲ 『中国の間』は、よく見るとベッドの天蓋にまで中国山水画を採用。巨大な壺も18世紀の中国製。

▲ 壁紙全面がこういった絵で、中国の夢を見そう。
保存状態がいい理由をGMは、「2011年まではロエロ家の所有だったからです。2世紀以上に渡り同じ家系で大切に受け継がれてきた稀有な城なのです」と話します。1997年にはイタリア国家遺産に登録され、2011年に現在の運営会社が買収。保存・維持を大前提にホテルとして再利用するプロジェクトが始まり、3年間もの修復期間を経て、2015年に開業しました。
客室数はわずか12。基本的には宿泊客のみが内部を見学できるので、城内探索はいつも静か。“プライベート博物館”という特権だけでも泊まる価値が大きいです。

▲ 中世には要塞だった場所なので、この高さ。
館内の贅沢さもさることながら、特別な城である証がその立地。高台に立ち、庭からはアルバの街からバルバレスコ、バローロまでを一望。そこに立つことでランゲ地方の地形を把握できて、景色も空気も美しいです。
王様度120%のベッドで眠りにつく

▲ 「キャッスル デラックスルーム」(55㎡)。
自分の客室に入って目に映ったのは、笑っちゃうほどの王様ベッド! これまで多くの天蓋付きベッドを見てきましたが、王様度はここが1位です。天蓋の高さに加え、ベッドカーテンも壁紙もすべてがゴールド。部屋の中央にはシャンデリアが輝きます。
王様ベッドで横になってゴールドの天蓋に包まれると、「身分不相応……」と思ってしまいますが、そんな非日常を味わうのが宮殿ホテルの醍醐味。この地で造られたロエロ家の家紋入り泡酒ボトルを開ければ、酔いが手伝って貴族気分は増長します。優雅さに、「なぜここにひとりで来たのか?」というおかしみが混じる貴重な時間を体験しました。
今回泊まった「キャッスル デラックスルーム」の他、「キャッスルラグジュアリールーム」の王様度もかなりのもの。ここまでくるとタイムスリップの感覚にも陥り、テレビがあることが不思議に思えてきます。

▲ 「キャッスル ラグジュアリールーム」(160㎡)。
また、客室で印象深いのが、窓の外に見えた美しい朝焼けです。目の前に教会の鐘楼が見えて、その向こうは朝靄と赤く染まる空。鳥たちも元気よく鳴き始めて、幻想的な光景でした。

▲ ブドウ畑が朝靄に包まれ、目の前には聖ペトロ・バルトロメオ教会。
プールにたどり着くまでがファンタジー
そして強烈だったのが、プールまでの導線です。まずはラウンジの先の貯水庫に入り、狭い階段を降り、延々と続くトンネルを歩いていきます。「この先に進んでいっていいのか?」と不安になりますが、トンネルの先には小さな灯りが。そここそ、プールのあるウェルネスセンター。

▲ トンネルの突き当たりに見える小さな光がウェルネスセンター。
プール自体は洞窟風の小ぢんまりした造りですが、テラスにはランゲ地方を見渡す絶景が広がるので必見。ウェルネスセンターにはサウナやジャグジー、スパの施術室やネイルルーム等も併設します。激痛が過ぎる足ツボ歩道もあるので、健康に自信がある方は是非お試しください。
レストランは、かつて冬の間にレモンの鉢を置いていた部屋だったため、「リモナイヤ(レモンの間)」という名がついています。料理はピエモンテの伝統料理を少しモダンに解釈したもの。ワインセラーには約1万500本のボトルを保管し、ランゲの至宝も眠っています。

▲ 普通の朝食ですが、晩餐会のような空間でいただきます。
以上が、「Castello di Guarene」の概要。文化遺産であるホテルの中でも、隠れ家度の高いお城でした。ワイナリー巡りの途中、2世紀以上前のイタリア貴族の邸宅で過ごす時間はいいスパイスになるはず。ランゲのワインを飲みながら、かつてここで栄華を極めた洒落者の世界に浸ってみてはいかがでしょう?
■ Castello di Guarene
料金/1泊425ユーロ〜

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