無駄のない上質なシンプルさで真のくつろぎが得られる、伊豆のとっておき宿

「アルカナ イズ」は、レストラン棟と各客室のあるコテージだけのこじんまりとしたオーベルジュ。オープンしたのは、13年ほど前。当時はラグジュアリーホテル並みの設備を持つ“ジャパニーズスイート”的な宿が次々に登場しはじめた頃。そんな中、こちらが一線を画すのは、潔いほどの“無駄のなさ”です。

考えてみれば、彼女とふたりでゆったり寛ぐには、清潔感のある落ち着いたゲストルーム、温泉、そして美食があれば良いわけ。さらに、この宿には、あふれるほどの自然まである。

そして、こちらの客室にはテレビも時計もない。多すぎる情報とあわただしい日常から、手っ取り早く脱出するための演出です。とはいえ、多忙な大人の男ほど、ぽっかりと空いた時間を与えられると何をしていいのかわからなくなりそうで、ちょっと不安……だったりもしますよね。でも、この宿なら大丈夫。時計やテレビのない不便さも感じませんよ。

到着後、すぐに客室に通され、客室でチェックイン。こちらには、普通の宿にあるようなロビーはありません。無駄を省くという意識は徹底しており、それによって待ち時間もなくなって2人で過ごす時間が増える、というわけです。

4タイプ全16室の客室は、すべてがスイート仕様で、源泉かけ流しの露天風呂付き。豪華絢爛な設えではありませんが、木と煉瓦の落ち着いた雰囲気で、北欧スタイルのランプやソファが配され、なんとも優しい空気が流れます。大きな窓の外は、緑がまぶしい国有林。眼下には渓流があり、聞こえてくるのは、その流れる音のみ。

チェックイン後、まったりしていると、自然が奏でる音のみという環境にも耳が慣れてきて、とてもリラックスしてきます。デッキチェアでお昼寝、テラスの露天風呂で足湯しながら読書……。本当に気持ちよく、贅沢な時間を実感できるはず。

そして陽が傾いて、テラスの露天風呂の水面がオレンジ色に輝く頃、別棟にあるレストランへ。いよいよ夕食です。

夕食は、五感を刺激するエモーショナルフレンチ。気骨ある生産者から届けられる四季折々の伊豆の海の幸山の幸、ワサビ、鮎、山女、鱒、鮑、サザエ……。その生命力あふれる食材を使い、客のリクエストに応えてシェフの糸井佑磨氏が腕を振るう。その結果、ここでしか体験できない感動の味わいが楽しめる、というわけです。

シェフの糸井氏は言います。「生産者と会うと、どのような思いで野菜を育て、どれだけの愛情が込められているかがわかる。だから、極力食材を無駄にしたくない」。ひとつの食材がソースやパウダーなど様々な味わいに代わり、無駄を出すことがない。つまり、作り手の意識の違いが、料理の違いとして表れているのです。だから美味しい。

ダイニングは、森に包まれるようなカウンター席と半個室。特に、このカウンター席で味わう料理は格別。女性ウケが素晴らしいというのも大いに納得です。

なお、この洋風な宿の敷地に植えられているのは、和の山野草のみとか。そんなこだわりも、よいですね。

客室も料理も無駄なものは何もなく、すべてが上質。休息のための充実したひと時を得たくなったら「アルカナ イズ」へ。リフレッシュするには、これ以上ない環境ですよ。