• Twitter
  • Facebook
  • Instagram
  • LINE
  • YouTube
  • Feedly
  • TOP
  • PEOPLE
  • 東出昌大インタビュー。「5億円あげるから、一生芝居をやっちゃダメと言われたら、すぐに辞めます(笑)」

2026.10.27

東出昌大インタビュー。「5億円あげるから、一生芝居をやっちゃダメと言われたら、すぐに辞めます(笑)」

東京を離れ、山での半自給自足生活を始めて数年。俳優・東出昌大さんは何を見つめてきたのか。狩猟、仕事、そして生きることについて、自身の言葉で綴った初の単著『誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~』のお話を伺うとともに、東出さんが見つめる物事の“ものさし”を紐解きます。

CREDIT :

写真/土屋崇治(TUCCI) 文/飯田帆乃香 編集/鎌倉ひよこ、森本泉(Web LEON)

東出昌大 『誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~』 LEON

東京を離れ、山での半自給自足生活を始めて数年。鹿を撃ち、その命をいただき、家族と暮らす。そんな山暮らしの日々が記された俳優・東出昌大さんのエッセイ集『誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~』から浮かび上がるのは、世間を騒がせたパブリックイメージの裏にある、あまりに愚直で血の通った“生活者”としての姿でした。


自分だけのものさしで、簡単に善悪なんて決められないのではないか──。そんな問いを提示する本書をもとに、東出さんが見出した幸せをはじめ、年齢を重ねて変化した価値観、そして彼が考える「カッコいい大人」など、じっくりお話を伺いました。

PAGE 2

仕事を“人生の証明”にする生き方で、幸福を得られるタイプではなかった

── 今や、東出さんの山暮らしを追ったYouTube動画は驚異の再生回数を記録し、その飾らない生き方が大きな反響を呼んでいます。そんな東出さんが、『SPA!』連載のエッセイを収めた『誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~』を上梓。まず目を引くのは、味わい深い装丁です。


東出昌大さん(以下、東出) 私が好きな画家の牧野伊三夫さんに、連載中からずっと挿絵をお願いしていました。一冊の本になる時は装丁まで全部お願いしますと伝えていたので、こうして形になったのは非常にうれしいことです。


山のリアルって、みなさんなかなか想像しにくいと思うんですけど、実はものすごくシンプル。都会には「ここに自転車を置いちゃダメ、タバコを吸っちゃダメ」といったいろんなルールがあるじゃないですか。でも、山の中のルールは極論「自分の命は自分で守れ」だけの環境なんです。


絵という表現に人生を没入させてこられた牧野さんも、そういう生きるか死ぬかという世界線を、実感としてわかっていらっしゃる方だと私は思っています。そんな尊敬する人生の先輩に携わっていただけたことが、何より光栄でした。

東出昌大 『誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~』 LEON
PAGE 3

── 本書には山での日常を克明に描いていますが、文章に残そうと思った理由を教えてください。


東出 日記を「よし、書くぞ」と思った日はいっぱい書くけれども、だいたい三日坊主で終わってしまうのが常でした。そんな時に『SPA!』から月3本の連載のお話をいただいて、これなら定期的に書く作業ができるし、それなりの固定収入にも繋がると思ったのが率直な動機です。


── エッセイには猟師の先輩のエピソードも盛り込まれていますが、東出さんが思うカッコいい大人はどんな人ですか?


東出 東京で仕事に追われていた頃は、冒険家や登山家のような人を素直に「カッコいいな、すごいな」と憧れていたんです。でも、山で自由な時間を得たら見え方が変わってきて。


背中はまだ遥か遠くですけれど、今、自分も同じ山のふもとに立ったことで、ようやく彼らの本当の魅力に触れられた気がします。カッコいいというより、ただ人生を面白がっている人たちなんだ、と。


ですので、最近は“カッコいいかどうか”って、実はそれほど重要ではない気がしています。一番魅力を感じるのは、“自分なりに人生を楽しんでいる人”ですね。

── 人生を楽しむとは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。


東出 何かに没入している時に、自己充足感で満たされている状態です。もし昆虫が好きなら虫を追いかけてもいいし、電車が好きなら遠くまで鉄道旅に出かけてもいい。なんだっていいいんです。


登山家や探検家も、最初は歴史に名を残す功名心みたいなものを原動力として、未知な領域に挑戦します。でも夢中になって登り続けるうちに、いつのまにか“自分の山”を見つけ、相対的な価値基準はさほど気にならなくなる。要するに、他者の評価は関係なく、その世界にどっぷり浸かる時間がある人は、自分なりの人生を楽しんでいると思います。

東出昌大 『誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~』 LEON
PAGE 4

── 東出さんがそんなふうに夢中になれることはなんですか?


東出 狩猟も釣りもそうです。もっともっと上達したいことがいっぱいあります。


── 若い頃に抱いていた野心やプライドにも変化はありますか?


東出 お芝居を教えてくれた当時の事務所には、今でも非常に恩義を感じています。当時は「仕事は人生の証明」と言われていて、その言葉をずっと胸に刻んで生きてきました。


でも、仕事ばかりを“人生の証明”にして生きることが、果たして自分の幸福につながるのか。たぶん、私の根っこはそういう生き方を真似たところで、幸福を得られないタイプだなぁと気がつきました。


自分の気の赴くままにどう生きるか。35歳を過ぎてからのこの数年は、そんなふうに生き方を探ってきた時間でしたね。

── エッセイの中で、セロトニン系とドーパミン系の幸せの違いについての考察も興味深かったです。きっと、東出さんはセロトニン系の幸せをたくさん手に入れられていますよね。


東出 そうですね。でも、空き時間にYouTubeを見てドーパミンをがっつり入れていますので。山に住んでいても、東京のみなさんとそんなに変わりません(笑)。


── 定期的に仕事で都会に出られていますが、ご自身の中で仕事と暮らしのバランスはどう取られているのでしょうか。


東出 仕事は面白そうな人とご一緒したいなという気持ちが常にあって、そこを基準に選んでいるところはあります。それで働いているうちに、忙しくなりすぎたら「ちょっと休みたいな」と思ってバランスをとる。そんな感じです。

東出昌大 『誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~』 LEON
PAGE 5

── 俳優から山暮らしへと転身した東出さんの生活は注目の的です。オファーは相当多いですよね?


東出 いやいや、そんなことないですよ。なんとか食いつないではいますけど、1年後のことなんて何も決まってないですからね。


── 山の暮らしに馴染んでいる今も、しばらく仕事は続ける方向でしょうか。


東出 CMの違約金の額がすごくあるんですよ。まずはそれを返さないとなって。返し終わったら、もうそんなに働かないと思います。

── 過去のスキャンダルですか……。もしお金の心配が完全になくなったら俳優業は辞めると思いますか?


東出 普段から「やらなくて済むならやらない」とは言っているものの、実際どうなんでしょうね……。「5億円あげるから、一生芝居をやっちゃダメ」と言われたら、すぐに辞めます(笑)。


── そこに迷いはない(笑)。


東出 うん、全然辞められる。借金を返して、余ったお金で楽しい人生を見つける自信はあります。芝居なんて絶対しない(笑)。


まぁでも、芝居をやることに不満があるわけでもないんですよ。なんだかんだぼやきながらも、今の人生は今の人生で楽しんでいます。

東出昌大 『誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~』 LEON
PAGE 6

山の早朝の時間帯が好き。タバコを吸いながら、いろいろ考えを巡らせています

── 今後の理想は、やはり自給自足の生活でしょうか。


東出 それが今の大きな課題です。自給自足って、やってみるとなかなか難しくて。かつて山で生きていた先人たちのテクノロジーが、私たちにはまるでないんですよ。結局はどこかで経済社会に依存せざるを得ない。だから、自分の体が動く元気なうちに、なんとか自力で生きる知恵を取り戻したいと思っているところです。


── そのテクノロジーというのはどんなものですか?


東出 文明社会では、ホームセンターに行けば苗も種も手軽に買えます。最初から自分で種を採り、それを蒔き、野菜を育て続けるのは難しい。


農業だけではありません。昔の人はクルマもガソリンもない山でたくましく生きていた。衣服だって、糸を紡いで着物を仕立て、着古したら裂いて紐にして、最後は背負子の肩紐に再利用したりする。一見大変そうに見えますが、すべてを自分たちの手でまかなえる先人たちのテクノロジーは、生きていくうえで最強だなと思います。

── そうした現代において、精神的に強く生きるために必要なことはなんだと思いますか?


東出 人間は弱い生き物であるという自覚でしょうか。最近つくづく、私は弱いなと思うので。野生動物は生身で山野を生き抜いていけるけど、人間は誰かが作ってくれた服や装備がなければ一瞬で死んでしまうし、米作りだってひとりでは成り立たず、食いつなぐこともできません。だからこそ人に頼り、助け合って生きるしかない。


すると当然、出会いや別れ、悲喜こもごもあります。それも含めて楽しめたら、人生は豊かになる。人生が豊かになれば、人間社会における“生きる強さ”になると言えるのではないかと、考えたりしています。ですので私も、普段から人当たりだけは良くしておこうと意識して過ごしております(笑)。

東出昌大 『誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~』 LEON
PAGE 7

── まさに相互依存ですね。ところで、山暮らしの中で「この時間が一番好き」という瞬間はありますか?


東出 好きな時間はたくさんあるのですが、最近いいなと気づいたのは早朝です。まだ外が真っ暗なうちに、ぬくぬくとベッドから出て、猟具を身につけながら、濃いめのホットコーヒーを少しずつすすって、タバコを吸う。


奥さんや子供、犬たちとのわちゃわちゃした普段の時間もいいんけれど、まだ犬すら起きてないこの朝の時間は、ひとりで「もうそろそろかな、もうそろそろかな」と、明るくなり始める空を見上げながら、「昨日はあんな天気だったから、地面のぬかるみ具合はこうかな。だったら今日はあっちの山に入ろうか」なんて考えを巡らせている時間は、結構好きです。

── 頭の中が研ぎ澄まされていく贅沢な時間ですね。逆に夜、寝る前などにふと頭をよぎることや、過ごし方はありますか?


東出 それが毎日、寝るのが惜しいんです。「明日も頑張って起きて一日を楽しむために、さっさと寝ないと」と思っているのに、寝る寸前まで動画を見たり、本を読んだり、考え事をしたりしています。


── 寝る前はどんな動画を見ているのですか?


東出 いろんな価値観とか、切り口の幅を広げられる動画をよく見ています。でもこの前、ラスカー賞(アルバート・ラスカー基礎医学研究賞)を受賞された柳沢正史先生の動画で、「入眠前に人の声を聞くのは良くない」っていう解説が流れて、それをまさに寝る直前にベッドで聞いていました。“あ、そうなんだ”って思いながら…(笑)。

東出昌大 『誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~』 LEON
PAGE 8

── 睡眠医科学の権威である柳沢先生がおっしゃるのであれば、夜の動画はやめたほうがよさそうですね(笑)。


東出 そうなんですよ。でもどうしても、寝る前は人の声を欲してしまうというか、ラジオ感覚で流しちゃう。諦めが悪いですね。


── 逆に、大切にしている習慣はありますか?


東出 節制することです。腹が減っているから飯がうまいし、一日たくさん動いて、へとへとに疲れるから泥のように眠れる。食べて寝ての怠惰な生活ではなく、あえて自分に負荷をかけて、その先にある快感を味わう面白さを、この歳になってようやくわかってきました。

── 都会を離れたからこそ、改めて気づいた都会ならではの良さはありますか?


東出 うまいラーメン屋が多いこと、かな。


── 仕事で来られる時は立ち寄りますか?


東出 いえ、私の胃袋もひとつしかないので。お酒をバーッと飲んだとしても、その夜はすぐホテルに帰って寝るだけになるのがほとんどです。街を歩きながら「やっぱり店がたくさんあるなぁ」と感心するくらい。


── 山の暮らしになって味覚も変化したのではないでしょうか。


東出 ジビエばかり食べているので、それは確実に変わりましたね。

── 以前より好きになった季節や天候、時間帯などはありますか?


東出 それはもう、四季そのものです。昔から二十四節気と言いますけれど、本当にそれくらい繊細な変化を肌で感じ取ることができる。巡ってくる季節のすべてが、以前よりずっとビビッドに感じられるようになりました。

東出昌大 『誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~』 LEON
PAGE 9

私はファンタジーやフィクションは書けないなと、つくづく思いました

── 本書に「自然と遊びたい人には渓流釣りがおすすめ」と書かれていましたが、大人の男性におすすめの自然遊びも知りたいです。


東出 まずは泥団子を作ること。芝生に寝っ転がったり、裸足で歩いたりするような、些細なことからでいいと思います。


私も東京にいた頃は、ブランドのアウトドアウエアに身を包んで遊びに行っていました。ある日、川で出会ったのはガボガボの長靴を履いた小汚い格好のおっちゃんで。「お兄ちゃん、釣れるか~」って声をかけられて「1匹だけ釣れました」と答えたら、3時間後、そのおっちゃんはクシュクシュのスーパーの袋にイワナを40匹くらい入れて帰ってきたんです。それを見て、“格好だけそれっぽくしてる俺、めちゃくちゃダサいな”と思い知らされました。


ですので、自然を楽しむのに上辺なんていりません。手を汚すことを厭わず、まずは自然の手触りを確かめてみる。そうやって童心に帰るのも面白いですよ。

── ありがとうございます。さて、今回は初の単著になりますが、文章を書く行為から新たな発見はありましたか?


東出 私はファンタジーやフィクションは書けないなと、つくづく思いました。ゼロの状態から物語を立ち上げる人たちとは、脳の構造が違うんだなと。


芝居もそうで、恋愛や失恋の経験があるからそういう役を演じられるけれど、なにもないゼロベースで芝居を作ることはできないんですよね。

東出昌大 『誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~』 LEON
PAGE 10

── では、俳優として演じる時はどのようなアプローチをとられているのでしょうか。


東出 人が与えてくれた10の台本を100にする作業だと思っています。0から10は作れないけれど、その10を自分の中に染み込ませて、染み込ませて、ワインのように醸す。それを最後は、監督や演出家という“調理師”に扱ってもらうような感覚です。


── なるほど。最初はゼロでも、実際に経験して出来事であれば積み上げて形にできる。そんな等身大のエッセイが一冊の本にまとまり、改めてどんなことを感じていますか?


東出 以前から、「田舎で暮らしてみたいけど、どう始めたらいいかわからない」という声をよく頂戴していました。それって、みなさんが思い描く田舎暮らしにどこか『日本昔ばなし』のようなファンタジー性を感じているように思っていて。


連載のエッセイを本にすると聞いた時、アランの『幸福論』や河合隼雄先生の『河合隼雄の幸福論』みたいな一冊になったらいいなと思いました。日本昔ばなしみたいに、一編一編は何気ない話なんだけど、読み終えた時になんとなく心が温かくなるような、そんな本です。


けれども、私は学がないし、国語の成績がよかったわけでもない。だから「バカな野郎の話なら読めるかも」くらいの気持ちで手に取ってもらって、読了後になんとなく心が温かくなってくれたらうれしいです。

この本に書かれている山で起きた出来事は、山暮らしをすれば誰にでも起こりうることです。だから結果的には、老若男女問わず読んでもらえる本になったんじゃないかなと思います。

PAGE 11
東出昌大 『誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~』 LEON

● 東出昌大(ひがしで・まさひろ)

1988年2月1日生まれ、埼玉県出身。モデルとして活躍後、2012年映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビューし、第36回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。 以降、数々の映画・ドラマ・舞台で主演・主要キャストを務める。2021年春より山の中で半自給自足の生活をスタート。狩猟免許を取得し、自然と向き合いながら暮らす。

東出昌大 『誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~』 LEON

『誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~』

2021年春、東京を離れ、山で半自給自足の暮らしを始めた東出昌大。狩猟をし、家族や地域の人々との交流から、これまで当たり前だと思っていた価値観を改めて見つめていく。自身初の単著となる本書は、そんな山暮らしの日常と、そこから生まれた思索を綴っている。動物を撃ち、捌き、その肉を食らうことは“ヤバい”のか。それとも、都会で暮らし、生き物の命を意識することなく肉を食べるほうが自然なのか── 。善悪や正義を簡単には割り切れない世の中で、自分なりの“ものさし”を持って生きるヒントが詰まった24編のエッセイ集。扶桑社刊。1650円(税込)。

Amazon

PAGE 12

SPECIAL

    おすすめの記事

      SERIES:連載

      READ MORE

      買えるLEON

        東出昌大インタビュー。「5億円あげるから、一生芝居をやっちゃダメと言われたら、すぐに辞めます(笑)」 | 著名人 | LEON レオン オフィシャルWebサイト