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2026.07.25

女性シェフとして「最も多くのミシュランスターを持つ」アンヌ=ソフィー・ピックが語る、家族とディオール、日本文化との繋がりとは?

この春、大阪に誕生した「ハウス オブ ディオール 心斎橋」の最上階に位置するレストラン「ムッシュ ディオール 大阪」。そのシェフであるアンヌ=ソフィー・ピック氏は女性として、現在世界一ミシュランの星を持つことでも知られます。話題のシェフはどんな女性なのか、お話を伺いました。

BY :

文/矢吹紘子
CREDIT :

編集/森本 泉(Web LEON)

女性シェフとして「最も多くのミシュランスターを持つ」アンヌ=ソフィー・ピックが語る、家族とディオール、日本文化との繋がりとは?

「ミシュラン」といえば、美食家の読者貴兄にとって常に気になるキーワードでありますよね。そして、いまだ男性優位とも言われるガストロノミーの世界で、現在女性として 「最も多くの星を持つシェフ」と称される人物が、アンヌ=ソフィー・ピック氏です。


フランス南東部・ドローム県ヴァランスにある名店「メゾン・ピック」の3代目として家業を受け継ぎ、世界各地でレストランを展開。彼女が手がける最新レストラン「ハウス オブ ディオール 心斎橋」の「ムッシュ ディオール 大阪」については、先日Web LEONでもリポートしましたが、今回はなんとご本人にインタビュー。そのバックグラウンドや浸透の哲学、日本文化からのインスピレーションなど深掘りしました。

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若き頃に訪れた日本での経験が、その後のキャリアに大きな影響を

アンヌ=ソフィー・ピックのトレードマークといえば女性シェフとして、現在世界一ミシュランの星を持っていること。 祖父の代から3代にわたり三つ星を獲得している名店「メゾン・ピック」をはじめ、スイス・ローザンヌの「Pic au Beau-Rivage Palace」、香港の「Cristal Room by Anne-Sophie Pic」、マンダリンオリエンタルバンコク内レストラン「ル・ノルマンディー」、ドバイの「La Dame de Pic Paris」と、手掛ける店がミシュランスターを次々に獲得。今年惜しまれつつ幕を閉じたパリの「La Dame de Pic Paris」は、現在新章へ向けて準備が着々と進むなど、常に話題の尽きない人物です。

本拠地・ヴァランスにはラボラトリー「Pic Lab」を構え、日々新たな食材を使った料理を探求する。©LAORA QUEYRAS

▲ 本拠地・ヴァランスにはラボラトリー「Pic Lab」を構え、日々新たな食材を使った料理を探求する。©LAORA QUEYRAS

家業のレストランでの成功モデルをフランス国外へ展開し、複数店舗で星を維持。卓越した経営者としての顔も見せる彼女は、実績も影響力もまさにレジェンド級なわけですが、人生の転機となったのは、意外なことに我が国日本。若き頃に訪れたこの地での経験が、その後のシェフとしてのキャリアにも大きく影響を与えているのだといいます。

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1990年代初頭の大阪の思い出は、路地に立ち並ぶレストランと電話ボックス

—— ズバリ、大阪の印象は?


「とても賑やか。以前より街が格段に大きくなった気がします。私が最初に日本に来たのは1991年で、当時通っていたビジネススクールの研修でした。イギリス返還前の香港と韓国、そして日本にはトータル4カ月も滞在したんですよ。当時の日本は世界から完全に切り離されている感じで、本当に素晴らしかった!


その時に初めて大阪にも行ったんです。覚えているのは細い道に小さなレストランが軒を連ねていて、あちこちに電話ボックスがあったこと。でも今回印象が変わったのは、年齢を経て物の見方が変化したからかもしれませんね。なにせあの旅は私にとって、初めて長期間親元から離れて異国の地で暮らす大冒険だったんです」


—— これまで東京の銀座や代官山で「ディオール」のレストランを手掛けていますが、心斎橋のお話が来た時、率直にどう思われましたか?


「また『ディオール』と一緒に仕事ができるなんて夢みたい! ですね。やはりフランスのエレガンスを象徴するメゾンですし、数あるファッションブランドの中でも特別な存在ですから。伝統的なノウハウ、サヴォアフェール(匠の技)を持っているし、彼らの洗練性は日本の世界観、そして私の料理哲学ともよくマッチすると思っています」

「ムッシュ ディオール 大阪」のシェフズテーブルにて。アンヌ=ソフィー・ピックさんの料理哲学を忠実に再現する、日本人シェフたちの手捌きも注目。

▲ 「ムッシュ ディオール 大阪」のシェフズテーブルにて。アンヌ=ソフィー・ピックさんの料理哲学を忠実に再現する、日本人シェフたちの手捌きも注目。©️TAITO ITATEYAMA

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—— 今回の滞在では、忙しいスケジュールの合間を縫って日本各地を訪れたとか?


「そうなんです。古い友人で、日本茶文化の普及に長年尽力してきた 『寿月堂』のマキ(丸山真紀)さんと、富士山のすぐ近くの茶畑や、日本酒の酒蔵を訪れたりして、一週間“日本ツアー”をしました。特に印象的だったのは愛知県常滑市の人間国宝の方の窯元を見学させてもらったこと。ろくろの前にも座らせていただいたんですよ」

—— 料理と陶芸、畑は違えど“手仕事”という根本では共通する部分があるのでしょうね。


「マイスターが一つひとつの所作を大切にする姿勢を目の当たりにして、大袈裟でなく涙が止まらなくなってしまいました。彼は自分の技を120%習得しているんです。それは本当にすごいこと。私の頭と心に、一生刻まれたひとときです」


—— その方の器はアンヌ=ソフィー・ピックさんのお店でも使われているんですか?


「もちろん。『メゾン・ピック』では食後に抹茶を点ててお出しするのですが、その茶器として使っています」


—— 日本にはお友達も多いのですね。


「そうなんです、うれしいことに。数年前に奈良で、日本でも活躍するシェフの友人と一緒に稲刈りをしたこともあるんですよ。稲穂が黄金に輝くあの光景も、きっと生涯忘れられないと思います」

 「ムッシュ ディオール 大阪」の店内はムッシュが愛した南仏の別荘「ラコルノワール城」を思わせる優雅な空間。

▲ 「ムッシュ ディオール 大阪」の店内はムッシュが愛した南仏の別荘「ラコルノワール城」を思わせる優雅な空間。

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祖父とムッシュ・ディオールは同時代の人。「メゾン・ピック」もきっと訪れているはず

—— ヴァランスでアンヌ=ソフィー・ピックさん一家が代々営む「メゾン・ピック」の前身となったのは、曽祖父母が開いたオーベルジュなのだそう。100年以上前からの料理家家系なのですね。


「そうなったのは自然な成り行きだったんです。ミシュランが言うところの“フレンチガストロノミー”の文化は、都会ではフランス革命直後から花開き始めていました。一方で田舎ではドライブインのような、国道沿いの食堂がその原点。主たる幹線道路沿いには必ず農場があって、農場主たちが次第に自らの食材を使い、料理を出す店を作り始めたという背景があるんです。曽祖父がオーベルジュを開いたのも、まさにその流れ。曽祖父の実家は農家で、12軒の農場を営んでいたので。曽祖母は、とても自立心が強い女性だったと聞いています」


—— その後、1936年に祖父のアンドレ・ピック氏がレストランとして「メゾン・ピック」を創業し、わずか3年でミシュラン三つ星を獲得されています。


「祖父のアンドレは、ムッシュ(クリスチャン・)ディオールと同時代に生きた人。彼と共に世界を飛び回っていたアメリカの著名なジャーナリストは、祖父の友人の一人で、うちの店について公の場でよく語っていたそうです」

—— クリスチャン・ディオール氏ご本人も美食家として有名でしたよね。


「彼もうちに食事にいらっしゃっていたと聞いています。当時国内にガストロノミーのレストラン、とりわけ三つ星のレストランは今とは比較にならないほど少なかったので、グルメの方々の間での知名度は高かったんです。それにヴァランスは、パリからムッシュが晩年を過ごしたラコルノワール城のある南仏のグラースまでのちょうど通過点なんです」


—— それは素敵なご縁ですね!


「不思議ですよね。ハリウッドの有名女優、リタ・ヘイワースは祖父のファンでかつての常連客の一人なのですが、彼女は『ディオール』のファーストコレクションを買い占めたことで知られています。祖父とムッシュは時代を共にし、渡り合ってきた同志のような存在なんです」

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丁寧に料理を作り上げるアンヌ=ソフィー・ピックさん。©LAORA QUEYRAS

▲ 丁寧に料理を作り上げるアンヌ=ソフィー・ピックさん。©LAORA QUEYRAS

家庭ではコーラも禁止! 日常からエスケープできる場がファッションだったんです

祖父の代でミシュランの三つ星を獲得し、後年父親のジャック・ピック氏が店を引き継ぎ規模を拡大。ところが彼の死去後は一時低迷し、星を失う事態に陥ります。そこで白羽の矢が立ったのが、前述の通りビジネススクールで学び海外研修に励んでいたアンヌ=ソフィー・ピックさんでした。ですが、その道のりは決して王道ではなかったよう。


—— 幼い頃は料理に興味がなかったばかりか、むしろ遠ざけたい領域だったと過去のインタビューで拝読しました。


「幼少期から料理の世界を素晴らしいと思う気持ちは、持ち合わせていました。でも一方で『プロは男性ばかりだな』とも思っていましたね。それに私にとってはあまりに当たり前で、日常すぎたんです。さらに父は食に関してとても厳しくて、加工品はダメだし大量製造のお菓子も禁止。コカ・コーラも飲めなかったんですよ! そのせいで、大人になってからアメリカに行った時、反動で飲みすぎちゃったくらい(笑)。禁止されたものって食べたくなるんですよね。ダメって言われると、ついしたくなっちゃうでしょ」

—— 厳しい現場を間近で見てきたからこその反動なのでしょうね。 


「それに当時の私にとって料理は異国情緒、エキゾチックさが感じられなかった。糸の切れた凧のように、日常からふわっと離れて“エスケープ”できる場を探していたのかもしれません。そこで興味を持ったのがファッションの世界でした。実は10代の頃は裁縫を学びたいと思っていたんです。特に『ディオール』は別格で、ものすごく憧れを抱いていましたね」


—— どんな部分に惹かれたのですか?


「素材使いやテクスチャー、そしてそれらを一つのピースに仕立てる職人技です。その興味はクリスチャン・ディオールから影響を受けたデザイナーへも広がって、アズディン・アライアのシルエットに夢中になったし、時代は降りますが『バレンシアガ』で頭角を現したニコラ・ジェスキエールもそう。ファッション界で新星のように現れるクリエイターたちから、強烈な刺激を受けました」

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「ムッシュ ディオール 大阪」の各テーブルには花や緑があしらわれリラックスした空間を演出している。

▲ 「ムッシュ ディオール 大阪」の各テーブルには花や緑があしらわれリラックスした空間を演出している。

—— ご自身で実際に服作りをされたりもしました?


「祖母は裁縫が上手だったので、彼女に手伝ってもらって、ジャケットやパンツを自分で縫って作っていました。クチュール(針仕事)は、フランスの家庭では代々親から子へ、世代を超えて継承される文化でしたし、『若い女性は料理か裁縫ができなきゃダメ』みたいな時代背景もあるでしょう。彼女は今生きていたら120歳。105歳で天寿を全うした、とても強い女性でした」


—— 結局ファッションの道へは進みませんでしたが、ビジネススクールで学んだ経験はレストランの継承や運営に生かされていると思いますか?


「もちろん。現場での適応力がつきましたし、何より世界に対してオープンマインドになりました。料理の専門書的な知識は後から身につけなければなりませんでしたが、この時の自分がいたから今の自分がいる。キャリアとしては良いスタートが切れたと思っています。それに当時としては遅いスタートでしたが、今日では珍しいことでもないんです。私の息子がまさにそうなのですが、まず18歳でバカロレア(フランスの高校卒業検定兼大学入試資格)に合格してから料理を学ぶのが王道になりつつありますから」

—— とはいえ、アンヌ=ソフィー・ピックさんの場合はお父様が亡くなり22歳で急遽ご実家に戻り、夫のデイビッド・シナピアンさんと共に家業を継いでいらっしゃいます。その後「メゾン・ピック」を再び軌道に乗せることに成功していますが、その際どんなところにフォーカスしたのでしょうか?


「色々ありますが、方向性として打ち出したのが、ビジネススクールの研修中に訪れた各国で出会った、多様な食材を取り入れたことですね。例えば日本で知ったお茶や、昆布などの出汁の文化。それらは私の料理の世界での大切な一歩になりました」


—— 日本茶ブランド「寿月堂」とオリジナルのハーブティーを開発したり、各店で日本茶のセレクションを豊富に提案していたりと、「ピック」といえばお茶というイメージもあります。


「言うまでもなく最初は祖父や父が遺してくれたスタイルや技法を理解し、マスターすることに専念しました。その次のステップとして、若い頃の日本の記憶が蘇って、独自の料理が生まれるようになったというか。それまで10年以上かかってしまいましたが」

—— 「メゾン・ピック」がミシュランの三つ星に復帰したのが2007年。アンヌ=ソフィー・ピックさんのお料理が世界中の食通の間で評判になったのもちょうどこの頃ですよね。


「ハーブなどからインスピレーションを得て、様々な食材に異なる香り付けをすることで、本来の良さを生かしながら新たな料理を生み出す、という自分のスタイルを確立できました。結果として、私の料理はとても植物的になりました。人生って色々なことが密接に、脈々と繋がっているから面白いですよね」

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西洋と東洋の垣根を越え、縦横無尽に食材を組み合わせるそのクリエイティビティのルーツは、若き日の日本滞在にあった。©LAORA QUEYRAS

▲ 西洋と東洋の垣根を越え、縦横無尽に食材を組み合わせるそのクリエイティビティのルーツは、若き日の日本滞在にあった。©LAORA QUEYRAS

「ムッシュ ディオール 大阪」でも、私のDNAを発揮しながら好きな料理を作りたい

「ハウス オブ ディオール 心斎橋」は、万博の大屋根リングを手がけた建築家・藤本壮介が外観をデザイン。内装には建築家のピーター・マリノが参画し、4フロアでディオールの世界観を表現しています。レストラン「ムッシュ ディオール 大阪」はその4階にあり、ムッシュディオールの隠れ家であり、彼が愛した「ラコルノワール城」の壮大なイメージが、メインダイニングルームに映し出されています。

トワル(仮縫い用のファブリック)から着想した、白く波打つような外壁が目を引く「ハウス オブ ディオール 心斎橋」。©️DEN NIWA

▲ トワル(仮縫い用のファブリック)から着想した、白く波打つような外壁が目を引く「ハウス オブ ディオール 心斎橋」。©️DEN NIWA

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—— 心斎橋の「ムッシュ ディオール 大阪」でのアンヌ=ソフィー・ピックさんの料理を楽しみにしている日本のファンも多いと思います。この店らしさという意味で、意識されたことは?


「私のDNAを発揮しつつ、好きな料理を作り続けるという根本的なフィロソフィは、他の店と共通しています。ソースをふんだんに使った、クラシックなフランス料理の文化を紹介することが大前提にありますから。一方で日本では私にとって初めてのレストランになるので、日本の食材を使い、私が若かりし頃から抱き続けている日本料理への愛の深さを証明するチャンスでもあると考えています」


—— 具体的なメニューから、象徴的な一皿はありますか?


「『ルフ クリスチャン・ディオール』ですね。生前ムッシュ・ディオールが愛したクラシックなフランス料理『ウフ・アン・ジュレ』(卵のゼリー寄せ)をモチーフにした『ムッシュ ディオール』の定番メニューで、それぞれのシェフがさまざまな解釈を加えています。今回私はというと試行錯誤の末、半熟卵を青海苔で完全に包み込んでしまいました! エストラゴン(タラゴン)で香り付けした濃厚なサバイヨンソースをたっぷりとかけた、とても“ベジタブル”な一皿。キャビアとの相性もバッチリなんですよ」

見た目にもフレッシュな「ルフ クリスチャン・ディオール」。テーブルに運ばれた瞬間にふわっと海苔の香りが立ち込める。©LARA GILIBERTO

▲ 見た目にもフレッシュな「ルフ クリスチャン・ディオール」。テーブルに運ばれた瞬間にふわっと海苔の香りが立ち込める。©LARA GILIBERTO

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—— 聞いているだけでワクワクします。もともとアンヌ=ソフィー・ピックさんの味を知っている人にとっても、きっと新しい発見がありますね。


「そう期待しています。驚きの要素はビジュアルの面でも強く意識しました。心斎橋の『ハウス オブ ディオール 心斎橋』の階段や外壁には真っ白なトワル(仮縫い用の布)のモチーフが連なっています。北海道産のホタテ貝のスターター『ラトワールブランシュ』はそこから着想しました。白いレースのヴェールをイメージしながら、日本酒を使いクリーミーに仕上げた白米を合わせています」

まるで純白のヴェールをまとった花嫁を思わせる「ラ トワール ブランシュ」。©LARA GILIBERTO

▲ まるで純白のヴェールをまとった花嫁を思わせる「ラトワールブランシュ」。©LARA GILIBERTO

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女性は本能的に“誰かに栄養を与える“という行為が好きなんだと思います

男女間の格差をなくすことが国連のSDGsの目標にも掲げられ、日本にもついに女性の首相が誕生しました。ですが、料理の世界はいまだ男性中心という印象が拭えないのも事実。過去のミシュランの情報を遡っても、星付きの店での女性シェフの占める割合は全体の5%未満。東京に限れば、1%ほどというデータもあるほど。現在、女性シェフとして“ミシュラン最多の星を持つ”アンヌ=ソフィー・ピック氏の存在が、いかに類い稀であるかを伺い知ることができます。


—— 料理の世界において、女性であることの意味とは?


「女性って本能的に料理が好きだと思うんですよ。“相手に栄養を与える”という行為は、私たち女性に根付いているものだと。高級ガストロノミーの世界でプロになるには、単純にその本能を備えているだけでは難しいことは理解しています。ですが女性の料理には、男性の料理と違うユニークさがあるとも信じているんです」

—— 今後グローバルに活躍する女性シェフがもっと増えると思いますか?


「もうすでに増えてきていますし、その流れがさらに加速したら私も勇気を貰えると思います。女性は男性社会で自分たちの実力を確立したいという思いが強いんですよね。女性のシェフは厳しいですよ〜。だから才能を“育てる”という意味では、責任も感じます。ちなみに私と一緒に15年間仕事をしているシェフは女性で、しかも日本人です。タマキ(小林珠生)さんといいます。バンコクの「アンヌ=ソフィー・ピック・アット・ル・ノルマンディ」を任せて3カ月でミシュランの二つ星を獲ったんです。男性を全部やっつけてね(笑)。彼女の仕事ぶりは私の誇りです」


—— ご家族からの教育という面で、現在の成功への鍵になったことはありますか?


「お客様をお迎えするノウハウの部分を、幸いにも家族からみっちり教えてもらったことでしょうね。二人とも仕事に対して厳格で、とことん集中してやる人たちだったので、長い間星が穫れてきました。ただ私は料理家の家に生まれ育ちましたが、子供の頃の家族環境が成功への近道になるのかは、正直分からないんです。フランスには『好きであることが成功の道である』という言葉があります。結局は日々の積み重ね。大切なのは過去に留まらず、素晴らしい文化遺産を未来へ、これからの世代に遺すことなのかなと思っています」

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アンヌ=ソフィー・ピック(Anne-Sophie Pic)

● アンヌ=ソフィー・ピック(Anne-Sophie Pic)

1969年生まれ。フランス・ヴァランスの名門レストラン「メゾン・ピック」の3代目オーナーシェフ。1997年に家業を継ぎ、2007年に同店をミシュラン三つ星へ復帰させる。他にも現在、バンコク(タイ)、香港、ドバイ(UAE)、ローザンヌ(スイス)、北京(中国)、そして今回オープンの大阪でレストランを展開。2026年にはパリで新たなガストロノミーレストランを開業予定。


ムッシュ ディオール 大阪

ムッシュ ディオール 大阪

住所/⼤阪府⼤阪市中央区⼼斎橋筋1丁⽬9-­17ハウス オブ ディオール 心斎橋 4F

席数/59席(店内46席/個室8席/バー5席)

営業時間/ランチ 11:30〜15:00(Last Order 13:30)/ディナー 18:00〜22:30(Last Order 20:00)

定休日/月曜・火曜

TEL/06-7632-1450

HP/DIOR | ディオール レストラン

予約はこちらから

矢吹紘子 LEON

矢吹紘子

ライター、編集者、通訳案内士。Web LEONのほか『BRUTUS』『POPEYE』などライフスタイル誌を中心に記事を執筆・編集。ロンドン大学で修士課程修了後、プライベート通訳としても活動。京都を拠点に海外からのVIPゲストの旅のキュレーションやアテンドを行なっている。 Instagram/@hiroko__yabuki


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