2026.07.12
第17回 藤あや子 【vol.02】
美しい人、藤あや子。「それまで目をつぶっても歌えていた自分の代表曲が急に怖くて歌えなくなったんです」
大人の女性の美しさに迫るグラビア連載「美しい人」。今回は演歌歌手の藤あや子さんにご登場いただきました。着物のイメージの強い藤さんですが、今回はドレスでのグラビア撮影に挑戦。ますます磨きのかかった艶っぽい美しさを見せてくれました。その第2回です。
- CREDIT :
写真/野口貴司 スタイリング/坂本久仁子 ヘアメイク/岡崎じゅん 文/渡邉朋子 編集/森本 泉(Web LEON) プロデュース/Kaori Oguri

多くの俳優やタレントをプロデュースし、自身女優でもある小栗香織さんをプロデューサーに据え、 豊かな人生経験を持つ女性たちの、内面から醸し出される“大人の美しさ”に迫る、ファッションと融合した新しいグラビア企画「美しい人」。
今回は演歌歌手の藤あや子さんにご登場いただきました。いつもは着物のイメージの強い藤さんですが、本連載ではドレスでのグラビア撮影に挑戦。第1回(こちら)に続き、第2回は黒のシックなドレスで登場。抜群のプロポーションを魅せてくれました。



▲ ドレス 参考商品/エリザベッタ フランキ(エスケーシー)、イヤリング50万5780円、リング83万8530円/ともにロイヤル・アッシャー(ロイヤル・アッシャー カスタマーサービス)
【Interview02】
自分でも信じられないけど、55歳の時にごはんが食べられないぐらい恋しちゃったんです
── 藤さんは来年でデビュー40周年を迎えられますが、これまでの歌手生活の中で辛かったこと、大変だったことはありましたか?
藤あや子さん(以下、藤) デビューして10年目の頃、ありがたいことにコンサートや劇場公演でスケジュールがびっしり埋まっていたんです。コンサートが終わると真っ暗な道を移動車で走り、朝起きると同じようなホテルの天井を見上げて、“あれ、ここどこだっけ?”と思うぐらい。
家に帰る時間も自分の時間も本当になくて、大好きだったはずの歌を歌うのが段々しんどくなり、毎日点滴を打ちながら歌っていました。その時に、自分がものすごく憧れていた歌手の世界は、こんなにも過酷なんだ、精神的にも肉体的にも強い人じゃないと残れない世界なんだという現実に直面し、その後、体調を崩して、入院してしまったんです。

── そんなハードな状況の中、どうやって気持ちを立て直したんですか?
藤 その頃に『雪 深深』という歌と出会って、その歌が私をもう一度奮起させてくれたんです。でも最初は「カラオケで歌いやすい曲じゃないと売れないよ」と言われて、レコード会社も事務所もその曲を出すことに大反対でした。その中でただ一人、(坂本)冬美さんだけが「あんた、これは絶対に歌わなきゃダメよ」と言ってくれたんです。
それがちょうど私が倒れた時だったので、病院のベッドで社長に「お願いです……。『雪 深深』を出させてください」と言ったら「わかった、わかった。発売しような」と言ってもらえて、ようやく発売できたんです。今思えば私も女優ですよね(笑)。
でも倒れたのは本当で、歌に救われた経験はその後も何度もありましたけど、その度に歌手でよかったなと思います。

▲ シューズ/スタイリスト私物
── 体調を崩してしまうと、自分の納得のいく歌が歌えず、お客さまを満足させられないもどかしさを感じてしまうこともありますよね。
藤 それもありました。今まで目をつぶっても歌えていた歌が、イップスみたいに怖くて怖くて歌えなくなった時期があって。コンサートで「これとこれを外せない?」と言ったぐらい。冬美さんにも「あんたの代表曲なのにそれを外したらダメでしょ!」と言われて。
── そのスランプからどうやって抜け出したんですか?
藤 ある時、失敗してもごまかしながらでもいいから、今の自分が歌える範囲でとにかく逃げずに歌っていこうと思いを決めて、恐る恐るやっていくうちに出口が見えてきたんです。それが今から10年ぐらい前。今だから言うけど、それまでの20年ぐらいはずっとイップス状態でした。でも、今はその時が嘘みたいに、昔以上に楽しく心地よく歌うことができるんです。
だから人生と一緒で、諦めて“もう無理”と立ち止まったらダメなんだなと。暗いトンネル状態の中でもわずかな光に向かってとことんやっていく。自分は絶対にその光を見つけられるはずだと信じて絶対に諦めないことが大事なんだと思います。

── お話を聞いていると、坂本冬美さんの存在も大きいですね。
藤 本当にそうですね。やっぱり、この世界の良いところも、悪いところも、厳しさも、すべてを知っている友達じゃないですか。もちろんお互いの欠点も100も承知だけれども(笑)、そこも含めて大好きで、そばにいるのが当たり前の存在ですね。
── いわゆるライバルのような関係ではなく、長年の同志のような存在なんですね。
藤 この間も冬美さんが私の御園座の公演に来てくれて、前にイップスだった歌を聞いて「あんた、素晴らしいね!」と言ってくれました。ほかにも、「この間のあの歌はこうだったんじゃない?」と言われて、「そうなのよ!あそこが歌いづらいのよ」、「いやいや、前はこう歌っていたよ」、「あ、やっぱり? 気をつける」とアドバイスをもらったり(笑)。
普通、ライバルだとお互いの悪いところは言わないでおこうと思うのでしょうけれど、私たちは良いところも、悪いところも率直に言い合えるので、まるで本当の家族みたいですね。

── 実際のご家族で言うと、藤さんは高校生のお孫さんがいらっしゃるそうですね。
藤 今、高校3年生です。おとといも急に「明日の予定は?」と連絡が来たので、「これとこれの予定が入ってるけど」と伝えたら、「学校につけていくコンタクトレンズがないです〜」って泣き顔の絵文字が来て(笑)。「自分で買いなさい」と送ったんですけど、「お願いします!」ってことでしょうがなく一緒に買いに行って、ごはんを食べてきました(笑)。

── お孫さんは困った時はお母さんではなく、藤さんにお願いをするんですね。
藤 自分の母親はお金がないと思っているから、「アフヌン行こう」とか高級ホテルのアフタヌーンティーは絶対私の担当です(笑)。「友達と行けば?」と言うと「JKが行けるわけないでしょ」と言うので「あんただってJKでしょ」と返すと「お願い!」って(笑)。私のことをいまだに“ママ”と呼ぶんですけど「ママが喜んでるから」とか言っちゃって(笑)。
── お二人で仲よくアフタヌーンティーって素敵じゃないですか。
藤 母親も仕事だから「お願いします」と言われて二人で行ったり、私の夫が参加したこともありましたけど、さすがに夫は「女子ばかりだから俺は遠慮します。二人で行ってきてください」と言うので、最近は二人だけで行ってますね(笑)。

── ご主人とはご結婚されて今年で9年。当時は24歳年下の男性とのご結婚ということでも大きな話題になりましたね。
藤 自分でも信じられないんですけども、交通事故みたいなもので(笑)。ちょうど私が55歳の時に、ごはんが食べられないぐらい恋しちゃったんですよ。今思うとバカじゃない?と思うんですけども、だんだん痩せていって、鏡を見ても“なんか私、出っ歯に見える?”って。スタッフの女の子にも「大丈夫ですか?」と言われるぐらいだったんです(笑)。
── 最初はどちらからアプローチされたんですか?
藤 私が彼を大好きで「ご飯に行きましょう」、「今度の休みはいつですか? 新車が来るのでドライブしませんか?」みたいな。今思うとありえないし、自分でもすごいと思う!(笑)

── そこからおつき合いが始まりご結婚まで、とんとん拍子に進んだわけですよね。
藤 5カ月くらいで結婚しました。彼は私より年齢はずいぶん若いですが、すごく大人で、逆に私は年齢だけ重ねていて、中身は「小学生男子」みたいな感じなんですよ(笑)。
── 女子ではなく男子なんですか?
藤 そう、小6男子(笑)。精神的には私が子供で、夫が大人なので、「これ違うんじゃない?」と言われたら「そう?」って言うことを聞きますね。でも時々「ムカつくー!」ってパンチする振りをすると「こわー!」と言われたり(笑)。だから小6男子なの。

▲ ドレス64万6800円/シャッツィ・チェン(シャッツィ・チェン インターナショナル リミテッド)
── 人と人との相性に年齢は関係ないですね。
藤 55歳で彼を好きになった時、私はたぶん魔法をかけられたんですよ。でもその魔法がいつまでも解けないね〜。なんで解けないんだろうね〜といつも笑ってます(笑)。
── そう思うと本当に運命の出会いだったんですね。
藤 そうですね。毎日楽しいし、本当に私みたいな人を嫁にもらってくれてよかったです。私、本当に変わってますからね(笑)。冬美さんとかまわりの友達はみんな私のことを「手に負えない人」だと思っているので、逆に夫は「立派な人」ということになってます(笑)。
※次回に続きます。

● 藤あや子
1961年5月10日、秋田県生まれ。1987年に村勢真奈美の名前で『ふたり川』でデビュー。1989年に藤あや子に改名し、『おんな』で再デビュー。1992年には『こころ酒』が大ヒットし、第25回日本有線大賞を受賞。その後も『むらさき雨情』、『女泣川』などのヒット曲を多数生み出し、NHK紅白歌合戦に21回出場。“小野彩(このさい)”名義で作詞・作曲活動も行なっている。2022年にはデビュー35周年を記念して写真集『AYAKO FUJI』を出版し、その美しさも話題に。2024年には子宮体がんを公表。その後、復帰を果たす。今年は名古屋・御園座での『創立百三十周年記念 御園座新春特別公演』を成功させ、2025年に発売されたシングル『想い出づくり/小さな鐘の音〜ラ・カンパネラ〜』が2026年3月25日付の有線演歌・歌謡曲リクエストチャートにて再び1位を獲得するなど、デビュー40周年を来年に控え、さらなる飛躍を遂げている。また近年は保護猫活動のほか、乳児院や支援学校、福祉施設への支援活動にも積極的に取り組んでいる。
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