2026.02.07
ゆりやんレトリィバァが初監督! 自身の恋愛を基に描いた、愛と妄想と狂気が交差するホラー映画とは?
ゆりやんレトリィバァさんが自らの恋愛体験をベースに初めての監督作品として作り上げたホラー映画『禍禍女』が絶賛公開中です。なぜ恋愛なのにホラーなのか? 監督初仕事はどんな体験だったのか? ご本人にたっぷり語っていただきました。
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文/木村千鶴 写真/北浦敦子 編集/鎌倉ひよこ、森本 泉(Web LEON)

ほど良くいただければうれしい愛情も、度が過ぎれば恐怖。行き過ぎた愛情はやがて執着に変わり、欲望が暴走し、狂気へと変化する……。そんな恋愛体験を基にして描かれたホラー映画『禍禍女』が、2月6日より全国公開中です。
この作品は初監督を務めたゆりやんレトリィバァさんの実体験がベースになっているのです。ゆりやんさんの話をじっくりと聞き、脚本にしたのは『ミスミソウ』『ホムンクルス』の内藤瑛亮さん。映画は公開に先立ち数々の国際映画祭に参加し、世界中の観客を魅了。「台北金馬映画祭」では、日本人初のNETPAC賞を受賞しました(※取材後、海外映画祭で計4冠を達成) 。さて、監督のゆりやんさんは、一体どんな恋愛をしてきたのでしょう。
プロデューサーに自分のこれまでの恋愛を話したら「それ、ホラーですね」と言われ……
── ゆりやんさん、映画『禍禍女』での初監督おめでとうございます。「台北金馬映画祭」ではNETPAC賞を受賞されたとのこと。今はどんなお気持ちですか。
ゆりやんレトリィバァさん(以下、ゆりやん) ありがたい、まだ信じられない気持ちです。素晴らしい方々とご一緒させていただいて、映画祭でも完成した作品を観客の皆さんに楽しんでいただけて本当によかった。でも、みんなで作ったのに映画祭では「監督です」ってトロフィーとかもらっちゃったので、畏れ多い気持ちと、うれしい気持ちで一杯です。

── 芸人はひとりで世界観を作り上げていく作業が多いと思うのですが、映画はチームでの作業。いかがでしたか?
ゆりやん 芸人として単独ライブをする時などには、もちろん助けてくれる仲間がいますが、ネタを作るのは自分です。例えば人に「こっちの方がいいんちゃう?」って言ってもらっても、言うこと聞かないんですよ、私。基本的に自分が面白いと思っていることや、熱く語れることじゃないと形にできないと思っているので。
でも映画では、自分がやりたいと提案したことに対して「じゃあこんなんもできるよ」とか「それは分かりにくいんで、こっちどうですか」とか、みんなにアドバイスや意見をもらいながら、素直な気持ちで全員で作り上げていけたんです。みんなの脳みそが集まったら、全然想像もしてなかった“クリエイティブMAX”になって、「こんなとこまでいけるの⁉」みたいなことが体験できて、日々感動でした。それと同時に、やっぱりお笑いとも通じる部分があったりして、どっちにも感謝の気持ちで一杯になりました。
── この作品の構想はいつ頃から持っていたんですか?
ゆりやん 2021年のR1グランプリで優勝した後に「ボクらの時代」という番組に出演させてもらったのですが、その時に次の目標を聞かれて「映画監督」と答えていたんです。それをK2 Picturesプロデューサーの高橋さんがたまたま見てくれていて、依頼してくれたことが始まりです。
私は好きな人に対する思いが強く、恋愛中心に生活が回っていくことが多いのですが、高橋さんとどんな映画を撮るか相談をしていた時に、これまでの恋愛のことをあれこれ話したら「それ、ホラーですね」って。
── アハハハ!
ゆりやん んで「ほっとけ‼」ってなったんですが、でもホラーは一番好きな映画ジャンルなんで“ホラーでいこう!”となりました。

── ホラーのどんなところが好きなんでしょうか。
ゆりやん 映画そのものは、ワクワクして楽しいものですが、そこにホラー要素がプラスされると、怖くてドキドキすることでさらなる体験型になるんです。そして見た後の達成感、自分が少し強くなった感じ、思い出してもまだ永続的に怖い。そんなお得な体験って感じが大好きです!
私はホラーに対するリスペクトや憧れ、思い入れが強いので、『禍禍女』も“ホラーといえばこれ!”と言われる映画に絶対なってほしいし、畏れ多いですが、貞子とか、『呪怨』の伽耶子や俊雄くんのように、時を経てもみんながずっと怖がってくれるようなお化けに、禍禍女も追加させてもらいたいという思いがあります。
断られても断られても、私はずっと思い続けてるって伝え続けることが正しいと思っていました
── その禍禍女は、ゆりやんさんの実体験が基になってできたキャラクターだと聞きました。それほどに思いが強い、執着するような恋愛を今までされてきたということですか?
ゆりやん その時は自分自身、執着が強いとは思っていなかったんですよ。ちゃんと自分の一途な気持ちを表現することが正しいと思っていましたし、断られても断られても、私はずっと思い続けてるって伝え続けることが正しいと思っていましたし、好きな人が合コンに行くって聞いたら、後ろから私が使ってる香水とかをかけてみて、私のことを少し思い出してもらえるようにするのも、正しいと思っていました。

── それは確かにやり過ぎだったかもしれません(笑)。
ゆりやん 小学校1年生の時に『おそるべしっっ!!!音無可憐さん』という漫画原作のドラマを観て影響を受けたといいますか。「つきまとって嫌がられても、好きですと言い続けることで結局結婚できるんでしょ?」って、それが愛情表現だと思い込んでしまったんですよね。うまくいかないから自分の中で苦しんだりもしました。
「私は100で好きって言ってるし、あなたは100で無理って思っている」この状態は誰に相談しても「諦めなさい」って言われるんですけど、でも私の100好きとあなたの100無理、どっちも100なのに、なんで諦めるのがいつも私なんだ、1回ぐらい折れて付き合ってみたらええやん!って思っていたんです。だけど、それは間違いだってことは、最近恋愛心理学のYouTubeで見てやっとわかってきたんですけど。
── なるほど……。でも、だからこそこの作品が生まれたんですもんね!
ゆりやん はい、あの時みんなが私を振ってくれたからこそ、今こうやって『禍禍女』が生まれて、映画監督になる夢も叶って、ほんまに振ってくれてありがとう!
── 作品の中に描かれた女性の情念や執着は、恐ろしくて気味が悪くて、夜中にひとりで観られなかったのですが、振り切った面白さもありました。
ゆりやん そう思ってもらえてうれしいです。やっぱり私からしたらホラーではないと言いますか、好きやもん!って気持ちなんです。好きやからしているのに、みんなが怖がっていく、一方から見たら恋愛ですが、立場が変わるとホラーになってしまっているだけのことかなと。
── 立場によって見えるものが違ってくると。ただ作品にするにあたり、恋愛とホラーを混ぜる苦労があったのではないかと思うのですが。
ゆりやん お化けも怖いけど、人間も怖いですよね。打ち合わせ中に「お化けと人間のヤバい女の人の対決も面白そう」という意見をもらって、それを軸に私の恋愛経験や気持ち、あとは何を気持ち悪く思うのかなどをみんなで話し合い、それを脚本の内藤さんが形にしてくれました。大変だったというよりは、みんなで脚本合宿などもしながら楽しんで作り上げられたという気持ちの方が強いです。

決断と判断と責任、それが仕事なんやってことを学びました
── 脚本が内藤瑛亮さんに決まった理由は?
ゆりやん これは話せば長くなるんですけど……、高橋さんが「内藤さんがいい」と言って決まりました。
── めっちゃ短かった(笑)。
ゆりやん でも内藤さんの作品を見させていただいたら、めっちゃ面白くて大好きな感じで。そこから脚本合宿とかロケハンとか、何かというといつも集まって、その時間が楽しすぎて楽しすぎて、内藤さんのことをもっと大好きになったし、仲良くなれてうれしかったです。
── わわわ、それはまた恋愛感情が発動して、猛烈にプッシュして……とはなりませんでしたか?
ゆりやん あ、大丈夫です。まったくタイプではなかったので。人としては大好きです。
── それは何よりです(笑)。主役の上原早苗役が南沙良さんに決まったのは?
ゆりやん すべての役に自分の気持ちや体験が乗っているんですが、早苗は特に自分だったので「これ私でどうですかね?」って言ったんですが、高橋さんに「違います」と言われて(笑)。沙良さんは可愛くて素敵なんですが、心に秘めた早苗の陰鬱な感じを出してくれそうだということで、満場一致で決まりました。
── 演技指導などはされましたか。
ゆりやん やっぱりお客さんには見てびっくりして欲しいじゃないですか。だからストレートにはできないなとは思ったんですが、私は未熟で、それを沙良さんに演出としてどうお伝えしていいのかわからない。なので、一回私がやってみて、それを沙良さんが繰り返して、沙良さんの早苗になるまでやってもらったんです。最終的に早苗のリアルな気持ち悪さとかを、沙良さんの中で噛み砕いて表現してもらえたので、めっちゃ感動しました。

── おふたりで作り上げた早苗なのですね。そして斎藤 工さんはゆりやんさんのオファーだとか。
ゆりやん 工は〜♡、めっちゃ素敵なので、「工さんカッコいいです♡」ってずっと言い続けていて、工も私に人として、芸人として、仕事仲間として興味持ってくれているし、仲良くしてくれていたんですけど〜。恋愛対象として一切興味を持ってくれてなかったんです……。だから出演していただいて、それなりの目に遭わせました。
── あ、そういうことだったんですか(笑)。どんな目に遭ったかはぜひ映画館でご確認していただくとして、白石和彌監督や清水崇監督も出演されていましたね。
ゆりやん 白石和彌監督はNetflixの『極悪女王』という作品でご一緒させていただいた、本当に大好きな尊敬している方です。私、実は、映画監督になりたいですとは言ったものの、映画監督がどういう仕事をするのかまったく知らなかったんです。
『極悪女王』の撮影中に白石監督の姿を見た時には、凄すぎて、私が映画監督になりたいだなんて、なんと畏れ多いことを言っていたんだ、おこがましすぎると思いました。ただその時に学ばせていただけましたし、初めて監督する作品に少し出演していただけたらなと、極悪女王で一緒だった唐田えりかちゃんにも一緒に出てもらいました。
清水監督は私が大好きな作品を世に送り出した尊敬する監督なので出演していただけて本当にうれしかったです。
── 実際にやってみて、監督の仕事はどんな仕事だと思いましたか。
ゆりやん とにかく決断、決断と判断と責任、それが仕事なんやってことを学びました。例えば撮影を始めてカットして、「OK」か「もう一回やらせてください」なのか。OKって言ったら、もう二度とこのカットは撮れない。たくさんの方が動いてくださっているし、物理的に時間がない中でさあどうするか、その判断を瞬時にしなければならないので、責任が重くのしかかることもありました。同時に、これまで「自分が本当に好きなものは何か」と問いかけることが意外となかったことにも気づいたので、自分に問いかける練習にもなりました。
── 全部撮り終わって、完成した作品を観てどう思いましたか。
ゆりやん 総合芸術はこうやってできていくんやっていうのを、ゼロの時から体験できて本当に楽しかったし、これが本当に映画になったんだって感動しました。出来上がってすぐは準備から撮影、編集、仕上げまでずっとほぼ毎日見てたんで、あんまりフラットな気持ちでは見れなかったんですけど、だいぶ日があいてから映画祭などで改めて見た時に「この映画、面白い!」と思えたんです。
そしてこの“クチャッ”って音はあの人が付けてくれたな、とか、ここの照明はあの人だとか、普段当たり前みたいに聞いているこの0.1秒の音を、誰かが付けてくれている、これまで知る由もなかったそのことに気づいて、わ〜っと感動しました。

── 制作してみなければ気づかなかったことがたくさんあったんですね。今も国内外で大活躍されていると思うんですが、今後の目標は?
ゆりやん 次は空手の「形」でオリンピックに出場して金メダルを取りたいです。
── えっ、今まで空手は?
ゆりやん やったことないです。
── ゆりやんさんは多才で行動力もありますから、きっと実現してくれるでしょう! では最後に、ゆりやんさんにとってカッコいい大人ってどんな大人ですか?
ゆりやん 自分自身のことが好きな人。私は目標にしてるんですけど、それって意外と難しくて。自分を好きな人ってめっちゃ自信に満ち溢れてて、カッコいいなって思うんですよね。

● ゆりやんレトリィバァ
1990年11月1日生まれ、奈良県出身。関西大学文学部卒業。大学在学中の2012年に吉本興業NSCに35期生として入学。「NSC大ライブ2013」で優勝し、首席で卒業する。2017年、女芸人No.1決定戦「THE W」第1回大会で優勝。2019年にはアメリカのオーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』に挑戦し、大きな注目を集める。2021年、R-1グランプリ優勝。Netflixドラマ『極悪女王』で主演を務めるなど、女優としても活躍の場を広げ、その他にもアーティスト活動や、トレーニングウエア「YURYUR(ユーユー)」のディレクションなど幅広く活躍中。2024年に活動拠点をアメリカに移す。

『禍禍女』(まがまがおんな)
好きになられたら終わり──好きになられたら死ぬまで逃れらない……執拗に男(ひろし♡)に付きまとう“禍禍女”の正体とは⁉ 宏のことが好きな早苗は、禍禍女の噂を聞き、好奇心から謎に迫る。そして妄想と狂気が交錯する混沌に飲み込まれていく。 監督ゆりやんレトリィバァ自身のリアルな恋愛体験に基づいた“ヤバすぎる恋愛ホラー映画。出演/南沙良、前田旺志郎、アオイヤマダ、髙石あかり、九条ジョー、鈴木福、前原瑞樹、平田敦子、平原テツ、斎藤工、田中麗奈ほか
2月6日より全国公開中。
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