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2025.11.29

高橋克典「ヒューマン系の作品の現場ではいまだに自分を飾る余裕がないんです」

サラリーマン金太郎や特命係長 只野仁など数々の当たり役をもつ俳優・高橋克典さんが映画『栄光のバックホーム』に出演。28歳の若さで亡くなった元阪神タイガースの横田慎太郎さんの生涯を描いた作品です。今作について、そして俳優としての矜持や仕事にかける思いについても伺いました。

CREDIT :

文/長谷川あや 写真/内田裕介 スタイリング/今井聖子(Canna) ヘアメイク/徳田智美 編集/森本 泉(Web LEON)

高橋克典 栄光のバックホーム WebLEON
60代を迎えたとは思えない艶々しい笑顔で登場した俳優の高橋克典さん。芸能生活は30年を越え、サラリーマン金太郎や特命係長 只野仁など当たり役にも恵まれ多くのドラマや映画で活躍してきました。そんな高橋さんの最新作となるのが、11月28日(金)公開の映画『栄光のバックホーム』。28歳の若さで亡くなった元阪神タイガースの横田慎太郎さんの生涯を描いた作品で、高橋さんは横田さんの父親役を演じます。今作について、そして俳優としての矜持や仕事にかける思いについても伺いました。
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「あなたはいつも中途半端」と京香さんに言われて心に刺さりました

── 今回の映画『栄光のバックホーム』は元阪神タイガースの選手で21歳の時に脳腫瘍を発症し、一昨年(2023年)28歳の若さで亡くなった横田慎太郎さんの生涯を描いた作品です。実話だし最近の話なので記憶に残っている方も多いと思います。最初に台本を読んだ感想はいかがでしたか。

高橋克典さん(以下、高橋) ……(しばし考え込んで)そうですね、懸命に生きた青年のひたむきさと、それを支えた家族を追った、かけがえのない命の記録といった印象を受けました。この台本に、熱を吹き込んで、ドキュメンタリーではなく、映画として成立させていくという使命と期待感とともに現場に入ったことを覚えています。
── 実際の現場はどうでしたか。高橋さんが演じたのは主人公・慎太郎の父親・真之さん。深刻なシーンが多かった印象です。

高橋 監督の秋山純さんからは、真之さん本人を意識せずに役作りしてほしいと言われていました。最初に撮影したのが病院のシーンだったこともあり、スタート時は人としての弱さを前面に出して演技したのですが、真之さんは元プロ野球選手。もう少し線の太さを意識したいと考えるようになりました。
高橋克典 栄光のバックホーム WebLEON
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プロ野球選手になるって、それだけでとても大変なこと。プロでは思うような活躍ができなかった真之さんは日の当たる場所も日陰も知っています。いつからか、野球から背を向けるようになってしまい、自分と同じ野球の道を歩む慎太郎さんのことを手放しでは応援できずにいたかもしれない。自分の感情を心に押し込め、自分のこれまでの生き方に疑問を抱きながらも、家族のために働く──、その部分はすごく大切にしました。ただ、秋山監督は撮影が早いんですよ(笑)。すぐにOKが出てしまう。逆に今回は難しかったです。
── 慎太郎さん役の松谷鷹也さんとの共演はいかがでした? 松谷さんは、今回が初主演だったそうですね。

高橋 今しかできない芝居をしていました。松谷くん、これまで秋山監督の作品ではスタッフとして参加していました。いい子でね、今回の現場でもスタッフとして動こうとしていたのですが、今回は主役として参加しているのだから、そういう気の遣い方はしなくていいよと伝えました。

── 鈴木京香さん演じる妻のまなみさんから、「あなたはいつも中途半端」と言われるシーンが印象に残っています。シチュエーションの差こそあれ、現代の男性が女性から言われがちな言葉かと(笑)。どう受け止めました?

高橋 刺さりました、すごく。世の中のことを知れば知るほど、心の内を隠しておかなければいけない局面が増えて中途半端なことしか言えなかったりもする。男社会はとりわけその傾向が強いように感じます。ほかの男性はもちろん、「野球の世界で輝くことはできなかった、これが自分の才能の限界だった」と考えている真之さん。息子の病に向き合いきれない彼には特に刺さる言葉だと思います。ただ、強すぎるお父さんも、それはそれで奥さんも子どもも大変なんじゃないかな(笑)。
──家庭円満のためには、お父さんは少し弱いほうがいい(笑)?

高橋 家庭にもよるでしょうが、ある程度、稼げていればそれでいいんじゃないですか(笑)。
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高橋克典 栄光のバックホーム WebLEON
── 高橋さんご自身が円満な家庭生活を育むために大切にしていることとは? 16歳の息子さんがいらっしゃいますね。

高橋 僕はずっと自分なりのやり方で生きてきました。でも自分がやってきた方法が必ずしも「正解」ではありません。息子には妻の血も入っているし、僕より妻といる時間のほうが断然に長い(笑)。そもそも妻は僕とは正反対の性格なんです。まあ、それが良くて、一緒になったんだから仕方ないよね(笑)。

自我が芽生え始めてきた息子と僕とは別人格。そして、彼はこれからもどんどん変化していきます。ぶつかった時期もありましたが、今は父親としておとなしく見守っています。息子の代わりといったらなんですが、2匹の猫に癒されています。いい仔たちなんですよ、とっても(笑)。

── ブログでよく拝見しています(笑)。そういえば、息子さんはレッグプレスを上げるそうですね。テレビのトーク番組で、高橋さん、誇らしそうに話していました。

高橋 放映後、「200キロじゃない、300キロだ」、しかもスクワット130何セットかやった後で、と息子に怒られました(笑)。アルペンスキーをやっているんです。目標に向けて頑張る事にはいろんなことが詰まっている。
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実際に“演じる”時には、苦しいことも多々あります

── 高橋さんのお仕事観についても教えてください。『ポケベルが鳴らなくて』で連ドラデビューして30年以上。俳優という仕事への向き合い方はどのように変化してきましたか。

高橋 もうね、しょっちゅう変化しています(笑)。はじめは自分のことだけで精一杯でした。デビュー時は演技など、ほぼやったことがない素人でしたが、教えてくれる人もいなくて、ほかの俳優さんを見ながら覚えていきました。やがて自然と見せ方のようなものもわかってきた。自分を客観視することの大切さも知りました。こんな風に経験を重ねることで、「こうありたい」というかたちは変化していきます。

── 2024年に60歳の節目を迎え、この12月で61歳。今の高橋さんが理想とする俳優像とは?

高橋 若い頃は、「いい俳優になりたい」という思いだけで突っ走ってきましたが、今は、「もう少し色っぽく、面白く演じたいな」と考える余裕も出てきました。高橋個人としても、余裕を持って生きていきたいです。まあ60歳といっても、今の60代って昔に比べて、ずいぶんと若いんですけどね。俳優としては、作品でも役柄でも、自分を枠組にはめずに自分の中に可能性のあるものはなんでも挑戦したいと思っています。
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▲ ジャケット63万300円、シャツ14万5200円、パンツ23万7600円/すべてゼニア(ゼニア カスタマーサービス)
── 『サラリーマン金太郎』シリーズや、『特命係長 只野仁』シリーズなど、「これぞ、高橋克典!」という当たり役も多いですよね。

高橋 ありがたいことです。どちらも原作がすばらしいので、自分がどう表現をすれば、より面白くできるかと考えていました。僕は昭和39年生まれ。子どもの頃はヒーロー物の全盛期で、テレビドラマもエンタメ度の高いものが中心でした。白黒はっきりした勧善懲悪物が多く、ショーケン(萩原健一)さんや松田優作さんが大人気で、憧れましたね。僕もずっとエンタメ系の作品への出演が中心で、僕自身もこっち(エンタメ系)のほうが向いていると考えていたなか、ヒューマン系ドラマであるNHKの『翔ぶ男』への出演は、ある意味、転機になりました。こちらの世界に抗えない強烈な刺激を受けたんです。
── 今回の『栄光のバックホーム』も、ヒューマン系の作品です。エンタメ系とヒューマン系では作品に臨む意識は違ったりするんでしょうか。

高橋 ここ数年はヒューマン系に出演させていただいた事もありますが、作品の現場では、「これまでの自分じゃないぞ」という感覚があります。自分を飾る余裕がないんです。寝起きみたいな感じ、といったらわかってもらえるかな(笑)。

そもそも不安定な世界の中で、“演技ができる”ってとても幸せなことだと思うんです。以前、イランのアミール・ナデリ監督のワークショップに参加した際、映画やドラマを撮影できるのは決して当たり前じゃない、奇跡的なことだと痛感しました。世の中は新しい気付きに満ちていて、僕自身、どんどん新しい世界に飛び込んでいきたいという思いがあります。
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── ベテランの高橋さんでも挑戦する心はずっと燃え盛っているのですね!

高橋 自分の芝居でも、ほかの人の芝居を見ていても気付くことはたくさんあります。たとえば、「誰もが知る俳優で、芝居もすばらしいけれど、この人の芝居で泣いたことはないな」とか、「今の台詞、大事だったんじゃないのかな。なんです~っと流しちゃったんだろう」とかね。だから芝居は面白い、でもずっと苦しいです。

── 苦しい……? 

高橋 役作りしている時はすごく楽しいのですが、実際に“演じる”時には、苦しいことも多々あります。いい俳優をたくさん見て来た分、自分の芝居がいいとはなかなか思えない。いやあ苦しいですよ、本当に。だからといって、簡単にやめることもできません。なんなんでしょうね、“演じる”って……。
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● 高橋克典(たかはし・かつのり)

俳優、歌手。1964年12月15日生まれ、神奈川県出身。青山学院中等部・高等部在学中はラグビー部で汗を流していたが、高等部在学中にバンドを組んだことをきっかけにミュージシャンへの道を志す。1993年、シングル「抱きしめたい」で歌手デビュー。同年7月、ドラマ「ポケベルが鳴らなくて」に出演。以降、さまざまなドラマ・映画に出演。ドラマ「サラリーマン金太郎」シリーズ、「特命係長 只野仁」シリーズなど、印象に残る当たり役も多い。1999年公開の映画『サラリーマン金太郎』で、『第23回日本アカデミー賞』新人俳優賞を受賞。2023年には『ベスト・ファーザー「イエローリボン賞」』芸能部門に選出された。12月に東京・明治座で上演される舞台『忠臣蔵』(演出・堤幸彦)では、吉良上野介役を演じる。

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幻冬舎フィルム 第一回作品
『栄光のバックホーム』

2013年のドラフト会議で阪神タイガースに2位指名された横田慎太郎、18歳。甲子園出場を逃すもその野球センスがスカウトの目に留まり、大抜擢された期待の新人だ。持ち前の負けん気と、誰からも愛される人間性で厳しいプロの世界でも立派に成長を遂げていく慎太郎。2016年の開幕戦では一軍のスタメン選手に選ばれ、見事に初ヒット。順風満帆な野球人生が待っていると思われたその矢先、慎太郎の体に異変が起こる。ボールが二重に見えるのだ。医師による診断結果は、21歳の若者には残酷すぎる結果だった。脳腫瘍──。その日から、慎太郎の過酷な病との闘いの日々が始まる。ただ、孤独ではなかった。母のまなみさんら家族、恩師やチームメイトら、慎太郎を愛してやまない人たちの懸命な支えが彼の心を奮い立たせるのだった。そして、2019年9月26日、引退試合で慎太郎が魅せた“奇跡のバックホーム”は人々を驚かせ、感動を呼んだ。だが、本当の奇跡のドラマは、その後にも続いていたのだった……。企画・監督・プロデュース/秋山 純、出演/松谷鷹也、鈴木京香、高橋克典ほか、原作/ 「奇跡のバックホーム」横田慎太郎、 「栄光のバックホーム」中井由梨子(ともに幻冬舎文庫)、配給/ギャガ、制作/ジュン・秋山クリエイティブ
11月28日(金)全国公開
©2025「栄光のバックホーム」製作委員会
公式HP/https://gaga.ne.jp/eikounobackhome/

※商品の価格はすべて税込みです

■ お問い合わせ

ゼニア カスタマーサービス 03-5114-5300

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