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2019.09.02

コンビニ以上の店舗数! 日本全国で約37万店を貫く新事業とは? 【vol.21】

厚生労働省の調べでは、日本には理髪店、美容室は約36.8万も店舗があります(コンビニは6万店ほど)。一般にはあまり知られていませんが、ここで使用されているハサミは特別なものなのです。そんな奥の深い理美容業界にて、友人知人の縁から、家業を“ハサミ研ぎ”事業としてリスタートするというお話しです。

CREDIT :

文/加藤順彦

日本の理美容をアジアへ! 世界へ!

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2004年末に「QB House」運営のキュービーネット代表取締役社長に就き、オリックスが創業者他から発行済み株式の73.9%を取得して筆頭株主となる前捌きを行ってからも、なお株式上場を目指し疾走していた岩井一隆さんが、その長たる席を忸怩たる思いのままに退任したのは2009年末のことでした。

翌年1月、岩井さんが蹉跌を踏み越え理美容室業界での起業することにすると決めた際に、僕も微力ながら、彼のアジア視座の再挑戦に参画させてもらうことになりました。

社長就任前はタイ、マレーシアなどの同社の東南アジア展開の立ち上げを管掌していた岩井さんは、その縁もあってシンガポールに新法人「MJ Tokyo Holdings Pte Ltd」の本社を置き「日本の理美容を世界に、特にアジアに広める」という志のもとカットハウスチェーンをシンガポールと東京で創めました。

低価格の美容事業は思った結果が出ず……

同時並行のクロスボーダー展開を志向し、低価格の美容室を東京とシンガポールで数店舗展開するも……他社との差異化ができず、2013年に方向転換を余儀なくされたのちに、同社は日本最大級の美容室チェーン「Ash」の海外ブランド「Naoki Yoshihara by Ash」の運営受託会社として舵を切り直しました。

僕も流れに寄与すべく、インドネシアの事業パートナーを取りまとめ翌年開店するに至ったのですが、その後Ashとの発展的な関係には至らず、2016年よりMJ Tokyo社は「休眠」という選択をとりました。

生来の商いバカの僕は、美容室事業の試行錯誤を通じて、そもそも理髪店、美容室の商いが如何に属人的でチェーン化に向かないものか、ということを経験を通じて思い知りました。
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QB House、商いモデルの強さとは?

一方で、今や国内外で671店舗(2018年6月現在)、年間2000万人超の来客数を誇るQB Houseの商いモデルの芯である「10分1000円」(当時)「指名不可」が何故に強いのかを学びました。

日本においてはリクルートのホットペッパービューティとAirレジの快進撃によって、個々の理美容室のあらゆること(新客販促、顧客・予約・売上・費用の管理、給与計算、税務申告etc)が統合されていくのを唖然と眺めることになりました。

今や遍く日本の美容室の評判、スタイリストの評価はインターネットのコモディティ化とリテラシー浸透によって可視化されはじめています。

かたや僕は、MJ Tokyo参画以来、長い間、日本の理美容室産業において、普遍的かつ世界でも通用するサービスを探し続けてきましたが、突破口が見いだせずにいました。

スケールしないというか、技能に基づいた顧客との密な関係が基盤となる接客業なので仕組みに成り難いな、と感じていました。

しかしリクルートは、IT化が遅れており且つ個人零細事業主がマジョリティの産業であるが故に、大きなパイを掴めているのです。なにか切り口があるはずだ、とモヤモヤと考えるがままに数年が経過していきました。

家業を“ハサミ研ぎ”というアイデアでリスタート

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昨年2018年4月。ピーカンの昼下がり、僕はオーストラリアのパースで電車に乗っていました。海沿いをゆるりと走る車両の席に腰掛け、南極へ繋がる水平線の向こうをぼっと眺めながら、僕に遺された家業のことをまた考えていました。

前年4月に金属と鋼材の加工・卸売を営む家業を継いでいた弟を事故で喪ってからもう1年が経とうとしていましたが、再興の糸口を見つけられないままでした。

アポ合間の移動時も、深夜の寝床でも、僕は家業のリソース(70年の社歴と信用、金属加工の作業施設・倉庫、社有地)を活かせるアイデアを捻れないか、ずっと脳内ブレストしていたのです。

すわ……海面を跳ねた一筋の光のような魚を観た刹那、前々月2月開催の講演の参加者の一人に、”ハサミ研ぎ”という肩書の安藤和範さんがいたことが、唐突にアタマに降りてきました。アイデアが「繫がった」のです。
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理美容のためのハサミ事業で世界に出る!

翌週、四半世紀もの間「ハサミ研ぎ師」を営んできた安藤さんとお会いし、閃いた新事業案の芯について握り合えた僕が、先ずその反応を得たいと脳裏に浮かんだのは誰より岩井さんでした。

現在、岩井さんは躍進著しいウエディングフォトスタジオ・結婚式場運営・貸衣裳の企業にて要職に就いておられるのですが、僕はかつて理美容の世界で共に夢を見た彼の意見が聞きたくなったのです。

4月19日お昼、六本木の叙々苑で僕は90分間、ひたすらに理美容ハサミ事業についてのアイデアを語りました。そして、その場で彼から「加藤さん、これはイケますよ。世界に出られる」と。

また近未来に事業をご一緒しよう!と勝手に思い続けてきた岩井さんに太鼓判を押してもらえたことで自信を深めた僕は、そのまま安藤さんと共に家業の承継にこのシザー事業を新たな接ぎ木として挑むことを腹に決めたのです。

お陰さまで新生「マルイチスチールセンター」の新機軸"高即シザー買取"は順調に滑り出しています。厚生労働省の調べでは、我が国に理髪店、美容室は36.8万店舗あります。

世界にはその何十倍もあるでしょう。人間だけが道具を使うことで生まれ持った能力を劇的に増幅します。商いバカとハサミは使いようってことを、己のベンチャー型事業承継で爪跡としてこの世に遺したいのです。
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● 加藤順彦ポール(事業家・LENSMODE PTE LTD)

ASEANで日本人の起業する事業に資本と経営の両面から参画するハンズオン型エンジェルを得意とする事業家。1967年生まれ。大阪府豊中市出身。関西学院大学在学中に株式会社リョーマの設立に参画。1992年、有限会社日広(現GMO NIKKO株式会社)を創業。2008年、NIKKOのGMOグループ傘下入りに伴い退任しシンガポールへ移住。2010年、シンガポール永住権取得。主な参画先にKAMARQ、AGRIBUDDY、ビットバンク、VoiStock等。近著『若者よ、アジアのウミガメとなれ 講演録』(ゴマブックス)。

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