2026.07.05
【第13回】
「20代では薄い恋愛を重ねていました」。恋愛下手な美女が今思うこと
生き方や恋愛の価値観が変わりつつある現在、大人の女性たちはどんな恋愛をしているのか、大人の女性たちは何を求めているのかを、奥渋谷のバー「BAR BOSSA」のマスターにして作家の林 伸次さんが、バーテン仕込みの絶妙な話術で深掘りします。
BY :
- 文/木村千鶴
- CREDIT :
取材/林 伸次 写真/椙本裕子(YUKIMI STUDIO) 編集/岸澤美希(Web LEON)
生き方や恋愛の価値観が変わりつつある現在、恋愛も結婚もしなくたっていいこの時代に、大人の女性たちはどんな恋愛をしているのか。大人の女性たちは何を求めているのか。
本連載「林伸次のLove la Bossa」では、奥渋谷のバー「BAR BOSSA」のマスターにして作家の林伸次さんが、バーテン仕込みの絶妙な話術で大人の女性の本音を深掘りします。第13回のゲストは愛未さん(40歳)です。

「可愛い」と言われても、ずっと自信がもてません
── こんにちは、林です。今日はよろしくお願いします。まずはここでのニックネームを決めたいのですが、誰かに似ていると言われることはありますか。
「え〜誰だろう。あ、比嘉愛未さんに似ていると言われたことがあります」
── では愛未さん、とても可愛らしい方だからきっとモテてきたんだろうなと思ったのですが、自分で「あれ、私ってちょっと美人なのでは?」と気付いたのっていつ頃ですか?
「え? 今でも気付いていないかもしれないです(笑)。『可愛いね』とは言ってもらえるけど、本当かなって、ずっと自信がない状態かな」
── じゃあ、僕の言葉もちょっと疑っていますか?
「そうですね。合コンとかで男性に言われても『女性を持ち上げて気持ちよくさせてくれているんだな』と思いながら聞いています。私、世渡りはうまい方なので褒めてもらうことも多いけど、可愛い人っていっぱいいるから……」
最初にできた彼はヤリモクでした

── 褒められてもそう受け取ってしまうことがあるんですね。では、最初に付き合った人のことから教えていただけますか?
「大学1年で初めて彼氏ができました。サークルの先輩から告白されて付き合ってみたんですが、2週間くらいしか付き合ってないんですよ。その彼は多分ヤリたかっただけだったと思うんですが、目的を達成した3日後に振られました」
── ええ〜! ひどい男だな。
「本当にひどいですよね。ただ自分自身、大学生になったのにバージンってちょっと恥ずかしいみたいな思いもあったのは間違いなくて」
── そうすると、愛未さんも初めてできた彼でバージンを脱ぎ捨てたような感じだったんですね。
「そう。そして実は私、その彼ではなく他の先輩のことが気になっていたんですよ。大学3年くらいまでずっと好きだったんですが、その先輩には彼女がいたから」
── すると大学時代は誰とも恋愛せず、その先輩のことをずっと思い続けたんですか?
「いえいえ、合コンにも行きまくったし結構遊んではいたけど、ずっとその先輩のことが心の片隅にあって、彼氏って言うほどには誰のことも好きになれなかったんです」
── ああ、時々聞きます。こんなに可愛いのになんでずっと片思いやってるんだろうって感じの人がいるんですよ。
「本当にもったいないことをしたなって思います。一生懸命に出会いを求めなくったっていくらでも出会いがある時期だったのに」
── どんな人だったんですか? カッコよかった?
「カッコいいとかじゃないんです。なんかこう、人をうまく転がすタイプっていうのかな。誰とでも仲良くなって、それなりに遊んでるくせに要領が良くて成績も良い、何でもできちゃうタイプ」
── 人たらしですね。その先輩とお付き合いすることはなかったんですか。
「なかったです。それどころか、先輩と私の友人を含めた男女4人で家飲みをして、朝起きたらこっそり友人と先輩がイチャついていたんですよ。もうショックでショックで号泣しながら帰ったんですが、それをきっかけにようやく吹っ切れました」
── それは嫌なものを見てしまいましたね。友達も愛未さんの気持ちは知っていたんですよね。
「もちろんです。先輩も私の気持ちに気づいていたし、ダブルでショックでその友人とも縁を切りました。それで目が覚めたのか、その後すぐに彼氏ができて、大学を卒業する頃まではお付き合いしました」
付き合っても1年くらいでだいたい終わってしまう

── それはよかった! 大学を卒業してからはどうでしたか。
「就職したら営業の部署に配属されましたが、新人のうちは飛び込み営業があったので結構大変でした。ピンヒールを履いて一日中歩くんですよ。例えばビルの最上階まで行って、上から順に降り各階にある会社に満遍なく名刺を置かせてもらう、みたいなやり方で」
── それは大変な仕事! お客さんは話を聞いてくれました?
「新人の時にはなかなか成績にはつながらなかったんですが、話は聞いてもらえたかな。そうすると会社に報告ができるから、それだけでありがたいんです。でも頑張って仕事をしていたので、その後エリアで営業成績トップにもなりましたよ」
── すごい! でも、確かに誠実そうだし、明るい雰囲気ですから、その結果には納得です。
「とはいえ、おじさんたちに可愛がってもらったことで成績につながったのはあると思います(笑)」
── そのおじさんたちが性的なことを要求してくることはなかったですか。
「取引先にそういう危ない人はいなかったです。時代的にはあってもおかしくなかったのかもしれませんが、食事に行っても一軒で解散、ご馳走してくれて、愚痴も聞いてくれるという“得”しかない環境でした」
── その頃の恋愛はどうでしたか?
「やっぱり彼氏は欲しいので、合コンにはよく行っていました。ただ、流れでそういう関係になっちゃって、そのまま付き合わないことが多かったですね」
── そうか〜。その当時は合コンが流行っていたんですか?
「今はマッチングアプリが主流のようですが、当時は合コンが流行っていたと思います。月イチはやってたかな? それくらいないと不安になっちゃってました(笑)」
── 合コンではモテました? モテそうだな〜と思いますが。
「ノウハウも身につけていますから、気になる人とデートするところまではいきますよ(笑)。1回のデートで終わるか、その先少し続くかくらいですけど。私、付き合っても1年くらいでだいたい終わっちゃってるんですよ」
── と言いますと、3、4年付き合ったような経験って、あまりない?
「そうなんです。今までずっとない気がします」
私、本当に優しくて大事にしてくれるような人が怖くて、なんか距離を置いちゃうんです

── それって、自分で理由は思い当たりますか?
「20代の頃はセフレがいればいいかなと思っていました。私、本当に優しくて大事にしてくれるような人が怖くて、なんか距離を置いちゃうところがあるんですよ。今思い返すと、子供の頃から私に思いがある人が苦手だった気がします」
── 誰かに熱烈に好かれたり、追いかけられたりするのが苦手?
「言葉にするのは難しいんですが、優しくされて心を許した後にいなくなられることが怖いのかもしれません」
── そうか、優しくて素敵な人が私のことを好き好きって言っているけど、胸に飛び込んだ途端にいなくなっちゃうかもしれない、だったら心を許さないでおこうと思っている。この気持ちは近いですか。
「それが一番近いかもしれないです」
── でも、そうすると良い恋愛はできないですよね?
「はい。たぶん私は恋愛が下手です。だから20代の頃は薄〜い関係を続けていくのが楽だったんだと思います」
── お互いに深く入り込まない関係は、ラクですもんね。でも、いつも仲良しのカップルっていいなとは思いませんでしたか。
「羨ましい気持ちもあったし、それなりにちゃんと本気になれる人を探してはいました。今思えば『あの人良かったな』って人もいますが、急に面倒くさくなっちゃったりするんですよね〜」
── なかなか複雑な心境なんですね。その良かった人なと思えた人について、後編で聞かせていただけますか。
後編に続く

■ bar bossa(バール ボッサ)
ワインを中心に手料理のおいしいおつまみや季節のチーズなどを取り揃えたバー。 BGMは静かなボサノヴァ。
住所/東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
営業時間/月〜土 19:00〜24:00
定休日/日・祝
問い合わせ/TEL 03-5458-4185
● 林 伸次(はやし・しんじ)
1969年徳島県生まれ。早稲田大学中退。レコード屋、ブラジル料理屋、バー勤務を経て、1997年渋谷に「bar bossa」をオープン。2001年、ネット上でBOSSA RECORDSを開業。選曲CD、CDライナー執筆等多数。cakesで連載中のエッセイ「ワイングラスのむこう側」が大人気となりバーのマスターと作家の二足のわらじ生活に。小説『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる』(幻冬舎)、『世界はひとりの、一度きりの人生の集まりにすぎない。』(幻冬舎)、『恋愛は時代遅れだというけれど、それでも今日も悩みはつきない』(Pヴァイン)、最新刊は『30歳になってもお互い独身だったら結婚しようか』(三笠書房)。













