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2019.01.29

ちょっとした妄想が280万USドルの調達になるまで【vol.14】

シンガポールを拠点にアジアを巡るエンジェル投資家、加藤順彦ポールさん。この10年、東南アジアを中心に周る中で得た、投資の知識や処世術、そして関わるひととの熱いドラマを展開します。

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文/加藤順彦

”途方もない妄想”にこそ価値がある!?

「それ実現できたら凄いよね~(棒)」系のビッグアイデアが好きです。大ぼらというか、途方もないことを妄想することは楽しいですよね。その実現に向かって一歩前に踏み出すことがとても尊いと思うのです。意思を口に出し、文字にし、インターネットで発信(アウトプット)することが、己を取り巻く世界を変えていく。その様子をこの30年で何度も見届けてきました。

2010年の夏、堀江貴文さんがシンガポールに遊びに来たとき、彼から教えてもらったのがエアラインのアライアンス網を通じた 世界一周の周遊券でした。それやってみよう!と学生企業の頃からの親友とふたりで2011年5月と6月に実行。計45日(1都市5日ほどの滞在で、合計8都市ほど周遊)の世界一周のツアーを計画しました。

行程は成田から出発→(ヒューストン経由)→リマ→サンパウロ→(ヨハネスブルグ経由)→ナイロビ→イスタンブール→ムンバイ→バンコク(バンコクをハブにプノンペンとダッカはLCCを使い周遊)→関空に帰国と決めました。

計画しながら何をしに世界一周するのかを考えました。物見遊山&親友と一生忘れないような体験をすることは無論あるのですが、加えて重要な目的として その地その地でがんばっている日本人起業家に会うことと定めました。
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世界一周旅行で偶然知った、農業への投資

で、各地にて出会う人を見つけるべく、ブログやSNSで発信してみたんです。そこで連絡をくれた方のひとりが、シェムリアップ(カンボジア)で農業・畜産業を営むという北浦健伍さん。プノンペンに来るのであれば、飛行機で50分だから寄ってください、と。

面白そうなので、旅程の最後の訪問地として組み入れ、広大な面積(台東区と同じくらい)の農場や養豚場を見に行ったのです。世界一周からの帰国後、2年ほどのやりとり&熟考を経て2013年の春、僕と親友は20万USドルずつを北浦さんの営むカンボジアでの大規模農業に投資することに決めたのでした。

ところが事態は一変! 投資は半年を経て、ほぼすべて霧消となりました。というのは400ヘクタールほどある大規模農地を開墾して植えた農作物(主にキャッサバという芋)が、カンボジア全土を急襲した超大型台風「ハイエン」によって根こそぎやられ、その収穫高は当初計画していた総量の2割弱となってしまったというのです。僕らの投資は溶けてしまいました。

えええ……まじか。ぜんぶパーなのか……農業、恐るべし。目の前で北浦さんが語る台風の甚大な被害の状況を聞きつつ、僕は半ば意識が薄れゆくなかで(笑)、彼自身が台風被害で気づいた新しいアイデアに聞き入っていました。

北浦さん曰く、カンボジアに限らず、全世界の新興国、後進国に至るまで爆発的な普及が進んでいたアンドロイド携帯電話には「GPS」が実装されています。これを使って農地の測量や状況を記録するアプリケーションとクラウドサービスを作りたい、と。

ああ、なるほど。僕は北浦さんが「言っていること」はぼんやりと解ったのですが、それをどうすれば作れるのか、は解らなかったんです。でも面白そうじゃん。おじゃんになってしまったことをあれこれ考えていても仕方ない。それよりもコケたことで気づいた発想から得られたことを果実にすべきだ、と。
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現代版、災い転じて福となす

本田圭佑さんのお隣が北浦健伍さん(左)
シンガポールに帰って、すぐにシステムを作れそうなひとに「来月一緒に、カンボジアの農地に行きましょう!」と用件より前に、視察の日程の確保をお願いし、翌月またカンボジアに出動。その甲斐あって11か月後の2014年11月、「AGRIBUDDY」アプリを全世界のGoogle Playからダウンロード開始へと漕ぎつけました。その際のプレスリリース→ https://www.atpress.ne.jp/news/53732

このβ版を公開して4年。この「AGRIBUDDY」は孫泰蔵さん率いる「Mistletoe」、本田圭佑さん、家入一真さんたちに第三者割当増資に参加していただき、総額で280万USドルの資金調達(シリーズAラウンド)を完了することができました。本田さんにはご投資いただくとともに、AGRIBUDDYのブランドアンバサダーヘッドに就任していただきました。

妄想することからしか新しい価値も雇用も生まれない

世界一周での出会いから7年半。農地に投資してから5年半。ようやく出発点に立った感がある一方で、やっとここまで来た気もします。意味があるのは過程だなと感じるし、結果が全てであることも知っています。 起点である妄想そのものには価値がありませんが、妄想することからしか新しい価値も雇用も産業も生まれないなぁと再認識しています。

シリーズAラウンドの資金調達でMVP級の大活躍をしたのは、2017年3月からDirectorに着任した繁田奈歩嬢でした。2011年、ブログの世界一周告知を観た彼女は、僕にコンタクトしてくれ「ムンバイには行かなくていいから、私に逢いにデリーにおいで」と誘ってくれたインド在住の起業家で、のちに北浦さんに紹介した人なのです。

● 加藤順彦ポール(事業家・LENSMODE PTE LTD)

ASEANで日本人の起業する事業に資本と経営の両面から参画するハンズオン型エンジェルを得意とする事業家。1967年生まれ。大阪府豊中市出身。関西学院大学在学中に株式会社リョーマの設立に参画。1992年、有限会社日広(現GMO NIKKO株式会社)を創業。2008年、NIKKOのGMOグループ傘下入りに伴い退任しシンガポールへ移住。2010年、シンガポール永住権取得。主な参画先にKAMARQ、AGRIBUDDY、ビットバンク、VoiStock等。近著『若者よ、アジアのウミガメとなれ 講演録』(ゴマブックス)。

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