Trinidad Vigia
しかし、よく考えるとグラスや茶碗のエッジに触れるのは単なる口ではなくて、くちびるなんですよね。そう考えると、くちびるは味覚の重要なセンサーでもあるわけです。
ところが「口当たり」とは、味わいの濃淡をイメージする場合もあるから紛らわしい。僕は、旨い不味いを論じる時に、「口当たり」と「くちびる当たり」を分けて考えるべきだと、常々思っています。
その最たる例が、シガーです。シガーでいう口当たりには、くちびるでの触感の心地よさと、けむりを舌でころがす心地よさの双方があるからです。
だから、旨いシガーを選ぶコツは、吸い口のくちびる当たりの良し悪しの判断もあるわけです。
彼女とキスをするようにシガーにくちづけをしてみたい
小さな尻尾みたいなのが飛び出していますよね。これ業界用語でいう、いわゆるピッグス・テイルというもの。豚の尻尾のようなものは、昔ながらの熟練の手巻きの手法のひとつです。
「吸い口をハンドメイドで丁寧に仕上げていますよ」という職人芸の証でもあるのです。こういうシガーは、僕の経験から言っても、くちびる当たりがすこぶるいい。
ちなみに、このシガーは、もともとキューバ国賓のための特別なブランドで、いまでも一本ごとに丁寧な手仕事で仕上げられています。
彼女とのファースト・キスの、あの胸の高まりを想像しながらの一服は、さぞかし旨かろうと思うのであります。
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中村孝則●コラムニスト
世界各国を独特の視線で読み歩き、さまざまなメディアでラグジュアリーライフを提案。