2025.06.22
【第79回】 甲殻類のラーメン1
甘くて濃厚で気品あるオマール出汁のラーメンはどこにある?
日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。
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文・写真/山本益博 編集/森本 泉(Web LEON)
海老の香り高く甘みがあるスープと白飯の美味しさが溶け合って
「アストランス」のオーナーシェフのパスカル・バルボは、日本贔屓というより、日本料理の良き理解者で、日本の食材を巧みに使いこなし、敬意を払って料理しているフランスの料理人の一人である。バルボシェフを師と仰ぐ、東京「カンテサンス」の岸田周三シェフとの交流で、日本料理の理解を深めてきたともいえる。

オマール海老の殻から取ったスープのことを「ビスク」と呼ぶ。「ビスク・ド・オマール」は、高級レストランのご馳走で、私は、50年ほど前、パリの豪華絢爛のレストラン「ラセール」で初めて食べた。
甲殻類とりわけオマール海老の殻からは、実にうまい出汁がでる。甘みが強く、濃厚な味わいで、滑らかな味に仕上げる。

季節と質と鮮度がいのちで、いま日本では,カナダなどから輸入されてくるロブスターがあるが、オマールの本領が誤解されかねないものがほとんどといってよい。

海老出汁ラーメンの現状はと言えば……
フレンチ出身のラーメン店主が「オマール」を使ったラーメンをいただいたことがあるが、「オマール」は名ばかりで、気品のある海老の味わいはどこを探してもなかった。
パリで人気の「こだわりラーメンTSUKIJI」にも「オマール海老のまぜそば」があるが、「オマール」は名ばかりで、他の食材の陰に隠れるばかりだった。

新橋にある「海老ポタ」も、海老の香りが豊かで、濃厚でなく、塩味もほどよく、また食べたくなる海老出汁のラーメンである。



● 山本益博(やまもと・ますひろ)
1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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