NSXのストレート、BRZのコーナリングの前にメルセデスの苦戦……

　杜の都、仙台市南郊外にあるサーキット「スポーツランドSUGO」。山間の土地を切り拓いて造られたサーキットだけあって、中速から高速のコーナーが連続、かと思えば直線もそこそこあり、それでいてコース幅が狭い。さらに標高差が70メートルもあり、アップダウンも加わるというまさにテクニカルなコース。一瞬の隙やハンドリングミスからクラッシュに繋がるようなアクシデントも多く、そのため“SUGOには魔物が棲む”と言われ続けてきた。

コースとしては前述のとおりなため、車重が軽いマシンが有利と言われている。ところが車重の重たいメルセデスではあるが、コーナリングでのスピードやブレーキングに定評があり、意外にも苦手ではないコースというのも戦前の下馬評だった。しかし、そんなメルセデスにとって魔物以上に恐ろしかったのがウエイトハンデ。

シリーズ3位につける65号車・LEONレーシングは、前戦までの総獲得ポイントにより78㎏のウエイトを積まねばならなかったのと同時に、さらに性能調整ルールが適用され50㎏の増量を余儀なくされた。つまり、プラス128㎏――。大の大人をふたり乗せてレースをするようなものだ。

これでは得意のブレーキングもコーナーのだいぶ手前で踏まざるを得なくなるし、ブレーキング後の立ち上がりスピードにも影響が出る。もちろんストレートスピードも出にくくなり、総じてタイヤの摩耗も他チームよりもきびしいものに……。そんな圧倒的不利な戦いが予想されるなか、レースは行われたのだ。

9月15日（土曜）の予選。全車同走だとアタック時に何かと不都合との判断により、14台ずつ2組に分かれて行うことになった。最初に登場したのは蒲生尚弥選手。雨で濡れた路面が乾いてきた難しいコンディションのなかアタックを決めA組3位で通過。そしてA、B両組の上位14台による第二予選には、黒澤治樹選手が登場。今度はドライコンディションでスタート。だが、思うようにタイムが伸びない……。結果、14台中14位という順位で翌日の決勝レースのスタート順が決まった。

レース後、しきりに首をかしげていた黒澤選手。タイヤとコンディションのマッチングが今ひとつだったことに加え、本人の思ったタイヤの温まり方と実際の温まり方に隔たりがあり、タイムアタック時にはタイヤがすでに保たない状態になってしまったことも原因だったようだ。それでも「マシンを微調整して決勝に臨みます。予選とは違う展開になると思う。最後まで諦めません」と力強く語った黒澤選手。7列目からのスタートとなったが、魔物を味方につければ上位進出も夢ではないポジションだ。

翌決勝。昼前後には汗ばむほどの陽気となり、ストレートスピードで時速10㎞も早いホンダNSXや、今レースに向けてマシンの改良を重ねてきたスバルBRZといった国産マシンに差を広げられてしまう。
300㎞のレースがスタート。全長3700mほどのコースを約76周という計算だ。スタートドライバーは黒澤選手。スタート直後に１つ順位を下げたが、それでもいいペースで周回を重ねるも、どうしても前車を抜くところまでは至らない。やはり、ウエイトハンデがきついようだ。そこでチームは思い切った作戦に出る。22周目、早くもピットインをしてドライバーを蒲生選手に交代し、タイヤも4本交換したのだ。リタイアやトラブルなどで戦線離脱するチームも出始め、最後は9位でフィニッシュ。さらにフィニッシュ後、上位チームにペナルティが科せられたことで8位という結果に。

第5戦までで総合1位の55号車・BMW M6、そして2位の31号車・プリウスは0ポイントに終わったが、別のメルセデスAMG GT3がSUGOで3位表彰台を獲得し、総合2位に浮上。これによりLEONチームは4位と順位をひとつ落としたものの、1位からのポイント差は2ポイント詰めて10ポイント差に。残る2戦で十分に逆転可能な位置につけている。第7戦ではそれまでのウエイトハンデが半分に、最終戦では0に戻る。いよいよ正念場。優勝争いの行方から目が離せない――。