世界で選ばれし11人のみの試乗会

▲ 今年発表されたばかりの『ヌヴォラーリ』が公道デビュー。
アウディのまったく新しいスーパースポーツカー“ヌヴォラーリ”にアメリカ西海岸で試乗してきましたが、年に何回もスーパースポーツカーのイベントに参加している私にとっても、今回の国際試乗会はかなり特別なものでした。
まずはお値段が1億円以上、最高出力(システム出力)が1001ps、生産台数が世界限定499台というだけでもかなりビビリますが、とはいえ、似たようなお話がほかにないわけではありません。

▲ おそらくアウディ史上、最高値⁉の一台。
驚きの第一は、世界中から招待されたジャーナリストがたったの11人で、そのひとりひとりがアウディのゲルノート・デルナーCEOと一緒にヌヴォラーリに試乗して、インタビューさせてもらえる機会が設けられたこと。光栄にも、そのうちのひとりが私だったわけですが、いくら国際試乗会とはいえ、CEOがそこに同席するのはランボルギーニくらいで、他ブランドでCEOが参加した例は本当に数えるほどしかなかったくらい例外的なこと。ましてや、一緒に試乗車に乗るなんて企画は、これまで経験したことがありません。

▲ アウディ CEO のデルナー氏(左)と、モータージャーナリスト 大谷達也氏(右)。
では、なぜデルナーCEOは11人のジャーナリストとともにヌヴォラーリに試乗したのでしょうか。その理由を、デルナーCEOはこんな風に説明してくれました。
「ヌヴォラーリはアウディ史上、もっともパワフルで、もっとも速く、そしてもっとも高価なモデルです。しかも499台の限定生産で、次世代のデザイン言語を採用した最初のモデルでもあります。私たちは、このデザインとともにアウディが新しい時代に入ったと考えています。それくらいヌヴォラーリは重要なモデルで、アウディの新時代を示すビーコンライト(誘導灯)となるものだと捉えています」
デザインが変わっただけでブランドが新時代に入るなんて、普通に考えればかなり異例なことですが、ヌヴォラーリのデザインを見ると、デルナーCEOが言っていることが理解できるような気がしてきます。それくらい、ヌヴォラーリのデザインはユニークですよね。

なんといっても、直線基調のシンプルなスタイリングが目を引きます。言葉は悪いですけれど、写真で見るとちょっと「折り紙細工」のようにも思えるのではないでしょうか。
おかげで、思わず「こんなデザイン、これまで見たことない!」と言いたくなりますが、実は昨年9月にイタリア・ミラノで発表されたアウディのデザインスタディ“コンセプトC”も、シンプルで直線的という意味ではヌヴォラーリとよく似ています。
それもそのはず、コンセプトCとヌヴォラーリのデザインを指揮したのは、2024年6月にアウディのチーフデザイナーに就任したマッシモ・フラスチェッラだったのです。そして、コンセプトCとヌヴォラーリに見られる「シンプルで直線的」なデザインこそ、アウディの次世代デザイン言語の核を成すものなのです。
では、なぜアウディの次世代デザイン言語は「シンプルで直線的」なのでしょうか。

▲ 昨年発表された「アウディ」のコンセプトカー『コンセプト C』。
その第一の理由は、フラスチェッラ自身が徹底的なミニマリズム主義者であることにあります。ちなみにフラスチェッラは以前ジャガー・ランドローバーに在籍していて、シンプルなデザインで世界中に衝撃を与えた“ジャガー・タイプ00”のプロジェクトを率いたとウワサされている人物です。つまり、彼は「シンプルで直線的」なデザインがもともと好きなんですね。
でも、私自身はコンセプトCやヌヴォラーリとタイプ00では、目指した方向性がまるで違っていると受けとめています。というのも、タイプ00は「いままでのクルマからどれくらいかけ離れているか?」をテーマにしているように思えたのに対して、コンセプトCやヌヴォラーリは「アウディの伝統を表現する」ことに重きが置かれていたからです。

▲ 無駄のないミニマムなデザインに惚れ惚れしてしまいます。
実は、コンセプトCのデザインは、1930年代に活躍したアウトウニオン・タイプCというレーシングカーをオマージュしたものです。ちなみにアウトウニオンはアウディの前身だったブランド。つまり、そこには伝統を重んじる気質が感じられます。
ヌヴォラーリを試乗した際に取材したアウディのデザイナーは、こんなエピソードを聞かせてくれました。
「フラスチェッラ自身はアウディの次世代デザイン言語について明確なアイデアを持っていました。そのうえで、彼は私たちに『アウディ・デザインの歴史を徹底的に見直せ』と指示しました。つまり『伝統を重んじる』ことを求めたのです」
同じフラスチェッラのプロジェクトで、ちょっと見には似たように思えるジャガー・タイプ00とヌヴォラーリには、これだけ大きなコンセプトの違いがあったのです。

▲ 今後のアウディは、全車この面になっていくことでしょう!(おそらく……)
さらに驚くべきは、アウディはヌヴォラーリで用いたデザイン言語を、将来的に登場するすべてのアウディに応用する計画のようです。もちろん、その解釈はセダンかSUVかハッチバックかによっていく分、変わってくるでしょうが、「ヌヴォラーリの兄弟たち」がこれから街を走るようになると考えただけで、ちょっと愉快な気持ちになってきますね。

さて、肝心のヌヴォラーリの印象ですが、1001psという強烈なスペックの割りにはマイルドな乗り心地で、とても快適でした。ハンドリングにもスーパースポーツカー特有のピリピリした感じがなく、ロングドライブもリラックスして楽しめそうです。そういえば、インテリアのデザインやカラーもシックでオシャレ。しかも、スーパースポーツカーにしてはキャビンが広々としているので、これなら彼女を助手席に迎え入れても喜んでもらえそうです。

▲ なんと、最高出力は1001馬力です……。
ただし、ヌヴォラーリのお値段は1億円以上とハードルは高め。しかも、まだ予約注文の段階なのに、499台を越えるリクエストが世界中から舞い込んでいるそうです。というわけで、いまからヌヴォラーリを手に入れるのは難しいでしょうが、これと同じエッセンスを持つアウディが順次登場するとのことなので、そちらを楽しみに待ちたいところです。

▲ エクステリア同様、インテリアも超絶ミニマムな仕様に。

■ アウディ ヌヴォラーリ
全長×全幅×全高/4720×2023×1205㎜
車両重量/1750kg
エンジン/4.0ℓV8ツインターボ+4基モーター
最高出力/1001PS
最大トルク/730Nm
価格/非公開
※いずれも認証前のデータのため、今後変更となる可能性アリ。

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