2026.05.17
オフシーズンならではの旅の魅力
自動車ジャーナリストとして50年以上のキャリアを持つ筆者は、世界中を廻ってきた旅のプロでもあります。そんな筆者ですがプライベートではオフシーズン、それも冬の旅を好むそう。その理由とオフシーズンでしか味わえない魅力を語ります。
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イラスト/溝呂木 陽 編集/高橋 大(atelier vie)
岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第281回
わが家は冬の旅、オフシーズンの旅が好きです!

京都、鎌倉、真鶴に親しい友人がいて、時々遊びにゆく。時期は、12月初旬頃を中心にしたオフシーズン。そうするいちばんの理由は「空いているから」だ。
多くの人たちは、仕事や学校等の関係で、「旅に出られる日程」が否応なく一定の範囲内に限られてしまう。だから、混雑しているのを承知で出かけざるを得ない。
幸いにも僕の仕事は、予めしっかり予定を立てて関係者と調整しておけば、かなり自由に旅の予定が立てられる。とてもラッキーだ。
1週間ほど前、京都に住む友人と電話で話していて、「今の京都は空いているの混んでいるの?」と聞いたら、即、「混んでいるに決まってるじゃないですか!」との返事。
それも半端な混み方ではなく、大混雑と言ってもいい状況らしい。とくに、海外からの旅行者が多く、京都住民の行動範囲はかなり狭められてしまっているようだ。
僕は、そんな状況を見越して、彼のところに行くのはいつも12月初旬。より細かく言えば12月5日~10日前後に的を絞っている。
この日程なら、新幹線の切符も難なくとれるし、ホテルもとれる。
テラスから、広大で素晴らしい眺望が得られるお気に入りの部屋もとれる。
友人ご夫妻と有名ホテルのカフェラウンジに行くにしても、すんなりとことは進む。
僕も家内も、いわゆる「名所旧跡」にはあまり自発的には行かない。でも、去年は友人が連れて行ってくれたので、久しぶりに、大好きな龍安寺の「石庭」が見られた。
数十年ぶりの龍安寺 石庭には、あらためて強く惹かれた。素晴らしいプレゼントをもらった。京都でも名所中の名所に、静かに落ち着いて触れられたのも混雑がなかったからだ。
旅行シーズンの鎌倉も、当然だが、かなり混雑する。鎌倉にはクルマで行くが、道路の混雑も避けられない。
しかし、12月初旬辺りなら、まったく渋滞に遭わずにすむ。スイスイで辿り着ける。若い時は少々の渋滞くらい気にもしなかったが、高齢になると堪える。
七里ヶ浜のホテルも「海が見えて、江ノ島まで見える部屋」が簡単にとれた。江ノ島の灯りが見える夜景はなかなかいいものだ。
夜の食事は、友人が、七里ヶ浜に面したピザの美味しい人気レストランに連れて行ってくれた。シーズン中なら大混雑だろうし、予約さえなかなかとれないだろう。
でも、12月初旬の席の埋まり方は30~40%といった感じで、辺り憚らず大声で会話するような客もいなかった。
食事の後には七里ヶ浜を散策したが、その日は風もなく、優しい波と波の音が迎えてくれた。なんとも言えない心地よさが全身を包み込んだ。
翌日、友人とはランチの時間に合流することになっていた。なので、朝食後には、海沿いの道を茅ヶ崎までドライブした。
若い頃、湘南の海は「定番の遊び場」で、ビーチで泳ぐのはもちろん、夜のドライブの目的地として、頻繁に通ってもいた。
特に「オートバイ時代」、、夜、六本木の溜まり場に集まり、食事をして、コーヒーを飲んで、おしゃべりをしている時、、なんとなく「ちょっと走ろうよ!」となり、江ノ島まで行って帰ることも多かった。
鎌倉から茅ヶ崎辺りの海岸通りを走ったのはすごく久しぶりのことだった。それだけによけい懐かしく、はるか昔の思い出が次々浮かび上がってきた。道路も空いていたし、素晴らしいドライブだった。
ホテルのレストランで友人と会いランチした後は、「静かな鎌倉の街」を見せてもらいながら、友人宅へと向かった。
「観光シーズンの鎌倉の街は大混雑で、とても出る気がしない」と、友人は嘆き節を語っていたが、そうだろう。
友人宅は近くに山が迫る静かな住宅地にあり、なんとも言えない心地よい午後を過ごさせてもらった。
真鶴に近い山の中?の広大な敷地に建つ友人宅は、ちょっと「浮世離れした⁉」といった形容が相応しいような「お屋敷」だ。
一般道からお屋敷に向かう私道は長く、「ここでラリーの練習ができるんじゃないの」とでも言いたくなる。
大きな山小屋風の佇まいをもつお屋敷の下方には、「いったい、何台くらい駐められるんだろう⁉」と思ってしまうほどの駐車場があり、それだけでもため息が出る。
お屋敷は広く、天井が高く、窓が大きい! そこにいるだけで、「日常のあれこれから心が解き放たれる」感じとでも言えばいいのだろうか。
僕にはオーディオ関係の知識はほとんどないが、部屋に置かれた機器が「素晴らしいもの‼」だということは否応なくわかるし、膨大なLPのコレクションにもため息が出た。
そんな真鶴の友人宅を訪ねたのは12月ではなく10月末だったが、クルマではなく、東海道線で行った。
沿線の観光シーズンは終わっており、予想通り東海道線は空いていた。
新幹線は頻繁に乗っているが、東海道線に乗ったのは超久しぶり。ゆっくり流れる窓外の景色に目を奪われた。
しかし、それよりなにより心惹かれたのは、古い佇まいがそのまま今に残る小さな町の駅の風情。
真鶴駅もよかったが、もっとも「いいな!」と思ったのは「根府川駅」。とくに帰路、暗くなり、乗り降りする乗客もほとんどいない根府川駅の風情は心に染みるものだった。
僕は思わず電車を降り、次の電車が来るまで根府川駅のホームに留まった。
20分くらいだっただろうか、、まったく無人状態の駅のホームで独り過ごした時間は、生涯忘れられない思い出を創ってくれた。これもオフシーズンならではの贈り物だろう。
もちろん、好みは人それぞれ違う。混雑していても、熱気と活気あるハイシーズンが好きという人が多いのも不思議はない。
加えて、「寒い時の旅なんて楽しめない」という人も少なくないだろう。
だから、お勧めしようなどとはまったく思っていない。でも、この記事が、上記したような「オフシーズンならではの景色や風情」にちょっとでも興味を抱くようなきっかけにでもなればうれしい。
以前にも書いたが、僕の旅はほとんどがオフシーズン。特に、ここ20~30年ほどの夏の旅といえば、「ザルツブルク音楽祭」くらいしかない。
歳を重ねてからの行く先はほとんどが冬のヨーロッパ。行先は、ウィーン、パリ、ロンドン、ミュンヘンの4つの都市のどこか、、が、ほぼ決まりごとのようになっていた。
そして、さらに歳を重ねてからの行く先は、「少ししか動かなくても楽しめる街」ウィーンにほぼ絞られた。
行くのは12月初旬、、クリスマスシーズンは11月下旬から始まるが、なんとなく「12月」の方がクリスマスらしいよね、、といった小さなこだわりがあって、そうしていた。
「クリスマスシーズンだったら混雑しているんじゃないの?」と思う方もいらっしゃるだろうが、それはない。
寒いこともあるだろうが、ヨーロッパのどこに行っても、クリスマスシーズンは旅行者が少なく、とくに団体のツアーなどはほとんどと言っていいほど見かけない。
街は賑わってはいるが、賑わいを作っているのは土地の方々がほとんど。屋台のホットワインを飲み、夫婦で、仲間で楽しんでいる。
同じ賑わいでも、多くの旅行者による賑わいと、地元の住民の賑わいとでは、醸し出される雰囲気は大きく異なる。
クリスマスシーズンのヨーロッパの街の電飾も、華やかで個性的で、、大いに旅人の気分を盛り上げ、楽しませてくれる。
ウィーンの12月の気温は0~5度といったところ。「イヤだー、そんな寒いの!」という人は多いが、「寒い季節が好きな家内と僕」にとっては「心地よい季節!」なのだ。
「暑いのはコントロールしようがないけど、寒いのは着るものを選べばいいだけのことだから楽だよねー!」と、、。
、、、そんなことで、わが家は「冬の旅が」「オフシーズンの旅が」好きなのだが、みなさまはいかがでしょうか!













