今年になって次々と行われたオープンモデルの国際試乗会。
どのモデルもスペシャリティカーである屋根開きモデルならではの個性豊かなイベントとなった。ということで、そのすべてに参加した九島氏がリポート。オープンカーの最新事情を一気に紹介する。
MERCEDES-BENZ [メルセデス・ベンツ]
熟成を極めたオープンメルセデス
このクルマのコンセプトはまさにオンリーワン!
そして、それは日本のみならずグローバルでも行われていて、特に国際試乗会は世界が舞台である分、選ぶ土地にセンスが出る。なぜそのモデルがその場所なのか。なかでも、オープンモデルといったスペシャリティカーは、特にセンスが発揮されるわけで、その意図を探るのもひとつの楽しみだ。
さて、このところコンパクトモデルや派生モデルに話題がいきがちなメルセデスの6世代目となるSLクラスの国際試乗会へ参加してきた。
行われたのは2月末のサンディエゴ。朝晩は寒くても日中は30度近く気温が上がる南カリフォルニア特有の気候だ。乾いた空気がなんとも清々しい。
クルマはマイチェンなのでデザイン変更と電子デバイスのアップデイトがメインだ。ダイナミックセレクトにスポーツプラスとインディビジュアルが追加され、Sクラスクーペで採用されたダイナミックカーブ機能がオプションで用意されることとなった。
南カリフォルニアの風を全身で浴びながらのオープンエアモータリングはなんとも贅沢なひと時であった。SLの屋根はご存知のようにメタルトップとなる。
バリオルーフと呼ばれる電動格納式ハードトップだ。それを採用しはじめたのは先代のR230型から。つまり、閉めれば2シータークーペにも早変わりする。その作業は僅か16秒で時速40㎞/hまで対応する。
このところSクラスクーペの登場もあって影の薄かったSLだが、やはりその実力は一級品。走りのパフォーマンスもラグジュアリーテイストもヌカリはない。
もっといえば、堅実さもそこにはある。伝統の“SL”はやはり王道メルセデスであった。トップを閉めればビジネス街に、開ければサンディエゴの海岸線にマッチするスタイリングになるのもまたさすがである。
〜訪れたのはココ〜
〜訪れたのはココ〜
試乗会はサンディエゴ湾に突き出た半島のホテルで実施。コロナドビーチを目の前にメキシカンテイストがいっぱいだ。
ROLLS-ROYCE [ロールス・ロイス]
風格、威厳、余裕、快適性すべてが最高峰
キャビンが静かなのは当然、屋根用モーターまでもが静か
ドーンは“夜明け”のことで、ものごとの始まりも意味する。NASAの無人惑星探査機にも使われたワードだ。ただここで疑問も湧く。ファントムのオープンモデルがファントムドロップヘッドなら、こちらはゴースト(もしくはレイス)ドロップヘッドでもいいはずではないかと。
そこでブランドのトップに質問すると、「このクルマはレイスからもかなり手が加えられています。構造上もそうですが、ボディの80%は別モノ。つまり明らかな新型車。なので、異なる名前をつけました」と。
そんなドーンを試乗したのは、なんと南アフリカのケープタウン。南半球である。3月初旬ということで、ファントムで送迎してくれた地元ドライバーに話を聞くと、「もう秋ですね。朝晩は涼しくなってきましたよ」と答えてくれた。ただ、日中は、暑い……。
もちろん、閉めた状態のキャビンもそうなのだが、稼働しているモーター音がほとんど聞こえない。音にこだわるロールス・ロイスらしく、稼働中のモーター音まで消し去ってしまったようだ。で、閉めるとソフトトップがキャビンを覆うのだが、その角度がシャープなのも見逃せない。
リヤシートの居住性を妨げずシュッとしたシルエットを確保した。そしてどこかクラシカルな雰囲気をもつのも彼らならでは。英国車的テイストがにじみ出る。
試乗コースはテーブルマウンテンを眺めるワインディングと大西洋に臨む海岸線が用意された。ドーンからの眺めはまさに高級リゾートエリアといった印象。走りはもちろん“必要にして十分”。多くを語るまでもない。そんなのは野暮な話。正確なハンドリングと軽快なフットワークにただただ驚かされるだけであった……。
〜訪れたのはココ〜
〜訪れたのはココ〜
試乗起点となったのはケープタウンの街から東へ行った山の中の高級リゾート。ワイナリーを有する自然の宝庫だ。
※本誌2016年6月号掲載企画抜粋