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2025.06.08

子供を守り、事故に巻き込まれない、本当の安全運転とは何か?

チャイルドシートの義務化が先進国の中で最も遅かった日本。ようやく着用率が70%を超えても、不測の事故は常に起こるもの。では安全のためにはどんな運転を心がければよいのか? 筆者は交通規則をただ守ればよいわけではないと言います。

BY :

文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト)
CREDIT :

イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第259回

子供を交通事故から守るためには!

イラスト 溝呂木 陽 子供を交通事故から守るためには
チャイルドシートが日本で義務化されたのは2000年。先進諸外国と比べるともっとも遅い。ちなみに、もっとも早かったオーストラリアでの義務化は、確か、1970年代後半。

その他の先進国も、だいたい1980~90年代までには義務化されている。つまり、日本での義務化は、先進国の中ではもっとも遅かったことになる。情けない話だ。

大人用ベルトは1992年から一般道路での義務化(前席のみ。後席は2008年から)が始まり、事故での死傷者数は大幅に減った。
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ところが、乗車中の子供の死傷者数だけは、1990年代後半になって急増した。そこで役所の重い腰はようやく上がり、2000年のチャイルドシート義務化に結び付いたのだ。

しかし、それでバンザイとはいかなかった。

義務化以前のチャイルドシート使用率は10%にも充たなかったが、義務化された2000年でも40%でしかなく、まずまずと言える70%に達するまでほぼ20年かかった。

その理由は、警察や保健所などによる、幼児向け交通安全指導などが積極的に行われなかったことも挙げられるだろう。、、が、僕としては、「親の安全意識の低さ」を、いちばんの理由に挙げたい。

親は当然子供が大切だ。事故で危険な目に遭わせることを意に介さない親などいない。

だから、子供を乗せている時は、きっといつもより慎重に運転してはいるのだろう。

でも、事故は自損事故だけではない。危険な運転をするクルマが、突然、予期しない時に、予期しない形で襲いかかって来る。
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飲酒、居眠り、錯覚、勘違い、無謀運転、、まともならあり得ない理由で引き起こされる事故は少なくない。いや、むしろ、多いと言った方が当たっているだろう。

自分がいくら安全運転に徹していても、「向こうから突然襲いかかってくる」、不幸な、防ぎようのない事故が少なくないことは、肝に銘じておくべきだ。

悲しいし、悔しいし、腹は立つけれど、それは現実として、受け入れざるを得ない。

それだけに、予期せぬ事故が起きた時、巻き込まれた時、その被害を最小限に抑え、わが子を守る自衛手段を、常に考え実行することが必要だ。

自衛手段のいちばんの基本のひとつが「チャイルドシート」だが、ここで知っておいてほしいのは、「使い方」次第で、安全性には大きく差がつくということである。

まずはチャイルドシートの種類だが、寝かせるタイプの乳児用(目安として、体重10kg未満、身長70cm以下)、幼児用(体重9~18kg、身長65~100cm以下)、学童用(身長150cm以下、4~12歳くらい)の3種がある。
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なお、身長150cmとは、あくまで目安であって、150cmを越えても、シートベルトが子供の首やお腹にかかってしまうようなら危険であることを知っておいてほしい。

ここは、クルマによって、あるいはシート形状等によって結果は大きく変わるので、しっかりチェックしなければならない重要なポイントである。

つまり、チャイルドシートは、「取り付ければそれでよし」というわけではない。ゆえに、選択する時は、メーカーからでている「車種別適合表」などをしっかりチェックしたうえで選んでほしい。

加えて、正しい取り付けをしないと、安全性は大きく損なわれてしまう。なので、専門家の意見を聞いたり、手を借りたりしながらの慎重な取付が必要だ。

ちなみにJAFの調査によると、チャイルドシートの使用と不使用での子どもの死亡重傷率は、「乳児で約4,2倍、幼児で約5倍」というデータが出ている。
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小さな子供を持つ親には、この数字を真剣に考え、チャイルドシートを正しく使う事を「親の責任」として捉え、実行してほしい。

親(運転者)が1人の場合、子供の顔が見えるよう、「チャイルドシートを助手席に後ろ向きに取り付けている」ケースをよく見かけるが、これも危険だ。とくに助手席エアバッグ付車は危険なので止めよう。

赤ちゃんを後席でひとりにすると、寂しがって泣き出すものだ。でも、可哀相でも、少し我慢して慣らすようにすれば泣かなくなる。これは僕の経験でもはっきり断言できる。

稀だが、子供を抱いてハンドル握るシーンを見る事がある。これは、当たり前だが、絶対にしてはいけないこと。「あいつ、子供をエアバッグ代わりにしている」と言われても仕方がない。

事故が起きたら、腕で突っ張って子供を守るつもりなのだろうが、衝突時の衝撃は、腕で突っ張れるような生易しいものではない。
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いくら子供が可愛くても、いくら自分が安全運転をしているつもりでも、これは絶対にやってはいけないことだ。

子供を乗せているときは、普段より緊張するのは親として当然だ。だが、あまり緊張が高まり過ぎると、かえって運転はぎこちなくなり、周囲のクルマとの調和した走りが乱されるようなことになりかねない。

チャイルドシートを正しくしっかり使えば、そんな緊張感も和らげられ、リラックスした運転にも繋がるし、それは結果的に安全運転にも繋がる。

ところで、安全運転といえば「ゆっくり走ること」と考えている方もいらっしゃるようだが、周りにクルマがなく、単独で走っているのならそういうことになる。

だが、よほど人里離れているようなところでもなければ、そんなケースはまずない。とくに都会では、深夜か明け方でもない限り、クルマの流れは途絶えない。

多くのクルマが流れる道路で安全に走るいちばんのポイントは、「流れに乗って走る」ことが基本だ。
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流れの速度が制限速度を超えているようなことも多いが、そんな時でも、制限速度を守ることより流れの速度に合わせて走る事を優先すべきだし、それが安全性を高め、子どもを守ることにも繋がる。

「制限速度が40km/hだから、私は40km/hで走る。私は正しい」と頑なに思っているようなドライバーもいる。だが、その後ろには長いクルマの列ができ、多くのドライバーをイライラさせ、事故の危険を高めている。

とくに高速道路の追越車線上でこれをやるのは「危険な行為」と断言してもいいだろう。

追越車線は「追い越すクルマが走る車線」であり、そうでないクルマは走行車線を走るのがルール。にも関わらず、「私は、100km/hの制限速度で走っているのだから走行車線に戻る必要はない」と思っているのだ。

高速道路の追越車線でこれをやると後続車のイライラは危険なゾーンにまで高まり、結果、「煽り運転」や追い越し様の「幅寄せ」等を引き起こさせることにもなってしまう。
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「子供を乗せているからゆっくり走る」のはいい。親の気持ちとしても当然だ。でも、それでも、あくまでクルマの流れ全体に調和した、流れを乱さない走りを心がけてほしい。

加速、減速、ハンドル操作、ブレーキ操作も滑らかに行うこと。いつ発進したか、いつ停止したか、いつコーナーを曲ったか、、子供を乗せている時はもちろん、同乗者が常にリラックスし、身体から力を抜いていられる運転を心がけたい。

こうした運転は子供も大人も寛ぎ安心できるし、ドライバーも疲れない。運転視野も広がり、結果的に注意力を高めることにもなる。

子どもが小さい時は、ドアも自分で開けさせず、親が周りに注意深く気を配りながら乗り降りさせる。こうしたことを小さい頃から親にやられていると、大人になっても、自然に安全に気配りするようになる。

横断歩道で歩行者信号が青でも、自分の目で安全確認をする、歩きながらのスマホの使用はダメ、自転車に乗る時はしっかりルールを守る、、、こうしたことも、交通の危険から子どもを守るための必須項目だ。
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交通安全については、もちろん、警察や学校にも力をそそいでほしい。だが、まずは、親が家族が、日々の生活の中で身をもって範を示し、導いていってあげてほしい。
岡崎宏司(自動車ジャーナリスト)
1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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