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2022.10.30

フォルクスワーゲンT-Rocとダットサン トラックに抱いた共通点とは

VWのコンパクトクロスオーバーSUV、T-Rocは見てカッコ良く乗って楽しいクルマだと筆者。その佇まいは片岡義男の世界に通じ、若い頃ダットサン トラックと過ごしたカリフォルニアの砂漠と星空を、思い出させてくれたという。T-Rocから広がる妄想の旅は続く。

CREDIT :

文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第196回

VW T-Roc、、妄想の旅!

VW T-Roc イラスト
VW T-Rocは「カッコいい!」。なかでも、もっともカッコいいのは鮮やかなブルー(ラヴェンナブルーメタリック)のボディとホワイトのルーフを纏った「Style」。

タフな「R-Line」もいいが、僕の目にはStyleの方が粋に映る。

ブルーとホワイトのStyleを見ていると、僕の頭には、片岡義雄と鈴木英人の世界が浮かび上がってくる。

今の若い世代に、片岡義男と鈴木英人がどう映っているかはわからない。でも、僕にとっては憧れの存在だった。

片岡義男の小説に出てくる主人公と同じようなことをやってみたい、、、いつも、そんな妄想を描いていた。

鈴木英人のイラストを見ると、すぐ、カリフォルニアに、ハワイに(とくにノースエリアに)行きたくなった。

若い頃、僕はよく、独りでカリフォルニアやネバダのデザートエリアに行った。ダットサン トラックのロングバージョン(荷台が長いモデル)をレンタルして、、。

ダットサン トラックに積む荷物は、途中のスーパーで買う簡単な飲み物と食料とスリーピングバッグ。
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そして、デザートエリアに行き、夕焼けと星空と朝焼けを見る。ダットサン トラックの荷台の上で、、。スリーピングバッグに包まれて独り見上げる星空の美しさは格別だ。

それも、周りに人気のない、深閑としたところを選ぶ。こんなことを話すと、たいていは「危険じゃないの?」と心配される。でも、僕は危険を感じたこともないし、危険に遭ったこともない。

デザートエリアでキャンプする人は少なくない。しかし、トラックの荷台とスリーピングバッグだけが相棒、、といったケースには出会ったことがない。

こんなシーンは、僕の知る限り、片岡義男の世界にも、鈴木英人の世界にも出てこない。僕のオリジナルかな、、などと思っている。、、でも、表面的な見てくれが違うだけで、精神的には大いに通じるものがあるとも思っている。

ダットサン トラックとVW T-Roc、、この両車も、表面的にはまるで違う世界に棲むように見える。、、が、僕の感覚では相通じるものがある。それもかなり強く、、。

すでに話したが、ブルーとホワイトのT-Roc Styleを前にした時、僕は直感的に片岡義男と鈴木英人の世界を重ねていた。そして、ダットサン トラックと過ごしたカリフォルニアの砂漠を、星空を、思い出した。

片や1960年代の日本製小型トラック。片や最新のドイツ製クロスオーバーSUV。すべてが違う。まるで違う。でも、この2台を重ねることに、まったく違和感はない。

「荷台でスリーピングバッグに包まれて」とはいかないが、小さなテントでも持っていけばいい。物理的に同じことはできないが、精神的に同じことはできる、、僕はそんな感覚をT-Rocに抱いた。
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T-Rocは海も似合う。今回の試乗は湘南の茅ヶ崎を起点にしたが、湘南海岸を走るのはすごく「いい感じ!」だった。ピッタリだと思った。
 
そこで、また妄想が膨らんだ。頭の中を巡る妄想の舞台は、オアフのノースショアに。

なんとなく夕暮れに近い、ひと気のないビーチとT-Rocの相性って、すごくいいかもしれない、、、と。そこにサーファーのイメージが重なり、片岡義男の世界が浮かんでくる。

蒼い海と空と高い波、白い砂浜とボードを抱えたサーファー、そしてパームツリー、、、となると、鈴木英人の世界も重なってくる。

ただ、その辺りで、妄想にストップがかかる。というのも、ピカピカのT-Rocじゃダメだよね、、となるからだ。

ノースの人気のないビーチと屈強なサーファー、、このコンビネーションに色鮮やかでピカピカのクルマは馴染まない。潮風とともに生きてきた証となるような色褪せたボディ、、が、どうしてもほしくなる。

で、色褪せたブルーと白のT-Rocをイメージして重ねると、、ピタリ、シンクロする。

湘南海岸を走りながら、妄想はどんどん膨らんでいった。ほんとうに楽しい時間を過ごさせてもらった。

T-Rocのイメージキャラクターには平野歩夢が選ばれている。これもピッタリだ。

僕はスノボードもスケードボードも未体験。でも、彼が見せてくれた新しい世界にワクワクしたし、彼の勝利にワクワクした。

勝った選手も負けた選手も、共に競技を楽しみ、和気藹々と互いを称え合う、、見るものすべてをハッピーにする、、スノボ/スケボーの世界観は素晴らしいと思う。
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そんな世界のスーパースター、平野歩夢に四角ばった高級車は似合わない。だが、VW T-Rocならスンナリ馴染む。あつらえもののように、、。

スケートボードを持ち、T-Rocの前に立つ平野歩夢は、ほんと、カッコいい! 僕が若かったら、きっと真似しようとするだろう。

僕が若い頃、ジェームス ディーンとポルシェ 550 スパイダーに憧れた感覚と、なんとなくオーバーラップするものがある。

T-Rocは、むろん街にも似合う。大都会の狭間でも若々しく艶やかな存在感を発揮する。

硬質な輝きを放つボディに映り込む高層ビル群の姿、、そんな絵もきっと似合うだろう。

僕がT-Roc(ブルーと白の2トーン)を買ったら、たぶん、ブルージーンズと真っ白なシャツを多用することになると思う。それに、パタゴニアのジャケットやベストを重ねるといいかもしれない。

今回はマイナーチェンジだが、外観の印象はかなり変わった。端正さはそのままに、よりインパクトのある佇まいに変わっている。

内外装の質感がグンと上がり、外から眺めても、キャビンに入っても、魅力度は大きく押し上げられている。

新たに強力な「R」が加わったのもトピックだ。300ps/400Nm+7速DSG+4MOTIONがもたらす走りはハンパではない。

加えて、他モデルとの内外装の差別化もしっかりできている。一見して「立派に見える」し、「速そう!」だし「強そう!」。後ろにつかれたら、道を譲りたくなる迫力もある。
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「R」の走りは、強力なだけではなく、洗練もされている。あまり追い込める機会はなかったが、どんな走りにも「レスポンス良く素直に、そしてしっかりしなやかに」追いてきてくれる、、、そんな印象だった。

でも、僕がいちばん気に入ったのは「R」ではない。「TDI Style 」だ。ボディカラーは上記のとおり、「鮮やかなブルーとホワイトの2トーン」が断然いい。

スポーティでもあるし、都会的でもあるし、、加えて気張った感がないのも心地よい。素直に「カッコいい!」と思える。

TDIは2ℓ4気筒のターボディーゼルで150ps/340Nmを発揮する。とくに突出したものはないが、7速DSGとのマッチングも良く、軽快に気持ちよく走る。

タッチのいいパドルで7速DSGを操りながらのドライビングは楽しい。音や振動にしてもディーゼル感を突きつけられることはほとんどない。

ワインディングロードも少し走ってみたが、ちょっとヤンチャなドライビングにも気持ちよく追いてきてくれた。なかなか楽しかったし、18.6km/lの燃費(WLTCモード)も嬉しい。

色褪せたT-Rocとノースショア、そしてサーファーを重ねた妄想にも、ガソリンよりディーゼルの方が馴染む。

VW T-Rocは大いに楽しませてくれた。湘南の海岸通りも、大磯の裏手の山道も、、楽しく走らせてくれたし、妄想の世界をも楽しく駆け巡らせてくれた。

VW T-Rocと過ごした時間は、「ほんとうに楽しい時間だった!」とご報告しておこう。

● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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