2017.07.31

太宰治、赤塚不二夫、酒好きの作家たちが愛した酒のアテ

赤塚不二夫、小津安二郎、太宰治、山田風太郎、田村隆一ら酒飲みたちが愛した酒のアテは何だったのか。

フォークナー、フィッツジェラルド、ヘミングウェイ、オニールといったアメリカを代表する作家たち。そんな彼らがアルコール中毒に痛めつけられながら、傑作を書いていたことを如実に示した本がトム・ダーディスの『詩神は渇く―アルコールとアメリカ文学』(トパーズプレス)だ。
アメリカのノーベル文学賞受賞作家7人のうち5人はアル中で、作家の苦悩に酒が切っても切り離せない存在であることが、読めばよくわかってしまうのだ。

日本でもアル中とまではいかないが(いやそういう作家もいるが)、酒を愛した作家は数多い。
そこで今回は小説家・太宰治だけではなく、大衆小説家・山田風太郎、詩人・田村隆一、映画監督・小津安二郎に漫画家・赤塚不二夫も入れて、彼らが愛した「酒」について考察してみよう。
酒の美味しさを知り尽くした彼らが、そんな酒のアテに好んだものは何だったのか。今晩のつまみに悩んだら、酒飲みの先輩たちに“真似ぶ”のもいいかもしれない。
文/草彅洋平(東京ピストル)

赤塚不二夫とキャベツ

赤塚不二夫 タモリ
写真:Kodansha/アフロ
漫画家の赤塚不二夫の好物は西新宿の老舗台湾料理店「山珍居」の煙腸(腸詰)や、納豆、イカの刺身などのさっぱりした食べ物だということは知っていた。
だが赤塚を中心に新宿の「ひとみ寿司」で開かれていた伝説の宴会「赤塚会」について、映画監督の山本晋也が「冷やしキャベツをつまみに毎週のように宴会をしてた」とインタビューで話しているのを読んで、俄然冷やしキャベツに興味を抱いてしまった(週刊ポスト2016年12月16日号「タモリ、所ジョージらが集った伝説の宴会「赤塚会」とは」)。
「寿司屋で寿司を食わないのは、先生一流のシャレだったんだろうね。参加者はここで宴会芸を披露しては、芸を磨いていた」
当時タモリにたこ八郎といった豪華なメンバーが参加していた赤塚会。そのおつまみが寿司屋での冷やしキャベツというのが非常に赤塚らしい話だ。
そんな話を念頭に、赤塚の関係者たちのインタビュー集『破壊するのだ! ! ──赤塚不二夫の「バカ」に 学ぶ』(ele-king books)を読み返してみたら、それが「キャベツの千切りに味噌と胡椒を付けて食べながら」とあった。こう読んでみると、普通のキャベツがなんだか美味そうに思えて来るから不思議なものである。

小津安二郎とおでん

小津安二郎 酒
写真:毎日新聞社/アフロ
小津の映画には時代もあっただろうが、おでん屋が頻繁に登場してくる。「東京物語」「早春」「お早う」「東京暮色」など、作品でおでん屋の占める割合は大きい。おでん屋は下町のうらぶれた町の空気を出すに、おそらく焼き鳥屋や蕎麦屋よりもぴったりだったのだろう。おでん屋の女将役に「ちょっと小粋な中年増」(と脚本に書かれている)の女優を当て、小津の人生哲学を喋らせたのだ。
「古くったってね、人間にかわりはないよ。おんなじだよ」(「早春」より)
銀座にある「お多幸」はそんな小津の愛したおでん屋の一つ。その頃はんぺん、すじ、信田巻は日本橋「神茂」製を使用していたそうで、小津は神茂の練りものが好きだった。小津は手帳に「▲神茂-日本橋室町一ノ一四」とわざわざ書き残している。
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