2017.06.15

雨の日はあえてのドライブデートで“雨を感じる”美術館へ

文/井上真規子


「雨を感じられる人間もいるし、ただ濡れるだけの奴もいる」※

そういったのはレゲエの神様、ボブ・マーリー。雨を“感じられる”ようなシャープなセンスがあればこそ、物事の本質を見極め、人生を楽しく豊かなものにできるということでしょうか。この含蓄に富んだ言葉を字句通りに解釈するならば、こんな梅雨の時こそ人としてのセンスが問われるというものです。

彼女とふたりで雨を“感じる”関係でいられるなら、これほど素敵なことはありません。そこでオススメなのが郊外の美術館です。

美術館は都心にもたくさんありますが、ただ雨をよけるのではなく雨を“感じに行く”ところが、このデートのキモ。あえてのドライブで郊外へと足を延ばし、アートを鑑賞しつつ、その恵まれた大自然の中、雨を全身で感じて頂きたいのです。

ご紹介するのは、いずれも緑多き素晴らしい庭園をもつ個性的な美術館。鮮やかさを増した新緑に囲まれ、雨が木々を打つその音に耳を澄ませ、しっとりと芳しい森の香りを楽しむことで、ふたりの時間は必ずや特別のものになるでしょう。

※「CATCH THE FREEDOM」(A-WORKS刊)より

染色家・久保田一竹が生んだ自然とアートが共存する庭園

【久保田一竹美術館】(河口湖)

インドの城門を移築した美術館の入り口

最初にご紹介するのは山梨県河口湖のすぐ側にある「久保田一竹(いっちく)美術館」。富士山のすそ野の河口湖は日帰りドライブで行くにもちょうど良い距離ですよね。

久保田一竹は、フランス芸術文化勲章シェヴァリエ章を受賞した著名な染色家で、美術館には彼の作品が所蔵されています。こちらは、なんと2009年度版ミシュランの観光ガイドで3つ星を獲得している観光名所でもあるのです。

訪れてまず驚くのが、久保田一竹本人がインド王城から持ち帰って移築したというエキゾチックな城門。周囲には豊かな緑が生い茂り、雨の日には庭園全体がたっぷりと湿度を含んで、まるで異国の遺跡に訪れたような気分を味わわせてくれます。

美術館の建物も、樹齢千年を越す16本のヒバを大黒柱にしたピラミッド型の展示室本館やサンゴの沖縄漆喰でできた新館など、一竹の美的感覚が存分に表現されたものばかり。本館の展示室には、久保田氏の染色作品である美しい彩どりの着物が並び、訪れる人を魅了しています。

まるで中東の遺跡を訪れたかのような新館ギャラリー

そして富士山を望むことのできる広大な庭園には、一竹の独特の美意識と感性が炸裂したユニークな空間が広がっています。造園のために持ち込まれた琉球石灰岩や富士の溶岩に見事な滝が流れ落ち、散策路の祠にはインド仏師によって掘られた「慈母像窟」が鎮座しています。

雨が降ると、庭園全体に植栽された木々や高山植物が生き生きと蘇り、生命力に満ちた姿に。同時に庭全体が雨のベールに包まれて、とっても神秘的な世界へと変貌します。こんなアートな庭園で感じる雨は、ふたりの感性を最高に研ぎ澄ませてくれそう。美術館の展示や庭を見て回るだけで、軽く2〜3時間は楽しめるこちら。周囲には富士河口温泉郷もあるのでぜひお立ち寄りを。彼女とリラックスした1日をご堪能くださいませ❤

本館に展示されている久保田一竹の作品

■久保田一竹美術館
住所/山梨県南都留郡富士河口湖河口2255
開館時間/
4月から11月9:30〜17:30(入館は17:00まで)
12月から3月10:00〜16:30(入館は16:00まで)
休館日/毎週火曜、12月26〜28日 ※10月、11月は無休
URL/www.itchiku-museum.com/
お問い合わせ/☎︎0555-76-8811

●9月25日まで「富士山展」を開催中

広大な敷地をもつ庭園。雨を感じる前には足湯を楽しんで

【岡田美術館】(箱根)

お次は箱根の小涌谷にある「岡田美術館」。日本・中国・韓国を中心とする東洋の美術品を常時約450点展示する美術館で、年間を通してさまざまな展覧会を開催しています。訪れると初めに出迎えてくれるのは、俵屋宗達の代表作で知られる「風神雷神図展風」を元に、日本画家・福井江太郎が現代に甦らせた大壁画「風・刻(かぜ・とき)」。

この迫力満点の大壁画の前にはなんと100%源泉かけ流しの足湯カフェが用意されており、到着早々に温かい温泉に足を浸けてコーヒーを飲みながら、迫力の大壁画を鑑賞することができるのです。

縦12m、横30mにも及ぶ大壁画を観賞できる足湯カフェ

これだけでも彼女の笑顔は必至だと思いますが、その周囲に広がる庭園はなんと1万5000㎡にも及ぶというから驚き。豊かな自然の美しさはそのままに、手入れの行き届いた広大な敷地には滝や池が配置され、森林浴を存分に堪能することができるようになっています。

雨の日には広大な庭園全体が静寂を取り戻し、木々や草花たちはより麗しく風情を増した姿に。庭園をゆっくりと散策して雨を十分に感じたら、昭和初期の日本家屋を改装した飲食施設「開化亭」で休憩しながら、神秘的な庭園を眺めれば、最高にロマンチックな気分に浸れるはずです。

庭園の入口近くにある飲食施設「開化亭」

帰り際には、岡田美術館の名物ともいえるミュージアムショップにもお立ち寄りいただきたく。美術作品にちなんだ完成度の高いオリジナルグッズが販売され、訪れる人を楽しませてくれます。美術品観賞だけにとどまらない、いくつもの楽しみを備えた岡田美術館。雨の日にこそ訪れて欲しいデートスポットです。

■岡田美術館
住所/神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-1
開館時間/9:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日/会期中無休(12月31日・1月1日休館)※展示替による臨時休館あり
URL/www.okada-museum.com/
問い合わせ/☎︎0460-87-3931

●7月21日まで、特別展「魅惑のガラス ガレ、ドーム展 ―東洋の美に憧れて―」が開催中

端正に手入れされた四季の草花が迎えてくれる美しい日本庭園

【山口蓬春記念館】(葉山)

3つめの美術館は、新日本画の世界を築いた日本画家・山口蓬春(ほうしゅん)の記念館。山口蓬春が戦後の住まいとした葉山の邸宅と、近代数寄屋造りの名匠・吉田五十八が設計した画室を記念館に改築して現在の姿になりました。記念館は木造2階建て家屋を主とした展示室と蓬春が創作活動を行った画室、そして約1000坪にも及ぶ広大な敷地と蓬春夫妻が慈しんで育てた庭園からなります。

庭園を一望できる記念館の画室

蓬春は生前から自身の絵のモチーフにするため、京都から造園師を呼び寄せるなどして、庭園のいたるところにたくさんの草花や木々を植栽。邸宅の作庭に力を注いでいました。蓬春が創作活動を行っていた画室からは美しい庭園を眺めることができ、圧巻です。

現在でも、初春の梅や春の桜、秋の紅葉など四季折々の美しい色模様を見せてくれますが、梅雨の季節には紫陽花をはじめとしてクチナシや皐月ツツジなどが一面に咲き誇ります。雨に濡れそぼつ花々の優しい色合いはふたりの心にしっとりと染み込んで、特別な思い出をつくってくれることでしょう。

美しい庭園で、ふたりきりのロマンチックな時間をお過ごしくださいませ。

■山口蓬春記念館
住所/神奈川県三浦郡葉山町一色2320
開館時間/10:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日/毎週月曜
URL/www.hoshun.jp/
お問い合わせ/☎︎046-875-6094

●9月24日までは、「夏季企画展 山口蓬春の日本画と写生―創花・その煌めきを描くこころ―」を開催中。

※専用駐車場はございませんので、周辺の駐車場をご利用ください。

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