2017.03.15

開きたくなるドアとは──

※本特集は2017年2月号で掲載した企画の抜粋です。

クルマとのファースト・コンタクト――それは、視覚的な面を別にすれば
最初に手を触れる「ドアハンドル」。それだけに各自動車メーカーは
実はドアハンドルを念入りにデザインしているのだが
歴史的な変遷を振り返ると、地域や時代に応じた多種多様なトレンドが!

写真/森 浩輔 文/大谷達也

実はクルマの安全性とも密接につながっていた!

もともと細身のグリップタイプが主流だったドアハンドルに、フラップ式が台頭しはじめたのは1960年代から70年代にかけてのこと。フラップ式とは板状ドアハンドルの上部にヒンジがあって、これを手前に引き上げるとドアが開くタイプ。グリップタイプと違ってボディから無骨に飛び出していないことから当時、フラップ式は“スタイリッシュなドアハンドル・デザイン”として好評を博し、アメリカや日本でまたたく間に広がっていった。また、ボディの面作りがフラットになるため空気抵抗を抑えるうえでも有利と考えられていたようだ。

細部に息づくドアへのこだわり

ドアのオープニングは後ろにいくに従って微妙に上昇させることで軽快感を演出するとともに、真横から見た時に女性のひざ下が美しく見えるよう計算された。ディテールへのこだわりにもヌカリない。

日本では70年代から80年代にかけてこのフラップ式が大流行。上に持ち上げるタイプだけでなくヒンジの回転軸を垂直に設けて横に開く進化形も登場したが、いまやほとんど見かけなくなった。なぜだろう? その理由は「フラップ式は安全ではない」との認識が広まってしまったからだ。

意外かもしれないが、ドアハンドルはクルマの安全性に大きく関わるパーツでもある。というのも万一クラッシュしてボディが変形した場合、ドアを開くには通常とはケタ違いに大きな力が必要となるが、フラップ式ではドアに大きな力をかけることが難しく、このため救助作業が困難になると考えられたのだ。この点、グリップタイプであれば手で引くだけでなく工具を使うこともできるので、より迅速にドアを開き乗員を救助できる可能性が高い。つまり、安全性でいえばグリップタイプが優位なのだ。

MERCEDES-BENZ GLC 250 4MATIC [メルセデス・ベンツ GLC 250 4マチック]

使い勝手の良さが光る魅力の最新SUV

Cクラスをベースに誕生したメルセデスSUVの最新作がGLC。余裕あるロードクリアランスと4WDシステムで本格的なオフロード走行が可能なほか最新の2.0ℓ直噴ターボ+9速ATの効率のいい走りも楽しめる。

全長×全幅×全高:4660×1890×1645㎜ ホイールベース:2875㎜ 車重:1800㎏ エンジン:直4 2.0ℓ ターボ 最高出力:211㎰ 最大トルク:350Nm 価格:628万円(税込)/メルセデス(メルセデス・コール)

メルセデス・ベンツは古くからグリップタイプの安全性を認めていた自動車メーカーのひとつ。同社はことさら頑丈そうなドアハンドルを採用しているが、これはクルマの安全性を視覚的に訴える効果があるほか、エッジを丸めた優しいデザインゆえに女性のネイルを傷つけないともいわれる。安全性が優しさにも結びつくことを示すクルマの、典型的な例といえるだろう。

強さと優しさを兼ね備えたドアハンドル

メルセデス伝統のグリップ式ドアハンドル。堅牢な作りで万一の事故の際も安心なほかネイルをした女性の手にも優しい丸みを帯びたデザインが特徴だ。

ドア内側に設けられたシート調整スイッチ
シートの形状をそのまま模したシート調整スイッチをドアの内張に設けるのもメルセデスの伝統。見やすくまた直観的な操作が可能という特徴をもつ。


ところで、いくらグリップタイプが安全性で有利とわかっていても、ドアハンドルがボディパネルから無骨に突き出しているのはスタイリッシュとはいえない。何とかしてスタイリングと安全性を両立したドアハンドルを作れないだろうか──? デザイナーたちのそんな欲張りな要望から誕生したのが現在、ラグジュアリー・スポーツカーメーカーの間でもてはやされているリトラクタブル式である。

Aston Martin RapidE S [アストンマーティン ラピードS]

クーペの美しさをもつ4ドア・モデル

スタイリングやパフォーマンスはほかのアストンマーティンと同等のレベルにありながら、4枚のドアとフル4シーターのスペースを備えた稀少なモデルがラピードS。“S”にモデルチェンジして格段に洗練された。

全長×全幅×全高:5019×2140×1360㎜ ホイールベース:2989㎜ 車重:1990㎏ エンジン:V12 6.0ℓ

最高出力:560㎰ 最大トルク:620Nm 価格:2503万4983円(税込)/アストンマーティン(アストンマーティン・ジャパン)

リトラクタブル式は、バータイプのドアハンドルが通常、ドア内に格納されてフラッシュサーフェイス化を実現しているものの、リモコンを操作したりドアハンドル周辺のボタンを押すなどするとレバーが起き上がりドアを開けられる方式。肝心の安全性については、しっかり握れるバーが飛び出してくるので、フラップ式に比べれば確実に力を込められるほか、車種によってはヒンジ部分に火薬が内蔵されていて、事故が起きたと判断される場合にはこの火薬でヒンジを破壊し、容易にドアを開閉できるようにしたものもある。

コンセプトは"握手で迎える"

リトラクタブル式のドアハンドルは微妙な曲線を描いていて手にぴったりとフィットする形状。まるで人と握手しているかのような感覚が味わえる。

いっぽう、この考えをさらに推し進めてドアハンドルというものを廃止したモデルもあった。古くは1994年発表のTVRサーブラウ、新しいところではマクラーレンの各モデルがそうで、小さな電気スイッチを押すとロックが解除され、例えばマクラーレンであればそのままドアを引き上げて車内に乗り込む形式となっている。

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