2026.07.31
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■ LEON統括編集長・石井 洋とウォッチディレクター・篠田哲生が語り尽くす!
「ブレゲ」のトゥールビヨンをいま買うべき理由を、時計のプロがホンネ対談
ゼンマイオヤジの憧れの機構である「トゥールビヨン」は、1801年に天才時計師アブラアン-ルイ・ブレゲが特許を取得したもので、誕生225周年を迎えます。その節目に合わせて、「ブレゲ」は現代的に進化を遂げた4モデルを新たに発表。トゥールビヨンのパイオニアであり、リーディングブランドであるブレゲの魅力について語り合います。
BY :
- 文/篠田哲生
- CREDIT :
写真/人物・田中 駿伍(MAETTICO)
LEON統括編集長・石井 洋とウォッチディレクター・篠田哲生が語り尽くす!

▲ 左から、ウォッチディレクター・篠田哲生さん、LEON統括編集長・石井 洋。
一方向に重力がかかり続けることで生じる誤差(姿勢差)を解消するために、調速機と脱進機という精度に関わる重要パーツをキャリッジ(かご)に収め、グルグルと回転させるというトゥールビヨン機構は、アブラアン-ルイ・ブレゲが考案したもの。
現代のブレゲは、この機構をさらに魅力的に進化させ、ゼンマイオヤジを魅了し続けます。誕生225周年を迎える今年、精度や美的表現をさらにレベルアップした4モデルが新登場しました。
トゥールビヨンは機械式時計の究極です
篠田哲生(以下、篠田) 複雑機構の代表格であるトゥールビヨンが、ついに誕生225周年を迎えました。時計好きなら誰もが憧れる機構ですが、こうやって時代を重ねるまでには、紆余曲折があったのです。というのも、初代ブレゲが1801年にこの機構の特許を取得して以降、実はそれほど作られていない。ブレゲですら40個程度といわれています。それくらい製造が難しかったのです。
石井 洋(以下、石井) まあ、それは当然だよね。コンピューターも工作機械もない時代なんだから。逆に何で今は、これほどメジャーになったの?
▲ 1801年6月26日にアブラアン-ルイ・ブレゲがトゥールビヨン機構の特許を取得した。コンピューターや計算機もない時代に、これだけ精密な機構を考案し、開発したというのは驚くべきこと。
▲ アブラアン-ルイ・ブレゲが1808年に製作した懐中時計『No.1188』。スモールセコンドやパワーリザーブに加えて、トゥールビヨンを搭載していた。この時計はスペイン王家のボルボン王子に販売されたそう。
▲ 懐中時計『No.1188』のケースバックを開けると、ムーブメントが現れる。左右対称の機構の中央に、大型のテンプのトゥールビヨンが設置されている。

▲ 1801年6月26日にアブラアン-ルイ・ブレゲがトゥールビヨン機構の特許を取得した。コンピューターや計算機もない時代に、これだけ精密な機構を考案し、開発したというのは驚くべきこと。

▲ アブラアン-ルイ・ブレゲが1808年に製作した懐中時計『No.1188』。スモールセコンドやパワーリザーブに加えて、トゥールビヨンを搭載していた。この時計はスペイン王家のボルボン王子に販売されたそう。

▲ 懐中時計『No.1188』のケースバックを開けると、ムーブメントが現れる。左右対称の機構の中央に、大型のテンプのトゥールビヨンが設置されている。
篠田 きっかけは1970~80年代の「クオーツショック」です。高精度のクオーツウォッチの登場によって、伝統的なスイスの機械式時計はどこを目指せばいいのか?となりました。そこで着目したのが、いにしえの機構であったトゥールビヨン。何せ、精密なパーツたちがクルクルと回転する様子って、ウンチク無しでも楽しめますからね。つまり現代のトゥールビヨンは、嗜好品としての側面が強いんです。
石井 そうだよね。キラキラしたものが動いているのは、それだけでも綺麗だし、技術の面でも驚きがある。それが人の手から生まれたってことに、得も言われぬ凄みを感じるよね。

篠田 現代において、時計はステイタス性や稀少性を重視するので、トゥールビヨンがますます愛されているわけです。
石井 なるほどね。アートを買うような感覚に近いのかもね。でも、これだけ多くのブランドからトゥールビヨンモデルが発表されるなかで、ブレゲのトゥールビヨンが特に高く評価される理由ってどこにあるのかな?
篠田 パイオニアとして、この機構に敬意をもち、技術力を生かしてさまざまな方向に進化させていることでしょうね。
トゥールビヨンを正常進化させるブレゲ

▲ ブレゲ初のトゥールビヨンウォッチとして1989年に誕生した『Ref.3350』の流れをくむ最新モデル。12時位置に時分針、6時位置にトゥールビヨンを配置し、三つ又の針が秒針となる。クル・ド・パリとグレンドルジュのギヨシェ彫りは、アンスラサイト処理され、シックな表情をつくる。ブレゲ・シールの認証を受け、美しさと高精度を誇る。『クラシックトゥールビヨン 7357』手巻き、Ptケース(35㎜)、カーフストラップ。2591万6000円/ブレゲ(ブレゲ ブティック銀座)
篠田 こちらの新作、『クラシック トゥールビヨン7357』は“トゥールビヨン文化の正統な後継者”といえます。時刻表示を12時位置にオフセットし、6時位置のトゥールビヨン機構は大きなブリッジで支えるというシンプルなデザイン。そのべースとなるのは、ブレゲがトゥールビヨン機構を復活させた記念碑的傑作である1989年製の「Ref.3350」です。
石井 これぞ、トゥールビヨンウォッチといった雰囲気があるよね。
▲ 搭載するムーブメントは、新型のキャリバー187B。大型のプレートには幾何学的なギヨシェ彫りが施されておりトゥールビヨン部分には、ブレゲ・シールのエンブレムが入る。シリコン製ひげゼンマイを採用し、耐磁性も高めています。
▲ 創業250周年の節目にデビューした独自素材「ブレゲゴールド」を採用。ケース径は35㎜と小振りだが、華やかなカラーリングで腕元を彩ります。『クラシック トゥールビヨン 7357』手巻き、18Kブレゲゴールドケース(35㎜)、カーフストラップ。2356万2000円/ブレゲ(ブレゲ ブティック銀座)

▲ 搭載するムーブメントは、新型のキャリバー187B。大型のプレートには幾何学的なギヨシェ彫りが施されておりトゥールビヨン部分には、ブレゲ・シールのエンブレムが入る。シリコン製ひげゼンマイを採用し、耐磁性も高めています。

▲ 創業250周年の節目にデビューした独自素材「ブレゲゴールド」を採用。ケース径は35㎜と小振りだが、華やかなカラーリングで腕元を彩ります。『クラシック トゥールビヨン 7357』手巻き、18Kブレゲゴールドケース(35㎜)、カーフストラップ。2356万2000円/ブレゲ(ブレゲ ブティック銀座)
篠田 ブレゲ流のクラシックスタイルを貫きつつ、高精度の追及という本来の目的に対しても真摯に向き合っています。耐磁性に優れるシリコン製のヒゲゼンマイを使ったり、パワーリザーブを60時間に伸ばして理想的なトルクを安定させたりしています。その結果、高品質・高精度の社内規格である「ブレゲ・シール」も取得しているのです。
石井 しかも、この配色がすごく綺麗。ギヨシェ彫りも精密で美しく、35㎜というコンパクトなケースサイズで腕元になじむ。毎日付けたくなる一本だよね。

トゥールビヨンの芸術性を極めるブレゲ

▲ 無反射コーティングを施したサファイアクリスタル製の歯車を使用することで、トゥールビヨン機構が浮遊しているように演出。ミステリアスな機構と星々が煌めくような美しいグラン・フーエナメル アベンチュリンによって、幻想的な世界を作り出します。『クラシック トゥールビヨン シデラル 7255』手巻き、Ptケース(38㎜)、アリゲーターストラップ。世界限定50本。3752万1000円/ブレゲ(ブレゲ ブティック銀座)
篠田 先ほどのモデルが正常進化であるならば、この『クラシックトゥールビヨンシデラル 7255』は、“機械芸術”としての表現を極めたモデルと言えますね。
石井 資料を読むと、これがブレゲ初のフライング・トゥールビヨンなんだってね。これ、トゥールビヨンが宙に浮かんでいるみたいだよ。

▲ 搭載するムーブメントはキャリバー187M1。背面から見ても、トゥールビヨンキャリッジが浮かんでいる様子がよくわかります。
篠田 機構を固定する部分が透明のサファイアクリスタル製の歯車になっているので、表からも裏からも浮かんでいるように見えるんです。これが「ミステリー機構」と呼ばれるもので、ブレゲでは20年くらい前から好んで使用しています。
石井 ブレゲって、ブレゲ針やブレゲ数字など、時計業界におけるデザインコードを作ったブランドでもあるくらい、芸術的センスにも長けている。だからトゥールビヨンでも美しさを追求するというのは納得できるよね。
篠田 「グラン・フー エナメル アベンチュリン」のダイヤルも綺麗。キラキラ輝いて星空のようです。
石井 モデル名の「シデラル」は、星や宇宙という意味。これはロマンを掻き立てる時計だね。
超絶機構をカラーリングで遊ぶブレゲ

▲ 初代ブレゲも開発に取り組んでいた動力ゼンマイのトルクを安定させる技術を、フュゼ(鎖引き)という方法で取り入れたモデル。繊細な鎖は最大で6kgという引張力にも耐えることができるそう。フレンチブルーのカラーリングも鮮やかなので、ファッション的にも楽しめます。『トラディション トゥールビヨン・フュゼ 7047』手巻き、Ptケース(41㎜)、ラバーストラップ。世界限定25本。4143万7000円/ブレゲ(ブレゲ ブティック銀座)
篠田 『トラディション トゥールビヨン・フュゼ 7047』は、フュゼという「鎖引き機構」を備えたトゥールビヨン。巻き上げた動力ゼンマイのトルクは、ほどけるほど弱まっていきますが、この機構を間に入れることでトルクを一定化し、精度を安定させる。この機構は15世紀から16世紀に考案されたそうで、あの天才レオナルド・ダ・ヴィンチもスケッチに残しています。
石井 ということは、ブレゲとダ・ヴィンチいう時代を超えた天才によるコラボレーションってことね。

▲ 搭載するムーブメントは、キャリバー569。ブレンチブルーとアイスブルー、そしてシルバーやレッドなど美しい色合わせも楽しい。
篠田 この鎖の細かさ、見てくださいよ。これもすべて手組みです。クラフツマンシップの結晶のような時計を、ブレゲはカラーリングでも魅せているんです。
石井 綺麗な配色だよね。鮮やかなフレンチブルーにアイスブルーを組み合わせて、立体感を出している。ルビーの赤もあるし、どことなくトリコロールカラーを思わせるね。
篠田 しかもトゥールビヨンの軸を支える穴石だけは、ブルースピネル製なんですよ。これだけ高度なメカニズムなのに、徹底的に色彩で遊んでいるのが凄い。

石井 この時計を見ていると、丸い額縁に収まったモダンアートにも見えてくる。
篠田 裏面の構造美も楽しいですし、トゥールビヨンとフュゼという超絶機構を、ファッション的、アート的に進化させるというのは、さすがブレゲですよね。
超絶機構×メティエ・ダールの融合とは?

▲ 初代ブレゲがフランス海軍御用達時計師として、マリンクロノメーターの開発に従事していたという歴史を反映させたラグジュアリースポーツモデル。トゥールビヨン、永久カレンダー、イクエーション・オブ・タイムを搭載するハイ・コンプリケーションウォッチで、ダイヤルには芸術的技法によって美しい星空を描いた。『マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887』自動巻き、Ptケース(43.9㎜)、ラバーストラップ。世界限定25本。4918万1000円/ブレゲ(ブレゲ ブティック銀座)
篠田 これが、今回紹介する最後の時計です。『マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887』は、トゥールビヨン、永久カレンダー、そしてイクエーション・オブ・タイムが搭載された超複雑時計。イクエーション・オブ・タイムは、実際の太陽の動きによる1日の長さ(真太陽時)と24時間(平均太陽時)の差を示す機構で、この時計では太陽型のインジケーターで表示します。
石井 この複雑さは、さすが!って感じ。しかもダイヤルの表現も凄いね。
▲ 搭載するムーブメントはキャリバー581DPE。複雑機構を搭載しつつ、パワーリザーブは80時間。8時位置の小さな窓はパワーリザーブ表示となる。
▲ 透明のグラン・フー エナメルとミニアチュール・ペインティングによって、美しい星空を描く。オーダーメイドによって、日、時間、場所の星空を描くことができます。

▲ 搭載するムーブメントはキャリバー581DPE。複雑機構を搭載しつつ、パワーリザーブは80時間。8時位置の小さな窓はパワーリザーブ表示となる。

▲ 透明のグラン・フー エナメルとミニアチュール・ペインティングによって、美しい星空を描く。オーダーメイドによって、日、時間、場所の星空を描くことができます。
篠田 半透明のグラン・フー エナメルのダイヤルに、星座や星を手作業で描いています。これは「ミニアチュール」と呼ばれるメティエ・ダール(芸術的手仕事)技法です。ちなみにこのモデルの星空は、初代ブレゲがトゥールビヨンの特許を取得した1801年6月26日のパリの夜空を描いたもので、夜光塗料を用いるため暗い場所で光るというのもロマンティック。この時計の購入者は、好きな場所や日付の星空をオーダーできます。
石井 ということは、プロポーズなどふたりの思い出に残る大切な時間を封じ込めることができるってことか。それってロマンティックだよね。
トゥールビヨンの「今」が、4本の新作に詰まっている

石井 こうやって見ていくと、4モデルすべてのトゥールビヨンが、それぞれ異なる進化をし、その個性が全然違う。でも、すべてに初代ブレゲの時代から積み重ねてきた物語がしっかりあるよね。
篠田 しかもそういった技術的な凄味や物語が、語らなくても伝わってくる。もちろんトゥールビヨン機構ですから、最大の目的は高精度の追求であることは揺るぎませんが、眺めて美しいと感じる感性は、現代の高級時計には欠くことのできないこと。225年という歴史を飾るにふさわしい、現代的なトゥールビヨンですね。
石井 ちなみに篠田君は、どのモデルが好み?
篠田 サイズ感やカラーリングも含めて、普段使いできそうな『クラシックトゥールビヨン7357』ですね。石井さんは?
石井 『クラシックトゥールビヨン シデラル 7255』かな。こうやって見ていると、トゥールビヨン機構が宇宙に浮いている宇宙ステーションにも見えてくる。ドラマティックな時計だし、オトコ心もくすぐられるよね。
篠田 こうやって最新のトゥールビヨンにワクワクできるのは、初代ブレゲがこの機構を開発してくれたおかげですよね。
石井 ほんとだよ、生みの親に感謝だね。
■ ブレゲ ブティック銀座

● 石井 洋(いしい・ひろし)
LEON統括編集長・オフィシャルWEBサイト『Web LEON』編集長。1974年福島県生まれ。エディターとして多方面で活躍した後、雑誌『LEON』に参画。2017年3月より同誌編集長に就任。2026年2月より現職。

● 篠田哲生(しのだ・てつお)
時計ジャーナリスト、ウォッチディレクター。1975年千葉県出身。LEONをはじめ、時計専門誌やWEB、新聞などで時計企画を担当。時計イベントの企画や登壇なども行う。著書に『教養としての腕時計選び』(光文社新書)など。




















