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2026.10.24

柳楽優弥インタビュー。「テクノロジーが進んだ現代こそ人情とか愛とか“人間臭さ”が貴重になると思う」

唯一無二の演技派俳優・柳楽優弥さんが主演する映画『RYUJI 竜二』は33年前に公開された人気作品のリメイク。ヤクザを辞めて家族のために生きる男・竜二を演じた柳楽さんに作品への思いや演技との向き合い方を聞いてみました。

CREDIT :

写真/土屋崇治(TUCCI) スタイリング/池田尚輝  ヘアメイク/勇見勝彦(THYMON Inc.) 文/アンドウヨーコ 編集/鎌倉ひよこ、森本 泉(Web LEON)

「RYUJI 竜二」 柳楽優弥 竜二 LEON

演じる役によって、纏う空気すら変化させる……唯一無二の演技派俳優として常に鮮烈な印象を残している柳楽優弥さん。10月30日(金)に公開される映画『RYUJI 竜二』では、“家族”のために極道から足を洗った主人公・竜二として新しい役柄に挑みました。さらなる境地へと踏み込んだ柳楽さんに作品への思いや演技との向き合い方を伺いました。

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初めて映画のオファーをいただいたのは約7年前でした

── 本作のオリジナル版映画『竜二』(※)は、柳楽さんが生まれる前の1983年公開の作品。時代を超えてご自身がリメイク作品で主演を務めることについてのお気持ちを教えてください。

※『竜二』は新宿にシマを持つ若き極道、竜二が妻子のために堅気になるも不器用な性格ゆえ次第に苛立ちを募らせていく姿を描いた異色のヤクザ映画。当初は自主映画として制作されたが東映で公開され大ヒットした。自ら脚本を書き主演もした金子正次は病いのため映画公開後8日目に33歳の若さで亡くなった。

柳楽優弥さん(以下、柳楽) 初めて映画のオファーをいただいたのは約7年前ですが、それより前にオリジナル版を一度観ていました。その時に、この作品が、公開当時大きな反響を呼び、熱狂的なファンを獲得した映画であることを深く知りました。そんなすごい作品をリメイクする意味や、自分が竜二を演じる自信みたいなものに対する気持ちが半信半疑だったというか……、その頃、僕はまだ20代後半でこの世界観を表現するのはなかなか難しいのかなぁと感じていました。


コロナもあった中でも台本をいただいたりとお話は続いていたんですよね。コロナ禍が過ぎて、また水田(伸生) 監督と対話を重ねていくうちに、だんだん自分の中でも腹が決まってきました。時間と対話を重ねてやっと……といった感じです。

「RYUJI 竜二」 柳楽優弥 竜二 LEON
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── なぜ今、この作品のリメイクを? とは思いましたか。


柳楽 そこに疑問を感じるというより、とてもありがたいけれど自分に務められるかというところでした。約7年というプロセスを経てもオリジナルへの尊敬は僕の中でまったく揺るがないもので、そこを追うとか、超えるということは考えていませんでした。『竜二』は絶対的な存在です。


でも、僕へのオファーのお話が7年続くということに意味があると信じられるようになってきて、その中で自然とこの作品と役に向き合うという気持ちが高まっていき、撮影に挑むことができました。もし、誰かがそこに意味を感じなくなれば、この話はコロナ禍で消滅していると思うけれど、水面下でしっかり進み続けていた……そのプロセスも含めて、制作に携われたことに感謝しています。

── 監督との信頼関係があったからこそですかね。


柳楽 水田監督とは『ゆとりですがなにか』でご一緒させていただいたので、そこでの経験が信頼関係のひとつになっていると思います。『ゆとりですがなにか』はわりとコミカルな作品なんですけど、監督はたぶん人間くさくて、笑いのあるセリフも隠さず表現する作品がお好きなんじゃないかと。今回はコメディっぽいセリフはないし、ムードも全然違うんですけど、真正面に人情や仁義、そして愛情と向き合える監督と過ごせたのはすごくいい時間だったなと感じています。

「RYUJI 竜二」 柳楽優弥 竜二 LEON
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“仁義”や“愛”や“絆”のような人間くさいワードがより大切に感じられる

── 柳楽さんが演じる竜二の魅力とは? 同じ男性からみた視線で教えていただけますか。


柳楽 もともと映画『仁義なき戦い』や、(ビート)たけしさんや高倉健さんの極道系の作品が好きでよく観ていました。言葉数は多くないけど、心に響く役柄が好きで……。本作でも初稿の段階ではいろいろと説明しているキャラクターでしたが、だんだんと口数が少なくなって、何かの狭間で揺れている雰囲気がセリフ以外でも、より表現されています。僕としてはそっちの方が合っているのかなと思いました。


制作過程の中で、一緒に寄り添いながら(竜二の)キャラクターを作っていけたというのは、今までにはあまりなかったことなので、新鮮な気持ちで挑めました。あと、“仁義”や“愛”や“絆”のような人間くさいワードが、テクノロジーが進んだ今の時代だからこそより大切に感じられる作風になっていると思います。竜二の誠実で、自分の中の最適解を真剣に探しているキャラクターは僕自身、すごく好きで、その人間臭さは作品の魅力にもなり得ると感じました。

── 作中のバイオレンスシーンについて監督と慎重に話し合ったと伺いましたが……。


柳楽 僕はバイオレンスの含まれた作品と関わることが割とあるので、それが意図した表現として成立していないといけない、ということを監督と話し合いました。監督やプロデューサーさんとの考え方の共有ですね。例えば、妻に平手打ちをするという演出があったのですが、僕と監督の間では、それはトゥーマッチだという話になりました。話し合いをした意義がしっかりと生かされましたね。


作品の中で、平手打ちがノイズになりかねないし、このキャラクターっぽいからやるというのは違うかなと。僕は今36歳で、若い世代の役者さんとの共演も増えてきた。疑問に感じたことは監督にちゃんと投げかけるということを大切にしたいなと思い、積極的に会話することを意識的にやっていました。会話を重ねることで良くなることがあるならちゃんと話さなきゃ……と。

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「RYUJI 竜二」 柳楽優弥 竜二 LEON

── 約7年間のやりとりがあったからこそじっくりと詰めることができたのかもしれませんね。


柳楽 それもあると思いますね。その時間があったからこそ、話し合うことの大事さに気づけたのかもしれないです。他愛もない瞬間の会話が意外と大事なんだなって……いろいろ勉強になりますね(笑)。しかもこの作品は、バイオレンス映画ではなく、愛や絆を描くべき作品だと感じたので、平手打ちが単なるノイズになるともったいないと思ったというのもあります。

── 昔と比べて作品に関わるうえで、どこかに疑問を抱いたり、違和感を持った時は口にしたほうがいいと思うようになったのでしょうか?


柳楽 もともと疑問を口にするのは得意なほうではなかったんですけど、いろいろな作品に主人公として関わらせていただくうえで、対話は重ねていかないとダメだなということを学べました。そういった意味で、昔に比べて視野は広がったかもしれません。そこは成長している部分かもしれないです。単純に作品を良くしたいという思いがいつもあるだけなんですよね。


でも、時代が変わってきているので、表現の一つひとつのアプローチの力強さを軽視してはいけないなと……制作の過程で誰かが何かの表現に違和感を感じたのなら、それはちゃんと伝えようという気持ちになりました。

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「RYUJI 竜二」 柳楽優弥 竜二 LEON

新しくて完璧な状態よりも侘び寂びがある感じのほうが僕には合う

── 白いコート姿がとても印象的でしたが、着方などにもこだわりはあったのでしょうか?


柳楽 僕というより(衣装デザインの)柘植さんがビジュアルコーディネートをやってくださって、それぞれのキャラクターや世界観の一貫性をキープしてくださいました。改めてすごく大事な役割を担ってくださったなと思えました。


撮影現場は勢いが大事になってくるので、客観的に世界観をキープして、冷静に進行を見守る方の存在はありがたいんです。今回、柘植さんとは初めてご一緒させていただきましたけど、すごい方だなと感じました。それにやっぱり、白いコートを着ると僕の中で竜二のスイッチが入るというか、気分が竜二になっていくのを感じましたね。

── 竜二にとっての白いコートのように、ご自身のファッションへのこだわりはありますか?


柳楽 僕はアクセサリーとか時計とか、気に入っていたものをずっとつけているので、それがこだわりといえばこだわりかもしれません。靴はTricker’sをずっと履いているし、使っていくうちに味の出てくるものが好きです。いろいろ新しく買い替えるよりも、ひとつのものを長く愛したいですね。


語学の勉強でイギリスに行くことがあるのですが、ヨーロッパでは経年変化というか、服や小物を着て馴染ませる習慣があるんですよね。それがすごく素敵だと思っていて! 新しくて完璧な状態よりも侘び寂びがある感じのほうが美意識として僕には合うんです。ファッションに詳しくはないんですけど、僕が好きな方向性としては、長く愛して自分のキャラクターになじませていく、溶け込ませていくというのがこだわりですね。

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「RYUJI 竜二」 柳楽優弥 竜二 LEON

── ひとつのものを愛するというこだわりは、人間関係にも共通しますか?


柳楽 人間関係はどうだろう。僕は尊敬できる方と一緒にいたいなっていつも思っているんですけど、そういう方たちと長く付き合えたら最高ですよね。でも長いからとか期間に関係なく、一瞬の出会いでも忘れられないくらいに尊敬できる方もいるし……。素敵な方との出会いは大切にしたいですね。

── 本作の撮影を通して、いちばん勉強になったと感じることはどんなことでしょうか。


柳楽 テクノロジーと対立する概念というか。この作品の場合、人情とか愛とか仁義、それから極道とか……とにかく人間臭い世界観だと思うんですけど、AIとかが進む現代の中で、そういうものを貴重だと感じられること。これはこの作品から感じられたことのひとつですし、すごく勉強になりました。“テクノロジー”と“人間臭さ”って真逆の関係ですよね。今の時代だからこそ、人間臭さというのがある意味、すごくいいバランスになっているんだと思います。

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カッコいいと思うのは思いやりがあって、優しくて、筋が通っていて……

── 竜二のセリフで「楽じゃねえなあ」とありますが、最近、柳楽さんが「楽じゃない」と思ったことは?


柳楽 語学です(笑)。先ほど語学の勉強でイギリスに行かせてもらっているという話をしたのですが、たくさん勉強して習得できたと感じても翌日にはまだまだな現実を知るんです。楽じゃないですよね(笑)。だけど、勉強し続けています!


── ところでLEONでは皆さんに伺っているのですが、柳楽さんにとっての“カッコいい大人”とは?


柳楽 カッコいい……か。思いやりがあって、優しくて、筋が通っていて、それから頼りがいがある。そういう感じですね(笑)。


── 今、ご自身の現在地はどのへんでしょうか。


柳楽 今、カッコいい大人を目指してがんばっているところです。武道を習っているのですが、まだまだですね。武道の先生は強くて、優しくて……まさに目指すべきカッコいい大人です。

「RYUJI 竜二」 柳楽優弥 竜二 LEON
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── LEON読者に注目してほしい『RYUJI 竜二』の見どころは?


柳楽 LEONの読者の方は、僕ぐらいの世代、もしくはもっと上の世代も多いと思うんですけど、物事に本気で向き合っている竜二の姿に注目していただきたいです。人間臭さも混ざりながら、本気でもがき、何かを見つけようとする姿からいろいろと感じるものがあると思います。たくさんの方に観ていただき、楽しんでもらえたらありがたいです。

── 最後に柳楽さんにとって歳を重ねていくこととは?


柳楽 この作品を通して僕自身、成長できたし、自信も得られた……それは歳を重ねて経験を積んだからこそ! これから先、年下の後輩もどんどん増えるので、僕の年代には頼りがいが求められてくると思うんです。だからこそ、中身も外見も歳を重ねながら磨いていきたいし、そのことに楽しみを感じます。

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「RYUJI 竜二」 柳楽優弥 竜二 LEON

● 柳楽優弥(やぎら・ゆうや)

1990年3月26日生まれ、東京都出身。2004年、映画『誰も知らない』で演技未経験でありながら主演に抜擢、さらに同作で第57回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を当時14歳の若さで受賞し、大きな話題を集める。映画『浅草キッド』(2021年)、ドラマ『ライオンの隠れ家』(2024年)、Disney+『ガンニバル』シリーズ(2022・2025年)、Netflixシリーズ『九条の大罪』(2026年)など、数々の作品でゆるぎない存在感を示す。


「RYUJI 竜二」 柳楽優弥 竜二 LEON

『RYUJI 竜二』

1983年、金子正次が主演・脚本を務め、その生き様と当時の時代の空気が鮮烈に重なり合ったことで大きな反響を呼んだ映画『竜二』。公開からわずか8日後、金子正次が逝去し、日本映画史に刻まれる伝説ともなった本作が43年の時を経て映画『RYUJI 竜二』として再創造される。腕っぷしが強く、情に厚いヤクザ・竜二が愛する家族のために裏社会から足を洗い、堅気として生きようとしながらも、舎弟として可愛がっていた“もうひとつの家族”との間で揺らいでいく……。柳楽優弥の演じる新たな竜二が映画の世界観を鮮烈に彩る。

2026年10月30日(金)全国公開

HP/映画「RYUJI 竜二」公式サイト


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