2026.08.06
野性爆弾・くっきー! インタビュー。「ずっとガキのままの、ピーターパンみたいな大人がカッコいい」
活動のジャンルを軽やかに飛び越えながら、自身の「好き」を形にし続ける表現者、野性爆弾・くっきー!さん。今春、東京・表参道で大きな反響を呼んだ『鋲じゃん展』が8月8日から大阪でも開かれることに。鋲じゃんに込めた思いと、「好き」を貫く人生への向き合い方について話を伺いました。
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文/岡本ハナ 写真/内田裕介 編集/森本 泉(Web LEON)

お笑いの枠にとどまらず、アートやファッションなど、ジャンルを軽やかに飛び越えながら、自身の「好き」を形にし続ける表現者、野性爆弾・くっきー!さん。今春、東京・表参道で大きな反響を呼んだ『鋲じゃん展』も、そのひとつです。一点一点手作業で制作された鋲ジャンは、ファッションであり、アートでもある唯一無二の作品として、多くの人を魅了することに。
今回のインタビューでは、8月8日からスタートする『鋲じゃん展 by くっきー! in 大阪』に込めた思いをはじめ、作品づくりの原動力、お笑いとアートに共通する表現論、そして年齢を重ねた今だからこそ感じる「好き」との向き合い方について伺いました。
上沼恵美子さんへ贈る、鋲じゃんというラブレター
── 今年3月に東京・表参道で開催された『鋲じゃん展』は、連日多くの方が訪れ、大きな反響を呼びました。率直な感想を教えてください。
くっきー! めっちゃうれしいですよ! 鋲じゃん(スタッズ・ライダースジャケット)ということで、ほんまにパンク好きな人も来てくれているけど、それ以外の人ってどういうつもりで来てくれてんのかなと思いますけどね(笑)。だって、全然知らん鋲じゃんを見に来るって、ワケが分からんじゃないですか。
── 8月8日からはいよいよ大阪でも『鋲じゃん展』が開催されます。東京を経て、大阪ではどんなところがアップデイトされているのでしょうか?
くっきー! そうですね。作品数も増やしたし、象徴的なものも一着作りました。それが、これなんです。(小脇に抱えながら)若い頃の上沼恵美子ジャンパーを作りました。可愛いでしょう! 東京でも一着オークションに出したのですが、これもオークションに出す予定です。

── ホント可愛いですね! 一点一点、すべて手作業で制作されているそうですが、作品づくりは、どのように始まるのでしょうか?
くっきー! 何も考えずに、なんとなく始める感じですかね。このままバサッて置いて、「ここに(鋲を)入れよう」みたいな。この「えみじゃん」に関しては、背面のデザイン(イラスト)を入れてから、あとはもうこの子が導いてくれるというか(笑)。そんな感じで鋲を打っていくんです。
── 一着作るのにどれくらいかかるんですか?
くっきー! 鋲の量にもよるけど、「えみじゃん」は2日でしたね。このアトリエで作業を始めると、もうずっと熱中しちゃう。飯も食わず、とめどなく。口が乾いてバッサバサになりながら(笑)。だから家族との約束で、ここに泊まるのは禁止なんです。タイマーをかけて、それまではぶっ通し。僕の中では4〜5時間は普通ですね。没頭しすぎて……写経をずっとやってるみたいな感じです(笑)。
── どんなところが難しいですか?
くっきー! 鋲を打つ作業って道具ではなく、指でやるから、指が潰れていくんですよ。それがメッチャ痛いんです。毎回「あぁ~っ!」って言いながら苦痛を伴って、修行みたいにやっていますから。
── そんなに体を張っての作業とは……。ではこれまでで、一番制作に苦労した作品は何でしたか?
くっきー! どれもそれなりに大変なんですけど、やっぱり一番苦労したのは「時東ぁみじゃん」ですね。好きなアイドルやったんで、失礼のないようにという点では気を張りました。
鋲じゃんって、自分がファンのバンドとかを描くんですけど、それってやっぱりイコール「好き」ってこと。「えみじゃん」を作ったのも、リスペクトしてるからこそ。「好きです!」っていうアピールなんです。

── ラブレターみたいなものですね。今回、ご本人にはお伝えしたんですか?
くっきー! (上沼さんの)連絡先も知らないです(笑)。そのうち、風の噂で知ってもらえたら。
── ご自身で作られた作品は、ご自身のために作るものですか? それとも、誰かに向けて作るものなんですか?
くっきー! それはもう全然自分用ですね。だから、だいたいは僕のサイズなんです。自分の好きなものしか根本的に作ってないですし、人のために作るものではないかな。
やっぱり男子ってコレクション癖があるんですよ。茶色い酒を飲みながら「これ作ったな〜」なんて、しみじみ眺める。何のプラスにもならへん時間なんですけどね(笑)。遊びで、鋲ランドセルを作ったこともありますし(笑)。
すべては、パンク少年から始まった
── そもそも鋲じゃんを作りはじめたきっかけは?
くっきー! ガキの頃からパンクが好きだったんです。高校2年くらいですね。パンクファッションっていろんなスタイルがあるんですけど、革ジャンって、そのまま着てる人はおらんくて。みんな自分なりにカスタムしていくんです。僕も誰から教わるわけでもなく、見よう見まねで(カスタムを)始めて。気づいたら、それが自分のスタイルになっていました。
当時の鋲は今みたいに普通には売ってなくて、もっと長い鉄の四角い棒みたいなものを一本一本曲げて使っていたんです。穴を開けたり、いろいろ試行錯誤しながら留めていって。機械でパチンッて付けるものやと思ってたから、全然違って(笑)。全部手曲げですからね。
── それは大変でした。最初に作った鋲じゃんは、今も残っているんですか?
くっきー! いや、もう高校の時なんでサイズも全然違うし、ないですね。徐々に袖を切ったり、リメイクも重ねていったので、最後は切り刻んで、ベロっとしたエイみたいになってたかもしれないです(笑)。
── そもそも、パンクが好きになったきっかけは?
くっきー! ガキの頃って尾崎豊にハマる人が多かったんですよね。僕はハマってはいなかったけど、感覚としてはあれと同じなんですよ。反逆精神というか、社会に反抗するのがカッコいい! みたいな。ヤンキーに憧れる感じっていうのかな。普通じゃないのが好きやった感じですね。

── ご自身はヤンキーには憧れなかった?
くっきー! それな~。中学校の頃、一瞬ヤンキーになったんですけど、怖すぎてやめたんです。連れに「暴走族のところに行こう」って言われて。チャリンコこいで向かったんですけど……パトカーを単車6台ぐらいで囲んで、バンバン蹴ってたんですよね。「俺、これやらなあかんのかな」と思ったら、すごく怖くて。「俺、やっぱやめとくわ」って。でも、ちょうどその頃にバンドブームが来たんですよ。それで一気に音楽にのめり込んでいったんです
── その流れでバンドも続けられているんですね。ライブでは、ご自身の鋲じゃんを着ることもあるんですか?
くっきー! はい。逆にそれくらいしか着る所がないです。やっぱり場所は選びますよね。夏の炎天下やと暑いし、鋲が乱反射してピッカピカで目立ちすぎる(笑)。
お笑いという木に、アートが育った
── お笑いとアート。二つの表現をされていますが、ご自身の中では、表現として共通点はあるのでしょうか?
くっきー! 一見すると別々のものに見えるけど、根っこは同じっていうのかな。僕ね、カッコつけないのがカッコいいと思ってるんですよ。カッコつけすぎると、なんかカッコ悪い気がして。だから絵も、真面目に風景画を描いたことはなくて。どこかにお笑い要素を入れるようにしてるんです。音楽もまあふざけてますし。もちろん、良い意味でですけどね(笑)。
あんまり意識したことはないですけど、基本的には軸にお笑いがあるんやと思います。お笑いという木に、ほかの枝葉が生えているような感じですね。
── 例えば、この先アートの評価がもっと高まって、お笑いをしなくても生活できるようになったとしても、お笑いは続けますか?
くっきー! その時に思いついたことをやってるだけなんで、「お笑いを頑張り続けよう」って考えたことはないですね。だから、お金が貯まったら、もうお笑いをやめてもいいかなって思うくらいです(笑)。
── なるほど。でも、お笑いにアートに音楽に。これだけたくさんの表現をされていると、一日の時間が足りなくなりませんか?
くっきー! これがほんま(時間管理が)下手で(笑)。締め切りがあっても、熱中するともうダメなんですよ。鋲じゃんに関しては指がちぎれそうになりながらやってるし、結局あとで全部(仕事を)詰め込むことになっちゃう。翌日はそりゃあもうしんどいです(笑)。
子どもの好き嫌いと一緒で、グリーンピースを最後まで残す感じ。でも、最後にはちゃんと全部飲み込みます(笑)。

── そんな忙しい毎日の中で、一番好きな時間は何ですか?
くっきー! プライベートでバンドをやっているのですが、ライブをしている時ですね。それが一番。汗もめっちゃかくし、痩せるし、運動にもなる。一応スポーツジムの会員なんですけど、3年に2回しか行ってない(笑)。でも、ジムより、よっぽど体にいいことしてるなって思います。まぁ、ジムの良さをまだ知らないだけかもしれないですけど。
── すごく健全ですね!
くっきー! 親の育て方ですかね(笑)。
ボトルシップをつくるように、生きること
── やりたいことは、自然に湧き出てくるものなんですか?
くっきー! わざわざやりたいことを探すってことはないです。普段から脳みそが落ち着いてないのかもしれない。せわしないんでしょうね。思いついたら、すぐ動いちゃう。
でも、それはお笑いで、成功とまでは言わないですけど、ある程度稼げるようになって、余裕ができたからこそ、できることなのかもしれないです。
── くっきー!さんは、年齢を重ねても、新しいことに挑戦し続けていますよね。ご自身では、年齢を意識することはありますか?
くっきー! 年齢は意識しないけど、体力のことは意識しますね。若ぶっているというか(笑)、若い脳みそではいるつもりかも。何かをルーティン化しているわけじゃないけど、「ここは歩いておくか」って1駅分歩いてみたり、たまにスクワットやったりとかね。毎日これをやろうって決めるのもしんどいですから。
── いや、でも筋肉すごいです!
くっきー! こういう作業(鋲を打つ)が筋肉をつけるのかもしれないですね。以前、もうひとつジムにも入ってたんですよ。もちろん通うつもりやったんですけど、自宅近くのジムやったから、ガレージで作業しててトイレに行きたくなると、そのジムに行く(笑)。完全にトイレ代わりになってしまって、「これはもったいないな」と思って解約しました。

── 男性でも50代に入ると、更年期が気になるという方もいますが……くっきー!さんは、大丈夫ですか?
くっきー! よく聞きますよね。急に汗がどっと出たりとか。でも、僕はそれはないですね。吉本の先輩方も元気な人ばかりですし、僕も含めて、みんなどこかズレてるんですかね(笑)。
── そんな、くっきー!さんにとって、カッコいい大人とはどんな人でしょうか?
くっきー! カッコいい大人って、いっぱいいますよね。バシッと大人っぽい人も、もちろんカッコいいと思う。でも、僕の中では、ずっとガキのままの、ピーターパンみたいな大人がカッコいいんですよね。
「大人やから、これはやったらあかん」とか、そういう凝り固まった考えじゃなくて、やりたいことをずっとやり続けている人。服装も「子どもっぽいからやめておこう」じゃなくて、自分が着たいものを着る。そんなふうに、年齢に縛られず“好き”を貫いている人のほうが、僕は魅力的だと思います。
── 最後に、同世代を生きるLEON読者へ、ひと言お願いします。
くっきー! やりたいことを何でもやると言っても、僕も環境的にできへんことはあります。例えば、「空母が欲しい」と思っても買えないじゃないですか(笑)。
でも、今の環境でできることをやっていけばいい。ボトルシップを作るみたいに、最初は狭い世界でちょこちょこ作っていても、その中に思いもよらない世界が広がっていくんです。ひとつ始めたら、そこからまた次に繋がっていく。だから、恐れずにボトルシップに突っ込んでちょうだい! そんな感じです(笑)。

野性爆弾・くっきー!
1976年生まれ、滋賀県出身。お笑いコンビ・野性爆弾として活動する一方、アーティスト「COOKIE!」としても精力的に作品を発表。2019年にはニューヨークで開催された「ARTEXPO NEW YORK」にて注目アーティスト5人に選出され、2020年より本格的にアート活動を開始。絵画や立体作品、ファッションなど幅広いジャンルで独自の表現を追求している。

『鋲じゃん展 by くっきー! in 大阪』
東京・表参道で大きな話題を呼んだ「鋲じゃん展」が、大阪・南堀江へ上陸。くっきー!が執念とこだわりを込めて一点一点手作業で制作した「鋲じゃん(スタッズ・ライダースジャケット)」が、ファッションの枠を超えた立体アート作品として並ぶ。東京開催時には未完成だった新作も展示予定。大阪限定グッズの販売や鋲ジャンオークションも実施される。8月8日(土)~11日(火・祝)、LOKKI GALLERYにて開催。
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