2026.08.08
中山優馬インタビュー。「ずっと泥臭く頑張り続けるのはしんどい。だからこそそれができる人はカッコいい」
デビュー18年目の昨年、事務所を独立し新たなスタート地点に立った中山優馬さん。俳優として、歌手として、数多くの舞台で存在感を示してきた中山さんが今回挑戦するのは劇団「第三舞台2026」の『パレイドリア』。作品の見どころや意気込みをはじめ、理想の大人像などをたっぷり伺いました。
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文/飯田帆乃香 写真/内田裕介 スタイリング/柴田拡美 ヘアメイク/小林綾子 編集/森本 泉(Web LEON)

80年代の小劇場ブームを牽引した劇団・第三舞台が、2026年版ユニットとして再集結します。今回公演される『パレイドリア』の作・演出を手掛ける鴻上尚史さんから「信頼できる若手俳優」として抜擢された中山優馬さんに、作品の見どころや意気込みをはじめ、理想の大人像などをたっぷり伺いました。
デビュー18年目の昨年、10代から所属していた事務所を離れ、独立。チャレンジ精神を変わらず持ち続け、「趣味の釣りや料理も好きだけど、やっぱりお芝居している時が一番楽しい」と語る中山さんの、演劇への思いや趣味を楽しむ素顔に迫ります。
30代は、現場によって若手にもベテランにもなる不思議な年代
── かつて紀伊國屋ホールに当日券を求め、300人近くの行列ができたという伝説を持つ第三舞台。解散から15年経った今年、舞台『パレイドリア』でメンバーが再集結します。
中山優馬さん(以下、中山) 僕は第三舞台をリアルタイムで観ていた世代ではないですが、その熱狂的な人気ぶりは、いろんな方から聞いていました。今回、そんな劇団を作り上げた大スターたちが集まるということで、もしかしたらピリッとした現場になるのかな……と想像していたけれど、最初の本読みから同窓会みたいな空気になって。「みなさん、こんなに仲がいいんだ!」と、いい意味で驚きがありました。
── 個々の光る才能が調和した、アットホームな劇団なのですね。
中山 そんな感じがします。他の作品で共演させていただいた長野里美さんと大高洋夫さんも、僕が今まで見たことない表情をされていて、なんだか新鮮な気持になりました。

── 中山さんは近年、舞台での活動が多い印象です。
中山 そうですね。でも、意図的に舞台中心にしようと決めたわけではなくて、好きな活動だから自然と多くなっていった気がします。
── 舞台に立つ魅力はどんなところですか?
中山 一番は、何度でも挑戦できることです。稽古と本番を合わせて100回、200回と同じ台詞、動作を繰り返す中で、常に新しい発見があります。回数を積み重ねた先に見えてくるものがある。それは、自分の人生を広げてくれるような感覚です。
もうひとつは、スリルです。舞台上で頼れるのは共演者だけ。何かあればお互いに支え合わなければならない緊張感も、生でお芝居をする醍醐味だと思います。
── 舞台はもちろん、幼い頃から『バッテリー』や『ほんとにあった怖い話』などの映像作品も数多く出演されていますが、30代になった今、俳優として自身の成長を感じる部分はありますか?
中山 成長したという実感はあまりないけれど、お芝居中に自分を解放できるまでの時間は短くなったと思います。どこかでカッコつけていた若い頃に比べて、感情をしっかり持ちながら役を生きられる感覚が強くなりました。
あと30代になって不思議なのが、現場によって立場が変わることです。まだまだ若手の現場もあれば、逆に共演者の中で一番年上の時もあるので、ベテランの風格を求められるのは新しい感覚です。

── 上の立場にも、下の立場にもなる年代ですよね。
中山 そういう意味で、今回の『パレイドリア』の現場はありがたいです。まだまだ若手の気持ちでいられて、失敗しても学べる環境なので。
── 先輩から学べる現場のほうがやりがいを感じますか?
中山 リーダーシップをとる現場にも学びはありますけど、やっぱり先輩方の姿を間近で見られる現場は、とても貴重だなと思います。
── 作家・演出家の鴻上尚史さんとは、『ローリング・ソング』や『地球防衛軍苦情処理係』でもご一緒されていますが、中山さんにとって鴻上さんはどんな方ですか?
中山 演劇ならではの表現の面白さや、演劇そのものの楽しさを教えてくださった方です。鴻上さんの作品には独特のスピード感があるんですよ。
── 独特のスピード感とは?
中山 例えば、悲しんでいる一秒後には満面の笑顔をつくるような、ひとつのフレーズの中に瞬間的な切り替えを求められます。その人間の感情の豊かさを表現するスピード感が、すごく難しくて、何度繰り返してもやりがいを感じます。僕はまた鴻上さんの舞台に立ちたいと切望していたので、今回、オファーをいただけて本当にうれしかったです。
── その飽きのこないテンポの良さは見どころのひとつになりそうですね。
中山 そうだと思います。あと令和の今だからこそ描けるテーマにも踏み込んでいて、行き過ぎたコンプライアンスの問題を丁寧に描きながら、皮肉やユーモアも織り交ぜています。濃密な出来事が次々に展開していくので、ぜひ劇場に足を運んでいただきたいです!

── 中山さんは、認知症と診断された父親を支える青年・輝一郎を演じます。どんな人物だと捉えていますか?
中山 根っこの部分では優しい青年だと思います。父親に怒りを抱えて生きてきた人で、「認知症になっていなければ口もきいていない」という台詞があるくらい、親子関係は良好ではなかった。でも、認知症になった父親と向き合う中で、それまで見えていなかった父親の気持ちや苦しみを少しずつ理解していきます。難しい問題に向き合う輝一郎が、この作品で希望のような存在になればいいなと思っています。
物事を俯瞰するクセがあるから、芝居に没頭できる時間は安心します
── 共演者のみなさんから刺激を受けることが多いと思いますが、中山さんにとって「カッコいい大人」とはどんな人ですか?
中山 いくつになっても挑戦し続ける人です。一生懸命に台詞を覚えて、全身を力いっぱい動かして、一生懸命にお芝居を届ける。その姿勢をずっと持ち続けている人は、本当にカッコいいと思います。第三舞台のみなさんも、長く第一線で活躍されていても現状に甘んじることなく、作品に全力投球していてすごくカッコいいです。
── ご自身もそういう大人でありたいですか?
中山 理想はそうだけど、たまには余裕ぶって気取りたい時もあります(笑)。だって、しんどいじゃないですか。ずっと泥臭く頑張り続けるのって。でもだからこそ、地道に頑張り続けられる人が、何十年も第一線で活躍されているんだと思います。
それこそ鴻上さんは、純粋に「楽しいものを作りたい」「楽しいものを見たい」という気持ちを、何十年も持ち続けながら、ご自身の感性を形にする天才です。現場では課題を責めるのではなく、「もっとこうすれば良くなりそうだね!」みたいに、前向きな発想で現場をつくってくださるカッコいい大人です。

▲ 衣装協力/バナナ・リパブリック br_info@bananarepublic.jp
── 中山さんはプライベートでも世代の違う方と交流することはありますか?
中山 どちらかというと年上の友人のほうが多いです。ご飯に行ったり、ゴルフや釣りを一緒にやっています。虚構の劇団の旗揚げメンバーだった山崎雄介さんも10歳くらい年上ですが、3日に1回くらい会っている親友です。
── 仲良しですね! 親友と呼べるのはどんな存在ですか?
中山 一緒にいて何も考えなくていい相手。自然体でいられる心地よさがあります。
── ゴルフに野球、料理、釣り、船の勉強など、プライベートも充実されている印象ですが、そういった趣味はお仕事にもいい影響を与えていますか?
中山 いろいろやってはいるけど、どうなんでしょう……(笑)。僕はあまり感情の起伏が大きくなくて、全部それなりに楽しいけど、「これをやっている時が最高!」みたいに盛り上がるタイプではないので。
── 趣味は淡々と楽しんでいる感覚?
中山 そうですね。それより、お芝居をしている時のほうが感情的になれるので、悲しい時はとことん悲しめるし、楽しい時は思い切り楽しめる。普段、物事を俯瞰するクセがあるから、舞台の上で感情的になった自分に出会えると、ちょっと安心します。
── 10代から大人の世界でお仕事をされて落ち着いているからこそ、お芝居で熱中できることは、中山さんの軸になっているのかもしれませんね。
中山 そうですね。自分の可能性を知ることができる大事な時間です。

── 音楽活動やイベントも精力的に活動されています。仕事を引き受けるにあたり、大切にしている基準はありますか?
中山 ひとりで決めるわけではないですが、楽しそうと思えるかどうかは第一にあります。初めてご一緒する方だったり、未知数だけど面白くなりそうだと感じて飛び込むことが多いので、積極的に挑戦できる環境のお仕事はありがたいですね。
── 前事務所から独立して、仕事への向き合い方は変わりましたか?
中山 以前は表現することに集中すればよかったけど、今は作品以外のことにも目を向けるようになりました。予算やスタッフのことも含めて、みんなが幸せになれる形になっているかどうかは意識しています。
── 表現者であると同時に、プロデューサーの視点も持つようになりましたか?
中山 プロデュースという感覚ではないです。でも、会社の判断を待つ時間がなくなったぶん、自分で判断して動けるフットワークの軽さは生まれました。
── その変化を前向きに楽しめていますか?
中山 はい! 去年は、福島県国見町の第28回義経まつりに参加させていただいたのがすごく楽しかったです。馬に乗って町を練り歩く義経公行列は、僕にとって忘れられない経験になりました。これからも、新しい出会いや挑戦があればどんどん飛び込んでいきたいです。

中山優馬(なかやま・ゆうま)
1994年1月13日、大阪府生まれ。2008年、主演ドラマ『バッテリー』で俳優デビュー。以降、ドラマ、映画、舞台を中心に幅広く活躍する。近年の主な出演作に、舞台『星降る夜に出掛けよう』『血の婚礼』『あゝ同期の桜』『スイートホームビターホーム』『破果 パグァ』などがある。今秋に主演舞台『蛙昇天』の出演を控える。音楽活動にも力を入れており、「ReTRY」「SPARK」を配信リリース。

「第三舞台2026」『パレイドリア』
鴻上尚史を中心に80年代の小劇場ブームを牽引し、2011年『深呼吸する惑星』で解散公演を行った劇団「第三舞台」が、「第三舞台2026」として再結集。物語は大学時代、児童ボランティアサークルで子ども向けの芝居を作っていた仲間たちが、ある出来事をきっかけに突然離れ離れになり、それから42年後、認知症と診断された乾が「もう一度、あの芝居をやろう」と仲間たちに呼びかけるところから始まる。選挙への再挑戦を目指す香川、人と距離を置いて生きる広渡、亡き夫との思い出を抱えて暮らす芝山。乾の息子・輝一郎や、香川の娘・美咲、児童館職員の江口、SEの萩原も巻き込まれ、それぞれの止まっていた時間が少しずつ動き始める。戸惑いや葛藤を抱えながら再び集まった彼らは、かつての仲間との絆、そして忘れかけていた自分自身と向き合っていく。作・演出は鴻上尚史。出演は大高洋夫、小須田康人、長野里美、山下裕子ほか。さらに、実力派若手俳優たちが脇を固める。
<東京公演>2026年8月9日(日)~30日(日) 紀伊國屋ホール
<大阪公演>2026年9月4日(金)~6日(日) サンケイホールブリーゼ
<新潟公演>2026年9月19日(土) 新潟県民会館 大ホール
<愛媛公演>2026年9月23日(水) 新居浜市市民文化センター 大ホール
<北九州公演>2026年9月26日(土)・27日(日)J:COM北九州芸術劇場 大ホール
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