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2025.11.09

【第6回】

「今は恋愛の仕方がわからない」携帯を執拗にチェックする彼氏と別れた美女のその後

生き方や恋愛の価値観が変わりつつある現在、大人の女性たちはどんな恋愛をしているのか、大人の女性たちは何を求めているのかを、奥渋谷のバー「BAR BOSSA」のマスターにして作家の林 伸次さんが、バーテン仕込みの絶妙な話術で深掘りします。

BY :

文/木村千鶴
CREDIT :

取材/林 伸次 写真/田中駿伍(MAETTICO) 編集/岸澤美希(LEON.JP)

生き方や恋愛の価値観が変わりつつある現在。恋愛も結婚もしなくたっていい中で、大人の女性たちはどんな恋愛をしているのか。そして、大人の女性たちは何を求めているのか。

本連載「林 伸次のLove la Bossa」では、奥渋谷のバー「BAR BOSSA」のマスターにして作家の林 伸次さんが、バーテン仕込みの絶妙な話術で大人の女性の本音を深掘りします。第6回のゲストは、前回(こちら)に続いて奈美恵さん(40代)です。

前編では、大学生まで身の回りに男性がほぼいない環境で育ったこと、初めて付き合った彼と浮気相手の彼が鉢合わせてしまったアクシデントなどを聞かせてもらいました。後編ではヨリを戻した初彼とのその後からお話しいただきます。
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新たに好きになった人は彼の友達で……

── 前編では、初めての彼氏とヨリを戻してから7年ほど付き合ったとのことでしたが、彼とはどうなったんですか。

「私、お酒を飲むのがとても好きなんですが、たまたま彼の地元のお友達も交えてみんなで飲む機会があって、そこからみんなで飲んだり遊んだりすることが増えました。そのうちに、えっと、本当に狭いコミュニティでやってしまう私が良くないんですが、彼の友達を好きになってしまって」

── あれれ、そうですか。ちょっとまた彼とは違うタイプだったのかな。でもそれは彼にとっては辛い話ですよね。
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「そうですよね、申し訳なかったです。それで新しく好きになった人が、それまで付き合ってた彼に『ごめん、俺、奈美恵のことが好きだ。付き合いたい』と言ったらしく、それを聞いて『あいつがそう言うなら、俺は奈美恵のことはキッパリと諦める。友人としてあいつはいいやつだし、リスペクトしているから』と言って別れることになりました」

── すごい。彼、本当に人格者だ。結婚まで考えていた人を、しかも友達にもって行かれちゃったのにそう言えるなんて、すごいです。

「そうですよね。うちの母は最初の彼が一番好きだったので、新しい彼に対して『友達の彼女を奪った男なんて!』という感情を持ってしまったようで、この彼だけが唯一親に反対された人でした」

── うーん。確かに僕も状況的にえーって思いました。お付き合いしてどうでした?
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携帯をチェックされるのでデータはすべて消していました

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「まぁもう大人だったので、親にあまり歓迎されないままでも付き合っていたんですが、彼はとても嫉妬深かったんですよ。携帯をチェックされたり、家の近くで待ち伏せされたりもしたので、それは怖く感じました。だから携帯のデータは男性も女性も関係なくすべて消していました」

── メッセージも何もかも全部? それは彼と付き合い始めて、彼がチェックするって分かってからですか?

「そうです。基本全部消します」
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── それ、嫌じゃないですか? 楽しい話とか思い出に残したいこととかだって、携帯には入っていますよね。

「彼に詮索される方が嫌だったから」

── 「携帯見ないで!」とは言わなかったんですか?

「言ったんですけど、心配だから見ているんだと言ってやめなかったですね。だから全部消してあるよと伝え、粘り強く消し続けていたら見なくなりましたけど。たぶん彼は浮気とかを疑っていたんでしょうね」

── まぁでもそれが心配になるのって、自分が略奪のような状態で付き合ったからですよね。そういう行為で「私は彼に大切に思われている」と感じるのでしょうか。
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「思わなかったですし、この人大丈夫かな、精神病んじゃわないかな、って心配になりました」

── その彼と別れるきっかけは?

「そういうのも積み重なってかな。30歳を過ぎて結婚はどうするのかと考えた時に、親が反対している人と結婚していいのか、とも思いましたし。ただ彼も別れた後は友達に戻って、今は他の人と結婚しているそうですよ」
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今は恋愛の仕方がわかりません

── そうでしたか。奈美恵さんもその後すぐに恋人ができましたか?

「いえ、その後なんだか母親といることがすごく楽しくなっちゃって、一卵性双生児のように毎日一緒に寝て、休日も、夕飯も飲みに行く時もふたりで一緒に過ごしていました」

── 仲良し母娘っていますよね。うちのお客さんにもいます。

「ええ、ただそうして楽しく過ごしていたところ、母の具合が急に悪くなり、検査をしたら末期がんだったことがわかりました。私は休職して看病していたんですが、2カ月くらいで急逝してしまったんです」

── それはお辛かったですね。でももしかすると、何だかお母さんといるのが楽しいという気持ちは、お母さんと最後の時間を過ごすために用意されていたことだったのかもしれません。
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「うん、そうかもしれない。私もそうだったのかなって思います。その後すぐパンデミックもあって、家から出ない時間が多くなり、人と会う機会も減りましたよね。

そして私は母と一緒に寝ていた部屋で寝られなくなってしまい、1年近くリビングのソファで寝ていました。周囲の方が気にかけてくださったおかげで今はもちろん大丈夫ですが、それから何だか恋愛が全然できなくなっちゃって」

── ショックから立ち直るのに時間がかかってしまったんですね。そして、しばらく恋愛していないと「デートってどうするんだっけ? どうやって誘ったりするんだっけ」となってしまうとも聞きますよ。

「そう、本当にその通りです。ご紹介いただいた方と一応お付き合いしてみたこともありましたが、それこそ恋愛の仕方がわからないと言いますか、週末飲みに行くぐらいで、あまり発展もしないまま終わりました」
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── じゃあ以前のような「会いたい会いたい!」って気持ちはなくなってた?

「なくなっちゃいましたね。それでもまた好きになれる人が見つかるといいなとは思っていますが、恋愛も恋愛感情もご無沙汰してしまって、どうすればいいのか忘れてしまいました(笑)」

── でもお酒が好きだったら、飲みの席で男性が言い寄ってきたりすることもありますよね。そうすると「キタキタ」とは思いませんか?
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「思いますけど、しれっと受け流す感じになっちゃいます。そもそも周囲の男性たちは既婚者ばかりになってますから、まずそうはならないし」

── 既婚者はありえない?

「はい、何の得もありませんから。この時代、どこで何があるかわからないので昔よりかなり慎重になりますよね」

── 確かにそれはそうです! でも奈美恵さんならきっと、これから素敵な男性に出会えるはずです。今日はお嬢様育ちの方の恋愛の仕方が聞けた、貴重な時間でした。ありがとうございました!

【林さんから〆のひと言】

ずっと女子校のお嬢様ってこんな恋愛なんですね。世の中まだまだ知らないことだらけでした。これからもお幸せにお過ごしください。
林 伸次(はやし・しんじ) bar bossa ワイングラスのむこう側

■ bar bossa(バール ボッサ)

ワインを中心に手料理のおいしいおつまみや季節のチーズなどを取り揃えたバー。 BGMは静かなボサノヴァ。
住所/東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
営業時間/月〜土 19:00〜24:00
定休日/日・祝
問い合わせ/TEL 03-5458-4185

● 林 伸次(はやし・しんじ)

1969年徳島県生まれ。早稲田大学中退。レコード屋、ブラジル料理屋、バー勤務を経て、1997年渋谷に「bar bossa」をオープン。2001年、ネット上でBOSSA RECORDSを開業。選曲CD、CDライナー執筆等多数。cakesで連載中のエッセイ「ワイングラスのむこう側」が大人気となりバーのマスターと作家の二足のわらじ生活に。小説『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる』(幻冬舎)、『世界はひとりの、一度きりの人生の集まりにすぎない。』(‎幻冬舎)、『恋愛は時代遅れだというけれど、それでも今日も悩みはつきない』(Pヴァイン)、最新刊は『30歳になってもお互い独身だったら結婚しようか』(三笠書房)。

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