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2017.10.11

いまが旬! 「牡蠣にはシャブリ」論争に決着をつけよ!

牡蠣に合うのはワインか、日本酒か、それとも?? 牡蠣のエキスパートに話を聞いた。

CREDIT :

文/中島 由貴 写真/松井 康一郎

VINOBLE
“牡蠣にはシャブリ”とは世界中で言われている定説。このテッパンマリアージュに、“いや、ワインより日本酒だ!”と一石を投じたのが、名マンガ『美味しんぼ』の山岡士郎。16巻の「洋食屋の苦悩」で彼は、ワインは日本酒より多くの有機酸塩を含んでいるため、魚介類の生臭さを強める。だから「生の貝に合うワインはありません」と全否定しています。
 
「牡蠣にはワインなの? 日本酒なの? 本当のところ何が一番合うのか聞いてきて!」と編集長より命を受け、牡蠣のエキスパートである“牡蠣の人”として知られる、サトウ ゲンさんに話を伺いました。

サトウ ゲンさん、“生牡蠣とシャブリ”って、本当のところどうですか?

「まず前提として、牡蠣の美味しさは次の5つの味わいに分類されます。
 
・ 海の味
・ 牡蠣の味
・ クリーミーさ(グリコーゲン)
・ ひだや皮膚、貝柱の食感
・ 貝柱の甘み
 
白ワインやシャンパンに合うとされてきた牡蠣とは、日本で好まれている太った真牡蠣や岩牡蠣ではありません。ヨーロッパで好まれているヒラガキは“牡蠣の味”と“海の味”が強いためワインに合うのですが…」
 
なるほど、では私たちが海のミルクだと称する身が大きくてクリーミーなものと、ヨーローパで広まっているものとは全く違うということでしょうか?

「2000年以上も前からヨーロッパで好まれてきたヒラガキ『ブロン』は、1970年頃に病気にかかり全滅しています。唯一その病気に打ち勝つことができた日本の真牡蠣(マガキ)がその後フランスでその後養殖されるようになったんです。真牡蠣は強い品種なんで養殖しやすいんですね。アメリカで人気の小さくクリーミーな『クマモト』も真牡蠣ではありませんが、もともとは日本の牡蠣です。最新の牡蠣養殖では5つのテクスチャーの配合次第で、どんな味わいの牡蠣もコントロールすることが可能なので、海外ではわざと「シュッと(痩せ)」させたものを出荷しているんです」
 
ということは、“シュッと”した生牡蠣とシャブリが最強のペアリングということ?

「いろいろな牡蠣をいろいろな酒で試してはどうでしょう。牡蠣(縦軸):酒(横軸)の何通りもある組み合わせを試してマイベストを探していただきたいですね。まずは、この3軒はいかがでしょうか? ワインなら『ヴィノーブル』。こちらは瀬戸内海の無人島で獲れた牡蠣を取り扱っています。日本酒なら、貝とぬる燗の専門店『潮音(しおん)』。『ドランカー』なら、1種類の牡蠣でいろいろな酒を楽しめるのでオススメですよ。どちらのお店にもお酒と牡蠣、両方に詳しい専門家がいますので安心です」
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「牡蠣にはやはりワインです。」
「VINOBLE」 濱岡 靖示さん

そうきっぱりと答えてくれたのが「VINOBLE(ヴィノーブル)」の濱岡さん。「ただ、生牡蠣にシャブリ“だけ”というのはナンセンスですよね。うちでは毎日最低6種類の牡蠣を広島の大黒神島から直送しているんですが、どれも味がはっきりと違います。ワインはボトルなら300種類、グラスでも12種類以上は取り揃えているので、それぞれ牡蠣に合わせたワインをおすすめしています」

肉が薄く、旨みが強く、海の味が濃い大黒神島産には、ワインは酸が穏やかである程度ボデイもある方が良いとのこと。例えば、リースリングや自然派のミュスカデ、サヴニエール(ともに仏ロワールの白ワイン)などがおすすめだそう。

 
「リースリングはドイツの代表品種ですが、お店では『Tatomer(タトーマー )』をお出ししています。カリフォルニアのサンタバーバラ産というのがポイント。この地にリースリングは珍しいんです。本来はすっきりした味わいですが、、こちらのものはある程度ボデイもあり秀逸。『La Desiree(ラ・デジレ)』は、自然派のワインで丸みを帯びた酸と旨味が特徴です」
VINOBLE オイスタープレート
取材した日は、岩牡蠣ヴァージンオイスター、先端、岩牡蠣、大黒神島、広島、かき小町の6種類の牡蠣がラインアップ。。おまかせオイスタープレート 6ピースプレート 2,600円(税込) 。赤ワインで有名なボルドー地方でも、オイスターバーには牡蠣にぴったりな白ワインを多数置いているそう。
ソムリエでもある濱岡さんは、“ヘンタイ”な提案をすることもあるんだとか。「牡蠣って日によって味が違うんです。貝柱の甘み、ひだの食感、内臓のクリーミーさ、海水の塩味のバランスが今日最も良いのは『大黒神島』です。お酒は、ソーテルヌをぜひ。甘口のデザートワインです。これは“ヘンタイなマリアージュ”ですね(笑)」と言うことで失礼して、まず牡蠣を一口でつるんと。優しい塩味が広がったと思った直後、噛むほどにほんのりとしたクリーミーさを感じ、食べた後は海水のしょっぱさと鼻に抜ける潮の香りが口の中いっぱいに広がります。そこに、蜂蜜のように甘〜いソーテルヌをくぐらせると、あら不思議!
ワインの甘さで牡蠣の旨みがどんどん際立ち、いつまでも口の中で甘みと塩味の“美味しい〜”が続きます。
 
「スイカに塩をかけて食べたりしますよね。その感覚でしょうか(笑)」まさにそれです!そのほかには、牡蠣→ソーセージ(肉)→赤ワインの順で味わうボルドー地方の食べ方もおすすめとのこと。牡蠣のミネラルがソーセージの油でリセットされて、それを赤ワインで流すと、また次の牡蠣が一層美味しく食べられるのですって。へぇ〜!感服いたしました。
VINOBLE 窒素充填式ワインサーバー
抜栓した後も酸素に触れることのない窒素充填式ワインサーバー。こちらのグラスワインは、ベストコンディションのものをいただける。
「一般的にワインで牡蠣の生臭みを消すと言われていますが、生活汚染の影響のない大黒神島産は生臭さが一切ないのでワインで消す必要がないんです。ワインのクエン酸と牡蠣のミネラルが互いに旨みを高め合うので、お店では最高の相性を味わっていただけます」
濱岡 靖示さん
濱岡 靖示さん/元は西麻布にてフレンチ・イタリアンのレストランとして営業していたヴィノーブルを溜池山王に移転し、オイスター&ワインのお店として2016年1月に再開。以前から生牡蠣が大好きだったと言う濱岡さんは、一部の高級店に卸しているという大黒神島で牡蠣養殖をされている会社の社長さんとの出会いがきっかけで牡蠣の道へ。「自然と牡蠣好きが集まるお店になりました。」の言葉通り、お店には連日食通たちが集う。
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◆ オイスター&ワイン Vinoble(ヴィノーブル)

住所/東京都港区赤坂2−11−13 コモン赤坂 1F
お問い合わせ/☎03-6441-3135
営業時間/月~金 18:00〜26:00(L.O.)、土  18:00〜23:00 (L.O.)
定休日/日曜、祝日

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「生のお魚や貝には日本酒かな」
「潮音」山本 怜さん

穏やかな表情で話すのは貝とぬる燗の専門店、「潮音(しおん)」のオーナー山本さん。「鮮魚や生の牡蠣など繊細な味の食材は、やはり同じ日本の土壌で育ったお酒との相性が抜群です。日本酒には殺菌効果もありますし。個人的にはぬる燗が一番美味しいかな、と」
潮音
この日は、北海道仙鳳趾(せんぽうし)の牡蠣を入荷(時価)。青木酒造 鶴齢(かくれい)もおすすめとのこと。
なるほど、ではなぜぬる燗がおすすめなのでしょう?
「そもそも、ぬる燗が好きなんです。それに、冷たい牡蠣で冷えた口をあったかいぬる燗でぐびっと流すと、とても気持ちがいい。真冬に露天風呂に入ると気持ちいでしょ?」と話してくれたのは、『群馬泉 舞風』。群馬県オリジナル酒造好適米「舞風」と群馬県オリジナル酵母、群馬KAZE酵母を使用した清酒が、山本さんのお気に入り。
 
「常温も美味しいですが、ぬる燗ならこれ。しかも、どんな魚介にもオールマイティに合います」。飲んでみると、さわやかな酸味を感じる常温に比べて、40度程度のぬる燗は酸味が柔らかくなり、旨みが上品に際立って感じられます。日本酒が苦手な方でもかなり飲みやすい!
 
「お店では、安全と美味しいがイコールで繋がっている牡蠣しか取り扱っていません。北海道仙鳳趾(せんぽうし)で獲れた牡蠣は、深海で育っているので身が引き締まっていてプリプリ。味が濃くクリーミーなんです。『舞風』とかなり合います」。確かに、生臭さがなく旨みを存分に引き出してくれます。生牡蠣にぬる燗、ぜひお試しあれ!
山本 怜さん
山本 怜さん/子供の頃から魚も海も好きだったと話す山本さん、実は、(海に面していない)埼玉の出身。魚屋勤務や千葉の勝浦の海では漁師も経験したというだけあって、確かな目利きの力の持ち主。その後、温度によって味が変化する日本酒の美味しさに感銘を受け、ぬる燗と貝に特化した「潮音」をスタート。有名店と同等のクオリティーで、かつ7割ほどの値段で貝や鮮魚をいただけるというのもこちらのお店の魅力。
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◆ 貝とぬる燗 潮音

住所/東京都千代田区神田松永町17-3 B1F
お問い合わせ/☎080-5514-1239 
営業時間/月~土 18:00~23:30
定休日/日曜

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「好みですね。ワイン以外なら、スコッチもおすすめですよ。」
「DRUNKARD」 山川 真さん

その時期の最高に美味しい牡蠣を1種類のみ仕入れているビストロバー「ドランカー」。元は35年間西麻布で営業していたバーを、ビルの老朽化にともない恵比寿へ移転。代表の山川さんがサトウさんに出会ったことがきっかけとなり、2年前から牡蠣をメニューに加えたそう。「今は季節の変わり目なので実入りがあまりよくないのが一般的ですが、北海道の厚岸(あっけし)町の『まるえもん』という品種は一年を通して品質が高いのが特徴。困った時にはこちらにお願いしています」。一口サイズほどの小ぶりながらも、たっぷり身の詰まった『まるえもん』は、「お出汁がきいたお吸い物のような、あっさりとした旨みが強く楽しめます」。
オイスターシューター
メニューには載っていないので、オイスターシューターを試したい方は気軽にお尋ねを!
ワインなら50種類、ハードリカーなら100本ほどそろえているこちらで、早速、牡蠣に合うお酒をお願いしたところ、「スコットランドのアイラ島で作られているスコッチ、BOWMORE(ボウモア)の12年なんていかがですか? アイラ島は3000人ほどしかいない小さな島で、牡蠣も名産なんです」。
 
バーテンダーとして働いていた時に、スコッチの奥深さに気づいたと言う山川さんは、8年前に単身スコットランドへ。「向かう機内で読んだのが、牡蠣に『ボウモア』を垂らして食べる方法。現地で食べた思い出の味です。このスコッチにうちの牡蠣も合わせたいな、と思って」。これは、生牡蠣の殻をショットがわりにして飲んでいたことから始まったとされる、通称オイスターシューターという食べ方。牡蠣のまた違う魅力を堪能できる番外編として、ぜひ一度はご賞味くださいませ。
サンサンブル
1種類の牡蠣で、3通り味わえる『アンサンブル』も一押しメニュー。はじめに、フレッシュなものをそのまま。次に新鮮なトマトとオリーブ、エシャロット刻んだソースを。最後に、バターを使ったブルギニヨンを炙って。付け合わせのバケットや自家製ブリオッシュに挟んで食べても◎。アンサンブル 1,000円(税込)
山川 真さん
山川 真さん/西麻布時代からドランカーに携わり、オーナーとなった今もお店に立つ山川さん。バーテンダーの腕も料理人としても高く、フレンチ、イタリアン、スペインを中心としたヨーロッパ料理や、看板メニューのモヒートも評判。牡蠣の価格を抑えている理由は、「安くていいものだからパクパク食べて!」という山川さんの熱い想いゆえ。
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◆ DRUNKARD(ドランカー)

住所/東京都渋谷区恵比寿2-11-6 GranDuo恵比寿Ⅱ 1F
お問い合わせ/☎03-5422-8911
営業時間/18:00〜27:00(L.O.26:00)、月〜金 11:45〜15:00(14:30 L.O)、土・日・祝 15:00〜18:00   
定休日/無休

● サトウ ゲン

2003年に世界初となる脳トレゲームを開発・リリース。その資金を元に世界を旅に。ヨーロッパで現地の人に言われた「これ日本の牡蠣なんだよ」の言葉をきっかけに、世界で消費されている 8 割が日本の種類を元に現地で生産されている事実を知り、日本で「世界一うまい牡蠣」を創るプロジェクトを開始。日本オイスター協会創設者、牡蠣の人、カキペディア創刊者/編集長など多数の肩書きを持ち、現在は牡蠣養殖技術の向上、海洋保護改善などの環境デザインに尽力。

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