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  • 犬山「せいめん 未さく」の「塩らぁめん」は白眉の一品。長く忘れがたいラーメンだった

2026.09.27

【第106回】 犬山「せいめん 未さく」

犬山「せいめん 未さく」の「塩らぁめん」は白眉の一品。長く忘れがたいラーメンだった

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

BY :

文/山本益博
CREDIT :

写真/山本益博 編集/森本 泉(Web LEON)

日本初の料理評論家、山本益博さんが、B級グルメから一流の料理へと変貌を遂げつつある街のラーメンに注目し、自ら実食しつつラーメンの最前線をリポートする連載。今回は愛知県犬山市の「せいめん 未さく」を訪れました。

犬山「せいめん 未さく」の「塩らぁめん」は白眉の一品。長く忘れがたいラーメンだった
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スープと麺と具が三位一体、しばし陶然となった塩らぁめん

先日、つくばの「ひしお」へ一緒に出かけた岐阜の仲間が「犬山にも益博さんに食べていただきたいラーメンがあります。醤油も塩もどちらもおすすめです」と誘ってくれた。ヨーロッパまで一緒にでかけてレストランを食べ回る友達だけに、いつも信用度の高い中京の情報を教えてくださる。これは行かなくてはならないと、約半年後の9月、朝10時半の店の明けはなに着くために、杉並の自宅を5時半に出て、待ち合わせた岐阜からクルマで連れて行っていただいた。


伺ったのは「せいめん 未さく」。食べたいメニューはいろいろあったが、連食は努めて避けるタチなので、券売機から「塩らぁめん」を選んだ。まずはスープをひと口。鶏の出汁が効いていて、味わいが麗しい。塩味は、私が常々言うように、美味しいスープでは出しゃばらない。調味料としての役割を全うしている。二口三口いただき、麺を食べると、これが小麦の味が優しく伝わってきて、スープと実によく調和する。次第に、塩味は消えてゆき、スープと麺と具が三位一体、しばし陶然となった。

 「せいめん 未さく」の塩らぁめん。

▲ 「せいめん 未さく」の塩らぁめん。

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だが、さらに進むと、チャーシューなどの具材からでた塩分が加わり、最後飲み干すあたりのスープには多少塩味が残った。


「醤油らぁめん」を選んだ仲間も、醤油味が少し残ったという。


でも、私がいただいた「塩らぁめん」は、今までいただいた中では白眉の一品で、長く忘れがたいラーメンであることは間違いない。


お店の佇まいも、カウンター席8席にテーブル席ひとつ、明るく清潔感に溢れていて、ラーメンを美味しくいただける環境が揃っている。


今まで、私が訪ねた「ラーメン店十傑」の一軒と言ってよい。


ただ、ラーメンの具材の出所が、スープの名古屋コーチンはじめ、あちこちに書かれて、張り紙がしてある。生産者へのリスペクトであることはわかるが、ラーメンを食べる客にしてみれば、実はそんなことはどうでもよい。選び抜いた食材から考え抜いた調理をしているかどうかは、食べればたちどころにわかるのだ。

 「せいめん 未さく」の醤油らぁめん。

▲ 「せいめん 未さく」の醤油らぁめん。

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ごくありふれた食材から、小さな奇跡を生み出すことが料理人の使命

料理人が優れた食材を探し出すことは、料理を作り出す第一歩で、ごくごく当たり前のことではなかろうか。食材探しの旅を続けて、いい食材を使っているから美味しい料理が出来るんですと言わんばかりの料理を、30年ほど前のフランス料理から、いやというほど食べてきた。

優れた料理人は、「食材探し」の旅を続けながら、一つ上のステージで「自分探し」の旅に出ている。「未さく」の井上達也さんは、すでに「未さく」でしか表現出来ないラーメンに挑んでいて、「食材探し」を改めて表示する必要はないのではなかろうか。

この「自分探し」の旅を続けながら、優れた料理人たちは、さらに上の「宝探し」に挑んでいるのである。

 「せいめん 未さく」の店主・井上達也さん(左)と「梨のつけめん」の説明書き。

▲ 「せいめん 未さく」の店主・井上達也さん(左)と「梨のつけめん」の説明書き。

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フランス料理の巨匠と呼ばれたジョエル・ロブションが、かつて私にこう言った。


「私を有名にした料理は何だったと思う? キャビアの入ったオマール海老のジュレでもトリュフのタルトでもない、子羊のローストの脇に添えたじゃがいものピューレなんだ。

1980年代、じゃがいもの名品がなかった。私は、ある品評会でラットという種類のじゃがいもで極めてシルキーな舌触りのじゃがいもを見つけた。すぐに、その生産者に会いに出かけ、彼のラットを買い占めた。それで作ったピューレがお客様から絶賛されたんだ」

ロブションのレストランのメニューには、食材の生産者の名前は一切明記されていない。ロブションは続けてこう言った。


「ごくありふれた食材から、小さな奇跡を生み出すこと。これが料理人の使命なんだよ」


井上さん、名古屋コーチンをはじめとする、選び尽くした食材が鶏や小麦粉や野菜なのだから「ごくありふれた」と言い切って、「小さな奇跡」のラーメンに挑んでいただきたいと切に思う。

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せいめん 未さく

SNS/X、Instagram

山本益博 Web LEON ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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