2026.04.12
【第97回】 池袋「そば~じゅ」後編
池袋「そば~じゅ」でいただいた幻の「オマール海老ラーメン」の衝撃
日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。
BY :
- 文/山本益博
- CREDIT :
写真/山本益博 編集/森本 泉(Web LEON)
日本初の料理評論家、山本益博さんが、B級グルメから一流の料理へと変貌を遂げつつある街のラーメンに注目し、自ら実食リポートする連載です。今回は、池袋の人気店「そば~じゅ」のラーメンについて。その後編です(前編はこちら)。

斉須シェフからいただいた「遊びに学べ、学びを遊べ」
池袋にあるラーメン専門店「そば~じゅ」の店主・堀越しげきさんは元フランス料理の料理人である。 ラーメン店を開くにあたって強く影響を受けたのが、昨年2月に店を閉じた東京・三田のフランス料理店「コート・ドール」のオーナーシェフ斉須政雄シェフの「引き算の美学」を纏った料理だったという。
前回に続き、ご主人の堀越さんに「そば~じゅ」について、さらに突っ込むと「フランス修業時代に、あだ名でソヴァージュと呼ばれたこともありました」と白状された。

▲ 池袋「そば~じゅ」店主の堀越しげきさん。
「遊びに学べ、学びを遊べ」は斉須シェフからいただいた言葉だという。
「お店では、月替わりで限定麵を出していますが、無駄に尖らせたりもしています。その中で、気づきがあったりもしますね。気に入ったひと皿ができあがれば、さらに磨いて無駄をなくし、翌年、素材の美味しさを活かせるように引き算して前回より美味しくなるように心がけています。
特に、ラーメン屋さんになってからが斉須シェフを意識したり、コートドールの料理の凄さを改めて感じました。試作の限定麵やラーメンを作る時に、なぜそれが必要か、入れなくとも成立するのなら不要じゃないか、常に自問自答している言葉です」(堀越さん)
限定麺で作っていただいた「オマール海老のラーメン」
そこで、私から注文を出させていただいた。以前、目黒の「ブレイクビーツ」で「オマール海老のラーメン」をいただき、その話を堀越さんに伝えたことがあったので、「オマール海老のラーメン、作っていただけませんか?」とお願いしてみた。すると、限定麵で作ってみましょう、と快諾をいただいた。

▲ オマール海老のラーメン、「淡麗系ジュドオマールのスープ」とでも言おうか。
しばらく経ってから「オマール海老のラーメンできました」と連絡をいただいた。期待に胸躍らせて出かけてゆくと、私の予想を遙かに超えて、オマール海老が香り、オマールのうまみが存分に生かされた一杯だった。オマール海老のラーメンの脇には、オマール海老のブイヨン(スープ)の中にワンタンが浮かべた一杯まであった。
「素晴らしく美味しかったです!」と食後の感想を伝えると、
「オマール海老はメインにも脇役にもなる、とても存在感のある食材ですよね。その素材を惜しみなく使って、贅沢にあしらったスープは、本当に美味しいと、作っていて思いました。
身と爪では、食感も違うし甘みやうま味も違います。ですから、一尾まるごと使うと、贅沢この上ない一皿に仕上がります。だからこそ、火入れから出汁の取り方、香りのピークの見極め、どれも大切な仕事です」と堀越さん。

▲ オマール海老のスープの中にワンタンを浮かべた、こちらは「オマール海老のブイヨンドゥワンタン」。
「素材を殺さないように仕上げる。難しいからこそやりがいがあります。益博さんに作ってほしいと言われて初めて作りましたが、料理ではなくラーメンでどう作るかをいったん横に置いて、まずは料理としてオマールを見直しました。
僕のスープはごまかしに効かない淡麗系のスープで、そこへオマール海老を合わせるのは、とても難しいところがあります。
もっともっと磨きをかけて、『そば~じゅ』のスペシャリテまで持って行きたいと思ってます。素材を殺さない、シンプルに活かして、仕上げる。『コートドール』の斉須シェフのように作れたら最高です」(堀越さん)

▲ 筆者(左)と堀越さん。

● 山本益博(やまもと・ますひろ)
1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

山本益博さんのYouTubeが好評稼働中!
日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
YouTube/MASUHIROのうまいのなんの!
●「山本益博のラーメン革命!」、これまでの記事はこちらから!

















