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2026.03.29

【第96回】 池袋「そばーじゅ」前編

池袋「そば~じゅ」。元フレンチのシェフによる「引き算で調和させた“つくりすぎない”ラーメン」とは?

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

BY :

文/山本益博
CREDIT :

写真/山本益博 編集/森本 泉(Web LEON)

日本初の料理評論家、山本益博さんが、B級グルメから一流の料理へと変貌を遂げつつある街のラーメンに注目し、自ら実食リポートする連載です。今回は、池袋の人気店「そば~じゅ」のラーメンについて。

そば~じゅ 池袋 ラーメン革命! 山本益博 LEON
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「余白の美」を感じさせる「そば~じゅ」の冷やし中華に興味を抱いた

池袋に「そば~じゅ」という店名のラーメン専門店がある。


「そば~じゅ」はフランス語で「野性、粗野」と言った意味合いがある。昨年夏、初めて出かけた時「冷やし中華2025」というラーメンを食べた。麵と具が味も色合いもよく、美味しくいただいた。一番気に入ったのは盛り付けで、白い皿全面を使うのではなく、片方に寄せていたが、窮屈な感じはせず、かえって「余白の美」を感じさせた。

そば~じゅ 池袋 ラーメン革命! 山本益博 LEON

▲ 池袋「そば~じゅ」の「冷やし中華2025」。

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毎年フランスで食べ歩く中、15年ほど前、ノルマンディーの「ラ・グルヌイエール」というレストランのアレクサンドル・ゴーティエシェフが料理を皿の片側に盛り付け、フランス料理の左右均衡にバランスよく並べる伝統を崩しているのにびっくりしたことがあった。そのゴーティエシェフ、今では皿をわざわざ割って焼いた器に盛り付けたりしている。


これを「ラーメンの世界」で初めて出会ったものだから、店主に興味を抱いて、いろいろと伺うようになった。

そば~じゅ 池袋 ラーメン革命! 山本益博 LEON

▲ 「そば~じゅ」ご主人の堀越しげきさん。

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フランス料理からラーメンへ。自分のレシピのラーメンを作りたかった

店主は堀越しげきさん、48歳。18歳の時食べたフランス料理に興味を持ち始め、その後、単身でパリに旅し「ミッシェル・ロスタン」で食事した際、自分の人生はフレンチだと思い、フランス料理の世界に飛び込んだのだという。


そうして、最終的には自分の店を持つことができたのだが、経営難に陥り、知人からトマトラーメンのFCの話をいただいたのが、ラーメン屋さんになるきっかけだったとのこと。

そば~じゅ 池袋 ラーメン革命! 山本益博 LEON

▲ 厨房に立つ堀越さん。

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目指すのは無駄のない最高の引き算の料理

自分のレシピのラーメンを作りたいと思い、試行錯誤を重ねてたどり着いたのが、化学調味料を使わない「鶏塩」と「鶏醤油」だったという。「自分のレシピで作ったラーメンを食べた時、とても感動したことをいまでもよく覚えています」。

実は、初めて店を訪れた時、店の突き当たりの棚に気になる一冊の本が並べられていた。斉須政雄「十皿の料理」である。昨年2月に店を閉じた東京・三田のフランス料理店「コート・ドール」のオーナーシェフの名著である。

そば~じゅ 池袋 ラーメン革命! 山本益博 LEON

▲ 「そば~じゅ」店内の棚にならべられた本。左端が「十皿の料理」。

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「斉須シェフとは面識がそんなにあったわけではなく、何度もお店で食べたわけではありませんが、斉須シェフの料理はシンプルで、素材がとても生きています。口の中に入れると、その香りや素材の美味しさが広がります。赤ピーマンのムースやにんじんのピューレ、ほかにもたくさんありますが、とにかく本当にシンプルで美味しい、無駄のない最高の引き算の料理だと思っています」

「料理は作りすぎないこと、足すより引く方が難しい。僕の作るラーメンにも凄く当てはまることが多い言葉です」


そば~じゅ 池袋 ラーメン革命! 山本益博 LEON

▲ 「そば~じゅ」 の塩らぁめんは引き算の美学。

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「そば~じゅのラーメンは鶏のスープが生きるようトッピングの具が邪魔しない、足さずに引き算で調和する。鶏スープと麵が引き立つよう、ラーメンという器を借りて表現しています」


ご本人に確かめたところ、店名の由来は、「中華そば」の「そば」と「jus de volaille(鶏肉の汁) 」の「jus(じゅ=汁)」とのこと。「野性」や「粗野」ではなかった。

そば~じゅ 池袋 ラーメン革命! 山本益博 LEON

▲ 筆者(左)と堀越さん。

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山本益博 Web LEON ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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