2021.05.14

男の憧れ。永瀬正敏がいつまでもカッコいい理由

90年代から映画俳優として活躍を続け、すでに100本以上に出演してきた永瀬正敏さん。先日取材させていただいて、彼のブレないカッコよさの秘密に少し触れたような気がしました。新しい主演映画『名も無い日』では弟を亡くした写真家を演じます。これがまたいい映画なんです。

CREDIT :

文/森本 泉(LEON.JP)

(c)2021『名も無い日』製作委員会 配給:イオンエンターテインメント、Zzyzx Studio
こんにちは、LEON.JPのモリモトです。4月に公開した特集「令和版 いいオトコ論」で俳優の永瀬正敏さんを取材させていただきました(記事はこちら)。

永瀬さんと言えば、我々オヤジ世代にとってはまさに憧れの存在。ジム・ジャームッシュ監督の『ミステリー・トレイン』に出演、からの『私立探偵 濱マイク』シリーズ、さらにはあのキョンキョンと電撃結婚というのも、もはや笑ってしまうぐらいカッコ良かった。当時は「anan」で好きな男ランキング1位にも選ばれてましたっけ。

テレビ全盛の90年代に、ほとんどテレビに出ることなく、それでも大人気で、その後もずっと映画俳優として活躍し、さらには写真家としても評価されるなど、常に目が離せない存在であり続けた永瀬さん。
今回の取材、全身ヨウジヤマモトの彼がスタジオに現れた時、そのオーラに一瞬たじろぎましたが、いざインタビューが始まると、永瀬さんは意外なほどフランクで、おだやかな雰囲気を纏ったかた。ていねいに言葉を選び、時折笑みを浮かべながら、我々の質問にも率直に答えてくれました。

特に印象的だったのが、こだわりの塊のよう見える永瀬さんのスタイルが、それを守ろうと周囲を固めているわけではなく、彼自身は常に開放的で、入ってくるものをすんなりと受け入れてきた結果だったという点。その間口の広さこそが人を呼び、出会いを育んで、それが今の永瀬スタイルを作っているというのはとても新鮮な驚きでした。
常識や先入観に捕らわれることなくフラットに開かれた永瀬正敏という存在。だからこそ彼はさまざまな監督の求めに応じて自在にその姿かたちを変え、役者として輝ける。それでも変わらぬスタイルを感じさせるのは、その土台となる幹がよほどしっかり根を張っているから。まさに柳のような存在だなぁと思ったのでした。
(c)2021『名も無い日』製作委員会 配給:イオンエンターテインメント、Zzyzx Studio
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そんな永瀬さんの最新の映画が6月に公開される『名も無い日』。

監督の日比遊一さんは元々長年ニューヨークを中心に活動を続けてきた写真家であり、しかも今回の映画は監督自身の身に起こった実際のストーリーがベースの作品。写真を撮るという大きな共通点をもった監督と役者はいつも以上に深く感応し合うものがあったのではないでしょうか。

永瀬さん演じる達也は長年ニューヨークで写真家をしていましたが、ある日、弟(次男)の章人(オダギリジョー)の死を末弟の隆史(金子ノブアキ)から知らされ、急遽、生まれ育った故郷(愛知県熱田市)に戻ってきます。

亡くなった章人は東大卒の優秀な技術者でしたが、心を病んで長い間引きこもりを続けていました。孤独死で発見された章人には命日もありません。それがタイトルの「名も無い日」の意味。達也はカメラを手に過去の記憶を手繰るように街を巡り、家族や親せき、昔の仲間を訪ね、人々の想いを受け止めながら、弟の死の意味と向き合っていきます……。
主人公である写真家の目を通して、人は人生において何をどう「見る」べきか、その葛藤が静かに描かれます。セリフは少なめで、絵で見せることによって多くのことが語られます。

その絵の美しいこと。朝焼けの空が、祭りの電飾が、雨降るさびれた街並みが、なんとも哀しいぐらいに美しい。そしてまた映像を飾る岩代太郎氏の静かな音楽が心に沁みます。

しっとりしたヨーロッパ映画のような作品。映画好きの方にぜひ見ていただきたいです。

「名も無い日」

2021年6月11日全国公開
HP/https://www.namonaihi.com 

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