2019.04.10

ルエダと山梨からワインの原産地呼称について考えた。

ワインは大地の恵み、テロワールの産物だと言いますが、ではその原産地を商品名に冠する原産地呼称ってどんな意味をもつの? ルエダ(スペイン)と山梨の事例で考えてみます。

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文/秋山 都 

DO、DOC、DOCG 、GIってなんだかわかる?

LEON.JP食いしん坊担当の秋山 都です。
1日の大半を食べることを考えている私ですが、食べることと同じほど愛しているのは「飲むこと」。お酒、大好きです。といっても酒量は人なみ(よりちょっとだけ多いかな?)なので、できうるかぎり美味しいお酒を、好きな人と、好ましい環境で飲みたい。そのためには少し勉強も必要だと、ワインスクールに通っていたこともあります。
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ワインスクールで学ぶことは多々あり、そこでのスマートな身の処し方などは吉川慎二さんの連載「モテるワイン道入門」をご参照いただくとして、ワインを知るうえでまず大切なのは「ラベルを読むこと」だと教わりました。

ワインのラベルには造り手の名前やヴィンテージ(造られた年)、使われているブドウの品種などさまざま有用な情報が記されています。そしてその中でも大切なのが、今回のテーマ「原産地」です。
よくワインは大地の恵み、テロワールの産物といいますが、そのワインがどこで造られたのか、産地は大切な情報のひとつ。と言っても、フランス、イタリアなど国単位から、地方、村、そして畑の区画など高級ワインになるほど細かく記載されています。

で、原産地呼称。これはその原産地で造られ、一定の資格をクリアしたものだけが、その商品名の中に原産地を名乗れる、というもの。たとえばイタリアのエミリア・ロマーニャ州およびロンバルディア州の一部で作られるチーズだけが、「パルミジャーノ・レッジャーノ」と名乗れ、パルマ産の生ハムだけが「パルマハム」と名乗れます。もちろんチーズ・ハムなどの食品のみならず、ワインにもたくさん適用されているわけで。

冒頭のDO、DOC、DOCG、IGとはこれすべてワインの、各国におけるそれぞれの基準の原産地呼称を表す表現だったというわけなのです。
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さあ、そこでこのワイン、D.O.(スペインの原産地呼称)ルエダのワインです。つまりルエダという、スペイン内陸部のカスティーリャ・レオン州にあるワイン生産地産のワインというわけ。小石を多く含む土壌にブドウ畑が広がり、300軒ものワイナリーが点在するこのエリアにあって、ワインをもっとも特徴づけているのはベルデホという品種のブドウです。

このベルデホはハーブやフルーツなど複雑な香りをもつアロマティックなワインになり、D.O.ルエダのベルデホはスペインを代表する白ワインのひとつ。この日は、モダンスパニッシュで名高い「サンパウ」の料理とともに5種のD.O.ルエダのワインを楽しみ、いえ、もとい、学びました。
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ワインの解説をしてくれたのは「サンパウ」ソムリエの菊地貴行さん。
5種のワインを飲んでみて、ルエダのワインはフレッシュな酸が特徴的で、芳醇な香り、料理に合わせやすいものだと感じました。原産地呼称のワインって、消費者としては味わいのイメージが結びやすいのがメリットなのかな~なんてぼんやり思っていたら!
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山梨ワインシンポジウムにて、蛯原健介さん(明治学院大学法学部 グローバル法学科教授)による基調講演
数日後、タイミングよく勉強の機会をいただきました。「地理的表示『山梨』ワインシンポジウム2019」です。

実はこの「山梨」もGIYamanashi(GI=Geographical Indicationの略)と呼ばれる原産地呼称のひとつ。日本にもあったのですね。たとえば兵庫県西宮市の「灘五郷」のお酒なんかもそのひとつだとか。

そしてこの地理的表示「山梨」は、使用するブドウの品種、ブレンドに条件を設定するだけではなく、テクニカルな要素(たとえばアルコール度数とか)にも一定の基準を設け、さらには「官能検査」も行われます。

「官能検査」といっても、ムフフなお話ではありません。たとえば「甲州を原料としたワインは、口中で穏やかな味わいを感じることができ、またドライなワインはフルーティーな柑橘系の酸味を有する。
マスカット・ベーリーAを原料としたワインは、鮮やかな赤色の色調を有し、甘さを連想させる香りとタンニンによる穏やかな渋みを有する」などと、一定のクオリティを担保する、というもの。

つまり地理的表示「山梨」のワインとは、しっかりとした身元で(産地)、きちんと育てられ(テクニカルな要素)、おまけに美人で性格もいい(官能要素)女性のような存在?(ちょっと違うか)
これから日本のワインも海外へ輸出されていく機会が増えていくと思いますが、そこにこの地理的表示「山梨」のワインは、ボルドー、ブルゴーニュ、そしてルエダ同様にひとつのブランドとなっていくでしょう。

タイミングよくD.O.ルエダのワインを味わい、そして地理的表示「山梨」の勉強ができたことで、ワインの原産地呼称に思いを馳せた数日間となりました。

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