2026.06.07
【試乗リポート】ちょい不良(ワル)なロールス・ロイス、ブラック・バッジにギャップ萌え
ロールス・ロイスといえば、運転手付きで後席に座る、クロームと木と革をふんだんに用いた超高級サルーンというイメージをお持ちかもしれないが、近年はダーク仕上げのちょい不良(ワル)仕様“ブラック・バッジ”が注目されている。ロールス初のBEVであるスペクター、初のSUVであるカリナンの2モデルをベースにした、ブラック・バッジを試してみた。
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画像/ROLLS-ROYCE MOTOR CARS 編集/森本 泉(Web LEON)
あの“フライング・レディ”をダーク仕様に

ブラック・バッジとは、2016年にシリーズ化されたロールス・ロイス(以下ロールス)のスペシャルモデルのこと。通称“フライング・レディ”と呼ばれるクローム仕上げのマスコット(スピリット・オブ・エクスタシー)やフロントグリルなどをダーク仕様とすることで従来のロールスに対する既成概念にとらわれない、新たな顧客へのアプローチを試みたチャレンジだった。
その狙いは的中し、ブラック・バッジの登場によってこの10年でユーザーの平均年齢の若返りが進んでいるという。

▲ ダーク仕上げになったマスコットのフライング・レディ。正式名称はスピリット・オブ・エクスタシー。
今回、最初に試乗したのが、ロールス初のBEV(電気自動車)であるスペクターをベースとしたブラック・バッジ。

▲ コーチドアは自動で開閉が可能。ドアのインナーパネルには星が輝いている。
エクステリアではスピリット・オブ・エクスタシーやフロントグリルをはじめ、ダブル「R」バッジ、ウインドウフレームやドアハンドル、そしてフロントからサイド、リアにかけてのアンダースポイラーもダーク仕上げとなっている。

▲ ルーフにも星が輝くキャビン空間。エアコンの吹き出し口などロールスの伝統を守りながらもデジタルの要素を融合している。
インテリアはブラックを基調としながら、ダッシュボードやシートにアクセントとしてレッドのレザーを配し、エネルギッシュな雰囲気を与えている。そしてメーターパネルはテーマカラーを、「ビビッド・グレロー」「ネオン・ナイツ」「シアン・ファイア」「ウルトラバイオレット」「シンセ・ウエーブ」の5つから選択できるようになっている。
ハイライトは夜空に見立てたブラックのルーフライナーやドアインナーパネルにLEDを散りばめて、大小異なる5500個以上の星を再現したもの。まさにプライベートなプラネタリウムであり、キャビン内にはラグジュアリィな時が流れる。
内外装だけでなくパワートレインも強化されており、ベースモデル比で最高出力は74PSアップの659PSに、最大トルクは175Nmプラスの1075Nmとなった。これはロールス史上最強のスペックだ。
ドライバーズカーとしてドライブを楽しめる

▲ 「インフィニティ・モード」をオンにすれば、ロールス史上最強の659PSを発揮。
アウタードアハンドルに手をかけるとドアが自動で開き、そして運転席に腰掛けブレーキペダルを踏み込むとドアが自動で閉まる機能を搭載している。クーペであってもショーファーの出自を忘れてはいない。
ステアリングコラムの右側には、伝統的なデザインを踏襲したコラムシフトタイプのシフトセレクターを配置している。そのセレクターレバーにまで丁寧にレザーが巻かれていることにもロールスを感じる。レンジを切り替えるごとにコクッコクッとアナログな操作感が手に伝わってくることも心地よい。
Dレンジに入れて走りだすと、とにかく静か。モーターやインバーターの音はまったく感じない。風切り音もロードノイズも23インチという大径タイヤを履いているにもかかわらず限りなく抑えられている。これまで試乗したBEVのなかでもっとも静粛性の高いモデルだと感じた。
高速道路を走行中、ステアリングに備わった無限大(∞)のマークが描かれたボタンを押してみる。するとメーター表示が切り替わり、加速が鋭くなる。「インフィニティ・モード」と呼ばれるもので、これを作動させることによりスロットルレスポンスが向上し、最高出力659PSを発揮することができるようになる。
ドライブの際して何もする必要がない“エフォートレス”を是とするロールスが、こうしたドライブモードを設けることはこれまでなかった事例だが、2ドアクーペであるスペクターのブラック・バッジにはよりドライバーズカーとしての性格を与えたかったという意図が感じられた。実際に運転して楽しめるモデルでもある。
まるで工芸品のような数々のディテール
そしてもう一台、ロールス初のラグジュアリーSUV「カリナン」のブラック・バッジにも試乗した。ベースとなるカリナンは2024年に仕様変更が行われ新型へとモデルチェンジしている。

▲ ホワイトのボディカラーとブラック仕上げの各パーツのコントラストが絶妙なブラック・バッジカリナン。
エクステリアでは、フロントグリルやスピリット・オブ・エクスタシーをはじめ、ドアハンドル、ウインドウフレームが、そしてリアまわりでもバンパーのアクセント、エグゾーストなどがブラック仕上げとなっている。

▲ ドアハンドル、ウインドウフレーム、サイドモールなどそのすべてが職人によってブラック仕上げされている。
ちなみにブラック仕上げの工程はドアハンドルひとつをとっても、まず全体を研磨して下地を作り、その上にブラックの塗料を4回塗り重ね、その後職人の手によって丁寧に磨き上げるという念の入れようだ。
またステンレス製のパーツはグロスブラックの艶と光沢を実現するために特別なクロム電解液で処理されているという。

▲ カーボン・ファイバーのシートを23枚組み合わせたインパネまわり。シートなどは竹を用いたテキスタイルに珍しいイエローのレザーを組み合わせる。
インテリアには竹を原料としたレーヨン生地の“デュアリティ・ツイル”を採用。インパネまわりは、織り目模様が強調されたカーボン・ファイバーのシートを23枚組み合わせることによってかたちづくられたもの。
各シートはラッカーを6度塗りした後に72時間かけて硬化させ、すべて手作業で鏡面仕上げされている。この工程には21日間を要するというから、いまの自動車製造のセオリーからいえば常軌を逸したさながら工芸品の世界の話である。
またスペクターと同様にルーフライナーやドアインナーパネルにLEDを散りばめられており、キャビン内には5500個を超える星が再現されている。
V12エンジンがもたらす揺らぎの心地よさ

▲ カリナンとしては最大の23インチホイールを装着。センターのRRマークはロールスの伝統にのっとり走行中も常に水平に保たれる。
エンジンは6.75ℓV型12気筒エンジンで最高出力はベース比で+29PSの600PS、最大トルクは+50Nmの900Nmにまで高められている。
BEVのスペクターが静かなのはいうまでもないが、V12エンジンを搭載するカリナンの静かさはまた別ものだ。
まったくの無音ではなく、始動するとエンジンの魂動がかすかに伝わってくる。しかしひとたび走りだせば、周囲の音や振動と渾然一体となり、エンジンとしての存在感は薄れていく。
アクセルペダルに力をこめた際のトルクの立ち上がりもBEVとは異なり、揺らぎのようなものが感じられる。それがシートを通じて体に伝わってくるのが心地よい。
カリナンとしては最大の23インチホイールを履いているが、それを少しも感じさせないロールス流の“マジック・カーペット・ライド”を実現している。
ブラック・バッジらしくスポーティに走りたい時には、コラムシフトにある「LOW」ボタンを押すとモードが切り替わる。アクセルペダルを90%以上踏み込むと変速スピードは約50%向上し、1700rpmから900Nmのトルクを発生。エキゾーストシステムからの音量も高まる。
ブラック・バッジは、その迫力あるワイルドなエクステリアから初対面の彼女には威圧的な印象を与えるかもしれない。しかし、その内部には都会の喧騒から隔絶された静謐な空間を内包している。
ツンデレではないけれど、さり気なく星が輝くキャビンに彼女をエスコートしたなら、そのギャップに癒やされるに違いない。

Rolls-Royce Black Badge Spectre
全長5490×全幅2015×全高1575mm
ホイールベース/3210mm
車重/2900kg
最高出力/485kW(659PS)
最大トルク/900Nm(スピリテッド・モード時/1075Nm)
バッテリー容量/102kWh
一充電航続可能距離(WLTP)/493-530km
0-100km/h加速/4.3秒
価格/5614万円~
Rolls-Royce Black Badge Cullinan
全長5355×全幅2000×全高1835mm
ホイールベース/3295mm
車重/2725kg
エンジン/V型12気筒DOHCツインターボ
総排気量/6750cc
最高出力/441kW(600PS)/5250-5750rpm
最大トルク/900Nm(91.8kgm)/1700-4000rpm
トランスミッション/8速AT
駆動方式/AWD
0-100km/h加速/5.2秒
価格/5415万4040円~

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