つまり、タイヤには目には見えない最新テクノロジーがゴムでできた黒い輪っかの中にたっぷり詰まっているのである。そこで今回は、今日のタイヤ事情とともに最新モデルをキャッチアップ。4カテゴリーに分けて、奥深きタイヤの魅力に触れてみよう。

昨今のコンフォートタイヤの傾向は、単に「乗り心地がいい」だけでなく+αが求められる。
02.クラシック
古いクルマを愛するひとはタイヤの入手に悩まされていたが、近頃うれしいニュースが!
03.オールラウンド
オンロードもオフロードもこなせるクルマがあるように、タイヤもあらゆる道に対応する。
04.ランフラット
欧米では「安全」と評価が高いのが、パンクしても走り続けられる新世代タイヤの存在だ。
タイヤの寿命は約3年という事実
つまり、タイヤはひとつのクルマ文化の象徴と言えるかもしれない。例えば、レストラン評価本であるミシュランのギド・ルージュ。フランス各地のレストランを掲載したガイドブックは、クルマでの遠出の促進というのが通説だ。
タイヤの消耗を早めて買い替えさせるのが、自動車の空気入りタイヤを初めて作った当時のミシュランの思惑だったと言われている。
タイヤは、ハガキ1枚ほどの接地面しかもたないが、クルマと地面を唯一つなげる部分だけに、実は走りに直結する重要なパーツと言える。
意外に見過ごされがちだが、クルマ好きにこそ気づいてほしいのは、タイヤは消耗品であることだ。山の上の三ツ星レストランまで何百キロも小旅行を繰り返さなくても、3年もすると、タイヤのゴムに弾性を与えている油分が揮発して硬くなってしまう。
すると路面のグリップが失われてスリップしやすくなる。そのため、トレッドパターンが摩耗していなくても、定期的な買い替えはマストである。
正しい買い方は、肉や魚と同じような“生鮮”製品という考え方と一緒であり、プロショップで、日光や外気にさらされていないものを選ぶことが正解。製造年月が側面に出ているので、できるだけ新しいものを選びたい。
一方でタイヤは、たわみやグリップによって個性が出るので実は楽しみも多い。違う銘柄にすると、同じクルマ? と驚くほど操縦性が変わるのは、読者の方も先刻ご承知ではないだろうか。そこがタイヤを買い替えるうえでの楽しさなのだ。
また最近は古いクルマ用のタイヤも充実してきて、文化への貢献度は以前より高くなっているかもしれない……。
Latest Tire Situation01コンフォート
今日の「コンフォート」は単にフワフワとした乗り心地を意味していない。走りも静粛性も高い次元で求められ欲張りなニーズに応える技術で作られている。
Bridgestone [ブリヂストン]
ブランドを徹底的に区分けし確固たる地位を確立

欲張りな人のための全方位的タイヤ
そこで大事なのはバランスの良さ。いま各社から発売されているコンフォートタイヤはそれを踏まえてブランドごとにハッキリと性格で分けられる。
国産タイヤメーカーの最大手ブリヂストンの場合は、シグネチャーブランド「レグノ」がコンフォートタイヤ部門を担う。
このレグノは、コンフォートで思い浮かぶあらゆる要素をカバーすることを目的とし、例えば“音”に関しては音響工学研究室と組んで、人間が心地良さを覚える音色までも追求しているというこだわりだ。
つまり、コンフォートを求めるなら音さえも制せなくては、というのが実情なのだ。

さらなる進化を遂げたレグノブランド:左●静かさや心地良い音色を追求したレグノは、まさに優雅な乗り心地を実現する唯一無二のブランド。近頃はミニバン用、軽自動車用も登場し、幅広い車種に対応する。/ブリヂストン(ブリヂストンお客様相談室) 右●レグノの特徴は路面のノイズを吸収するサイレントブロックと3Dノイズ抑制グルーブ。左右非対称パターンで応答性のいいハンドリングも実現する。
イタリア生まれのピレリも、スポーツタイヤのPゼロとブランドを統一して高いパフォーマンスを実現。両者は、快適性に加えて運動性能も追求している。
新しい時代のコンフォートタイヤは、欲張りなユーザーのために、全方位的に優れていることを意味しているのだ。

イタリア生まれの「ピレリPZero」:フェラーリF40のために開発されたモデルをベースに快適性も追求したモデル。スーパーカーやGTカーを劇的に心地良くしたい人はぜひ。/ピレリ(ピレリジャパン)
右● Yokohama Tire [ヨコハマ タイヤ]
ハイパワーに対応する「アドバンdB」:アドバンdBはハイパワー化が進むラグジュアリー車の運動性能も活かすことに成功。キレが良く安定感も◎。/ヨコハマタイヤ(横浜ゴムタイヤお客様相談室)
Latest Tire Situation02クラシック
MICHElIN [ミシュラン]
メーカーとの共同開発で絶大の信頼性を獲得

30年代のモデルまで新品が入手可能に
現代のタイヤではサイズが合わないことが多く、合っても、グリップ性能が高すぎてクルマへのダメージが懸念されることもあった。
そんな悩みを好転させてくれたのが、ミシュランが2015年に発表したクラシックタイヤのカタログだ。
なんと1930年代から70年代の終わりまで造られていたクルマをカバーするラインナップを誇り、しかも性能は現代の技術を採り入れつつ実際のクルマに合わせて最適化しているという。

自動車メーカーとの共同開発がウリ:左●空冷ポルシェに適合するパイロットエグザルトPE2。厳しいテストによるポルシェ承認のNマーキングで性能は保証される。/ミシュラン(日本ミシュランタイヤ) 右●非対称パターンや特殊コンパウンドによって、ノイズを抑えた高い静粛性を発揮するエグザルトPE2。ポルシェのために改めて開発されたこともオーナーには堪らない。
製造後30年経っている、日常の交通手段として使用されていない、技術的および文化的伝統の一部となっている……。クラシックカーを維持し続けるには相当な覚悟が必要だが、タイヤメーカーが協力するということは朗報だ。
さすが世界で最初に自動車用空気入りタイヤを作ったミシュランである。空冷エンジンの911しかり。昔のクルマが身近になったことは確実だ。

クラシックミニの安全性も確保:59年の発売以来ミニとともにあったダンロップ。10インチリム径のオリジナルミニ用タイヤを販売中。/ダンロップ(ダンロップお客様相談室)
右●古いクルマの持ち主は手に入れるべきミシュラン・クラシックタイヤ総合カタログ
ホームページでダウンロードできるのでぜひ。 www.michelin.co.jp/
Latest Tire Situation03オールラウンド
SUVでオンロードもオフロードも楽しむ人もいれば、スポーツカーで雪上を走ろうという人も。あらゆるドライブに対応しつつ、悪天候でも安全性を追求する。
Continental [コンチネンタル]
ドイツ生まれの質実剛健な佇まいがクルマ好きの魅了する


独コンチネンタルのオールラウンドタイヤ:17インチから23インチまで幅広いSUVに対応するオールラウンドモデル。耐摩耗性や静粛性なども◎。/コンチネンタル(コンチネンタルタイヤ・ジャパン)
右● Pirelli [ピレリ]
オフロードも走れる万能モデル:オンロードの快適性と高いオフロード性を両立したピレリ スコーピオン ヴェルデ オールシーズン。15インチから22インチまで揃い、縦方向の密度の高いサイピングが特徴だ。/ピレリ(ピレリ ジャパン)
高性能は高グリップと思うべからず
そこにこそタイヤ探しの楽しみがあるといってもいい。そして、タイヤを探すとなると、ついハンドリングや高速性能を、という話がメインになる。しかし、安全性なるキーワードもタイヤを選ぶうえでは重要だ。
走っていれば、いろいろな道に遭遇する。天候の変化だって安全運転をおびやかす可能性があり、そのためにタイヤメーカーは、乾いた路面と濡れた路面ともに安定して走れることを大切にしている。
これは基本的な考え方で、積雪路面や凍結路面も走れて高速もこなす。それをもって“高”性能とする考えもある。タイヤ選びにおいては大いに参考にしていただきたい。
Latest Tire Situation04ランフラット
パンクして空気圧ゼロになっても走り続けられるランフラット。70年代に登場した技術が世界的に広がっており、製品のバラエティもますます増えている。

ポテンザの走行性能はキープ:パンクしても80㎞/h以下で走れ高い耐久性能とノーマルタイヤに遜色ないウェット性能も発揮する。/ブリヂストン(ブリヂストンお客様相談室)
中● Continental [コンチネンタル]
6モデルも対応するのが魅力:コンチネンタルはサイズによって異なるものの、コンフォートからスポーツまで6モデルから選べる豊富さが魅力。/コンチネンタル(コンチネンタルタイヤ・ジャパン)
右● Dunlop [ダンロップ]
快適性を追求したランフラット:上級サルーンを意識して作られたSPスポーツマックス050ネオ。真円性の向上や、ブロック剛性など上級のバランス。/ダンロップ(ダンロップお客様相談室)
メリットはタイヤ交換時にトラブルに巻き込まれる可能性を排除したことで、クルマにとっても利点がある。スペアタイヤを搭載しないので荷室が広くなったり、車重を軽くすることにも寄与する。
ドイツ車でランフラットを装着するクルマが多いのは、本国での走行距離が長く、タイヤトラブルに遭遇する可能性が高いためだろう。日本でも高性能車を中心にこれから増えそうだ。転ばぬ先の杖といえるタイヤである。
文/小川フミオ
※本特集は2016年8月号で掲載した企画の抜粋です。













