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2025.10.12

初代から受け継がれる温故知新なIWC シャフハウゼン「インヂュニア」のデザインソースとは

初代から受け継がれる温故知新なIWCシャフハウゼン「インヂュニア」のデザインソースとは偉大なヘリテージに学び、それを現代に生かす。名門ブランドにとってそうした温故知新は必要不可欠といえるでしょう。IWCのインヂュニアもそのひとつ。とくに現行コレクションは70年代の名作に範を取り、モダンな感性と最新鋭の技術で磨きをかけます。そこに息づく「Form und Technik」という変わることないブランドのデザイン哲学を、同ブランドの技術・開発部門を統括するステファン・イーネン氏にその魅力を語ってもらいました。

CREDIT :

文/柴田 充 編集/津坂泰輔(LEON)

IWCシャフハウゼンを代表するモデルのひとつ「インヂュニア」。そこに息づく「Form und Technik」という変わることないブランドのデザイン哲学を、同ブランドの技術・開発部門を統括するステファン・イーネン氏にその魅力を語ってもらいました。

技術者のためのプロフェッショナルツール

初代『インヂュニア』は1955年に登場しました。その名は技術者を意味し、高対磁性機構を装備しており、エンジニアや物理学者、医師などに向けて開発されたことに由来しています。

専門職のためのプロフェッショナルツールという位置づけもあり、オーソドックスなラウンドケースにデザインもシンプルを極めました。やがて1960年代末、新たに耐衝撃性を備えるため、堅牢なケースへの刷新が求められました。その打診を受けたのが時計デザインの巨匠ジェラルド・ジェンタ。

かくして1976年に「インヂュニアSL」が誕生しました。現行コレクションがモチーフとしたのはまさにこの傑作なのです。
初代から受け継がれる温故知新なIWC「インヂュニア」のデザインソースとは
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デザインと印象を一新させたジェラルド・ジェンタ

ジェンタが描いた「インヂュニアSL」のスケッチは、前身とは大きく異なり、ケースとの一体型ブレスレットにねじ込み式ベゼル、グリッドの幾何学パターンの文字盤を備えたスポーティなデザインでした。
当時、高級時計に打ち立てていた独自のスタイルはこれまでの『インヂュニア』に大胆な革新をもたらしたのです。
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そしてジェンタがデザインした「インヂュニアSL」の誕生から、約50年の時を経て登場した現行『インヂュニア』。ジェンタの大胆なデザインコードを受け継ぎつつ、ディテール部分に徹底的に拘って再設計されました。
『インヂュニア・オートマティック 40』 自動巻き、18KRGケース(40㎜)×ブレスレット。10気圧防水。735万9000円/IWC
上下のラグ間隔を短くするとともに、ノーズ式から可動式ミドルリンクに変えることで手首へのフィット感を向上。ベゼルは、オリジナルが5つの凹みによるねじ込み式だったのに対し、5本のビスで留めることで定位置に配します。さらにリュウズガードも滑らかにケースに添い、外部からの衝撃から守るとともに手首への干渉も抑えました。
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『インヂュニア・オートマティック 40』 自動巻き、18KRGケース(40㎜)×ブレスレット。10気圧防水。735万9000円/IWC
▲ 『インヂュニア・オートマティック 40』 自動巻き、18KRGケース(40㎜)×ブレスレット。10気圧防水。735万9000円/IWC
『インヂュニア・オートマティック 35』 自動巻き、18KRGケース(35.1㎜)×ブレスレット。10気圧防水。628万6500円/IWC
▲ 『インヂュニア・オートマティック 35』 自動巻き、18KRGケース(35.1㎜)×ブレスレット。10気圧防水。628万6500円/IWC
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人間工学に基づいた装着感へのこだわり

美しく洗練されたデザインに加え、そこに求めたのは装着性です。ケース自体をわずかに湾曲させるとともに、ブレスレットはバックルにかけてシェイプし、コマの長さを縮めてよりしなやかな動きを実現。新開発のミドルリンク採用で手首への心地よいフィット感をもたらします。

ここには人間工学に基づき、これまで多くのブレスレットモデルを手がけてきたIWCの経験値と技術が存分に注がれています。現在35㎜、40㎜、41㎜、42㎜という多彩なサイズを展開しながら、それぞれのサイズに合わせた最適値のブレスレットを装備することで装着感を損なうことはありません。

またブラックセラミックのモデルはサテン、サンドブラスト、ポリッシュという異なる仕上げの組み合わせが、洗練された美しさを際立たせています。このような細部にまでこだわった視覚的な演出も、快適な装着感にも貢献していると言えるでしょう。
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インヂュニア・オートマティック 42』 自動巻き、セラミックケース(42㎜)×ブレスレット。10気圧防水。308万円/IWC
インヂュニア・オートマティック 42』 自動巻き、セラミックケース(42㎜)×ブレスレット。10気圧防水。308万円/IWC
▲ 『インヂュニア・オートマティック 42』 自動巻き、セラミックケース(42㎜)×ブレスレット。10気圧防水。308万円/IWC
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初のコンプリが象徴するデザイン哲学

2023年に魅力を一新したインヂュニアは、それにふさわしい最新鋭のムーブメントを搭載しています。「インヂュニア・オートマティック40」が内蔵する自社キャリバー32111は、シリコン製ひげゼンマイや巻き上げ機構にセラミック製パーツを用い、耐久性を向上するとともに、パワーリザーブも従来の42時間から約120時間へと大幅にアップしました。伝統ともいえる対磁性も4万A/mを備えます。

さらに注目は複雑機構を搭載した「インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41」です。左右のサブダイアルで曜日とうるう年、日付を表示し、下方にカレンダーとムーンフェイズを設けます。月齢表示は577.5年でわずか1日の誤差という高精度に加え、すべての表示は複雑なコレクターの操作ではなく、リュウズ一つで容易に調整できます。また秒針を省くことで厚みを抑え、装着感も損ないません。

この永久カレンダーは伝説の時計師クルト・クラウスが発明したブランドを代表する複雑機構であり、巨匠ジェンタの流れを汲むデザインと融合することで、まさにフォルムと技術というIWCのデザイン哲学を象徴するのです。
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映画『F1®/エフワン  『IW388309-パイロット・ウォッチ・パフォーマンス・クロノグラフ 41』 自動巻き、18KRGケース(41㎜)、ラバーストラップ(「EasX-CHANGE」システム採用)。10気圧防水。410万8500円/IWC
▲ 『インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41』 自動巻き、SSケース(41.6㎜)×ブレスレット。10気圧防水。585万2000円/IWC
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ステファン・イーネン[技術・開発部門責任者]

IWCシャフハウゼンの技術開発部門を統括するR&D責任者であり、同社の革新を支える頭脳のひとり。ドイツ出身で、1997年に時計師としてのマスター資格を取得後、2002年にIWCへ入社。以降、自社製ムーブメントの開発を中心に活躍し、2006年にはR&D部門の責任者に抜擢されました。彼の哲学は「複雑なものをシンプルにする」こと。クロノグラフキャリバー89360をはじめ、3日巻き自動巻きキャリバー32000系や高精度ムーンフェイズなど、技術とデザインの融合を追求。セラミックやチタンなど新素材の導入にも尽力し、IWCの精度と美しさを支えています。

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