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2021.01.16

大人が若者に対して言うべきこと、やるべきことってなんだろう?

日本一発信力のあるバーのマスター、林 伸次さんが上梓した話題の新刊『大人の条件』から、オヤジさんにもぜひ読んでいただきたい、いくつかの章をご紹介します。第4回は「おじさんがやるべきこと」。

CREDIT :

文/林 伸次 写真/トヨダリョウ(林さん)

(c)shutterstock

■第4回

おじさんがやるべきこと 

日本一発信力のあるバーのマスターにして、LEON.JPでは「美人はスーパーカーである」を連載中の作家・林 伸次さんが新刊『大人の条件  さまよえるオトナたちへ』(産業編集センター刊)を上梓しました。今どきの大人の条件って何だろう? というテーマを、一見優し気に、その実、意外に辛辣な“林節”で書き連ねており、オヤジさんも必読の書となっております。今回の特集「大人の“カッコいい”を取り戻せ」にも通じる話が満載なので、今回は特別に本の中から一部をご紹介します。第4回は「おじさんがやるべきこと」。

おじさんを、おじさんという理由で気持ち悪く感じること

ある日、カウンターに座った若い女性二人組が、こんなことを言いました。

「五十代のおじさんの上司が、夏になったらTシャツになるんです。そのTシャツから乳首が透けて見えるのが気持ち悪いんです」

男性の方、落ち込みませんか? 僕はおもいっきり落ち込みました。もう絶対に白いTシャツは着ない、乳首がぽっつりなる薄手のシャツも着ない、って心に誓いました。

ちなみにそういうときは、「男性の乳首って何歳辺りから気持ち悪く思われるんだろう」って考えることにしています。赤ちゃんの乳首って、すごく可愛いですよね。五歳のちびっこわんぱく坊主の乳首、やっぱり可愛いです。十八歳の男子高校生、うーん、そんなに気持ち悪くないですね。三十代の男性、そうかあ、人によってはちょっと気持ち悪いです。五十代以上の男性は、ごめんなさい、まず気持ち悪いですね。

それですごく気になって、「他におじさんで気持ち悪いって感じるのって何かありますか?」ってその二人に聞いてみました。

「私の投稿の全部に『いいね』を押すおじさんが気持ち悪い」だそうです。ええ? ちょっとまた落ち込みますよね。「いいね」も気持ち悪いんですか? 逆にめったに「いいね」なんて押さない人が、すごく珍しく「いいね」を押してくれると嬉しいそうです。

それは僕もなんとなくわかります。僕が知っているカッコいいおじさんたちが何人かいまして、彼らめったに「いいね」なんてしないんです。でも、僕がちょっといい記事が書けたと思えたときに、「いいね」してくれたりするとすごく嬉しいんです。ついでに彼女たち、「『いいね』押すくらいなら、ちゃんとシェアしろ」だそうです。確かに仰る通りですね。

「他には?」って聞いたら、「おじさんのコメントが気持ち悪い」だそうで、これは僕、予想できました。若い人同士で仲良くコメントしあっている中に、おじさんのコメントを発見すると、僕の方まで胸が痛くなってきます。

この「おじさんが、おじさんという理由で気持ち悪い現象」は、cakesでも何度か書いていますが、満員電車で体をくっつけなくてはならない場合、老若男女全員が「より年齢の高い男性」と体がくっつくのが不快で、「より年齢の低い女性」とくっつくのは問題ない、という調査結果が示している、どうしようもない事実です。
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おじさんにもできることはあるはず

では、僕たちおじさんにはもう価値がないのでしょうか。

営業中にこんな電話がかかってくることがありまして、「今度、彼女が誕生日なんですけど、そちらで何かバースデーサービスみたいなのはありますか?」ってものです。うち、妻がそういうサービス嫌いなんですね。「そんなのお店に任せないで自分で考えろ」って言うんです。それで「すいません、やってません」って答えると、「そうですか。じゃあ別のお店をあたります」って言われるんです。

あるいは最近、洋服屋でシャツを一枚買っただけで、店員の方が袋を持って、お店の出口までついてきてくれますよね。「うわあ、過剰サービス」とは思うのですが、なんかどのお店もやり始めると「やるのが当たり前」になってしまってます。お店側が過剰なサービスをすることによって、今、お客様の方が「私たちはちやほやされて当然」みたいな風潮になり始めています。

それに対して、「林さん、『それは違うよ、お客様は神様ではないよ』って原稿をお願いします」っていう依頼が最近増えてきているんですね。それは僕みたいな飲食業の人間が勇気を持って言わなければいけないことだと思うんですけど、僕だけじゃなくおじさんたちみんなで、「コーヒー一杯でずっといちゃダメだよ」みたいなこととか、洋服屋で「取り置きし過ぎは迷惑だよ」とか言いませんか? 若い人たちに、口うるさいと思われてもいいから、言っていった方がいいと思うんです。

おじさんこそがやるべきことってあると思うんです。他にも、「若くて才能がある人」を紹介して、引っ張り上げることとか。

以前、坂本龍一さんがツイッターで、僕の友人が経営している「雨と休日」というCD店のことを紹介したことがあったんです。もちろん坂本龍一さんにはフォロワーがたくさんいますから、そのツイートは店の宣伝にすごく効果があったと思います。

ミュージシャンでも作家でも、若くて才能がある人を紹介する人としない人とはっきりわかれます。自分が持っているメディア、影響力を使って、「若くて才能がある人を紹介する、彼らを引っ張り上げる」。おじさんだからできることかもしれません。

四十歳をこえてしまったあなた、そろそろ若い人に煙たがられ始めてませんか? あなたは若い人を引き上げていますか? 若い人に常識を教えることと、若い人を引っ張り上げること。おじさんのみなさん、やってみませんか?

● 林 伸次 (はやし・しんじ)

1969年徳島県生まれ。早稲田大学中退。レコード屋、ブラジル料理屋、バー勤務を経て、1997年渋谷に「bar bossa」をオープン。2001年、ネット上でBOSSA RECORDSを開業。選曲CD、CD ライナー執筆等多数。cakesで連載中のエッセー「ワイングラスのむこう側」が大人気となりバーのマスターと作家の二足のわらじ生活に。近著に小説『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる』(幻冬舎)、『なぜ、あの飲食店にお客が集まるのか』(旭屋出版)など。最新刊はcakesの連載から大人論を抜粋してまとめた『大人の条件』(産業編集センター)。

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