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2022.11.26

ワールドカップの決勝を決勝進出国で観戦する旅。12月18日、私はいったいどこにいるのだろうか?

連日、FIFAワールドカップ・カタール大会で熱戦が繰り広げられている。何が起こるか分からないサッカーの祭典。もしも欧州勢のいずれかが決勝に進出した場合、筆者はその地で優勝争いを観る予定だ。出場は32チーム。頂点を競うカードがどこになるのか、気になって仕方がない。

CREDIT :

文/大石智子

サッカー ワールドカップ  LEON.JP
▲ 2014年ブラジル大会でドイツが優勝した瞬間のパブリックビューイング。

行き先が決まっていない、勝者に身をまかす旅

11月初旬、筆者はFIFAワールドカップ・カタール大会決勝に備え、バルセロナ行きのチケットを購入した。バルセロナをハブとして、12月18日に行われる決勝を決勝国で観戦するためだ。12月13日〜14日(欧州時間)に行われる準決勝はバルセロナで観戦。決勝国が決まった時点で、その国へ飛ぶチケットを買う。

1954年以降、17大会連続でヨーロッパのいずれかの国は決勝に進んでいる。今年もその可能性は大きく、ヨーロッパのどこかの都市にいれば、決勝国まで旅するのはさほど難しくない。

もしもアルゼンチン対ブラジルという南米頂上決戦となったらどうするか? スペインにとどまり、バスクのバルかどこかで観戦しよう。日本が決勝に進んだ場合は、いっそ帰国を早めて日本に戻ろうと思う。
2014年のブラジル大会から、ワールドカップの決勝を決勝国で観戦する旅は始まった。もともと夏を欧州3カ国で過ごす予定でいて、7月13日に行われる決勝当日はスペインにいるつもりだった。「スペインが決勝に進んだら、現地の友人と観戦できたら楽しいだろうな」くらいの気持ちで、予定は宙ぶらりんにしていた。

そうしたらなんと、前大会王者のスペインはグループステージで敗退。2連敗して6月18日には早くも敗退が決まったのだ。当時、とり急ぎ決勝前日パリ着のチケットを取っていた。決勝はドイツ対アルゼンチン。カード明細を見返すと7月11日にパリ発ベルリン行きのチケットを購入している。どうやら直前に閃いたようだ。
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ベルリンで歓喜の渦を体感した2014年

決勝当日の朝9時にベルリンに着くと、もう国民の祝日のようだった。ベルリンにも友人がいたので、友人とどこのパブリックビューイングで観ようか相談をした。最も大きな会場となるブランデンブルク門に行ってみると、街中の人が集まっているような大賑わい。あちこちの露店でビールが飛ぶように売れていて、ビールの量とトイレの数が合わないと慄いた。

あまりの人だかりと画面の遠さにメイン会場は避け、ほどよいサイズだった「Kulturbrauerei(クルトゥアブラウエライ)」の会場に向かった。するとそこには大勢のアルゼンチン人。友人には申し訳ないが、実はアルゼンチンを応援していたのでうれしかった。比率でいうと全体の1割くらいだったけれどチャントが響き、試合前の熱気は負けていなかった。
写真をたどると、ここでちゃっかり美味しそうなホットドッグを買っているではないか。試合直前にはメルケル前首相のスピーチがあり、試合が始まるとドイツとアルゼンチンの応援が白熱。前半から互いにビッグチャンスはあったが決まりきらず、その度に両国のため息と安堵が入り混じる。見応え満点だ。そして延長戦にもつれる大接戦の末、ドイツが1-0でアルゼンチンを制した。
試合終了の瞬間、人生で最も歓喜が集結する空気を吸った。東西ドイツ統一後、初の優勝。その日は明け方5時頃まで勝利を祝う人々の声が通りから聞こえていた。

続いて興味深かったのが翌々日に放送された凱旋帰国のテレビ中継だ。ドイツ代表を乗せたルフトハンザの特別機が市街上空を飛ぶところも中継され、メルセデスの黒い立派なバスでパレード。東西ドイツ統一のシンボルであるブランデンブルク門での祝賀イベントには40万人が詰めかけたという。

筆者はドイツ東部ドレスデンに移動していたのですべてテレビで観ただけだったが、熱狂は十分伝わった。そして思った。2018年大会も決勝狙いでヨーロッパに向かおうと。
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クロアチアの熱狂にしびれた2018年

2018年ロシア大会では、準決勝のクロアチア対イングランドをポーランドの古都クラクフで観戦。すでにポーランドはグループステージで敗退していたが、街には準決勝を放映するビアホールやバーがいくらでもあった。
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▲ イングランド対クロアチアを見守るポーランドのみなさん。
私が準決勝を見た広いビアホールでは、明らかにみんなクロアチアを応援していて、自分と共通していた。延長戦に突入する激闘の末、2-1でクロアチアが史上初の決勝に進出。フランス対クロアチアというヨーロッパ対決となったのでどちらへも飛べたが、迷わずクロアチア・ザグレブ行きのチケットを取った。この時は知人に「フランスが勝つからパリに行った方がいいよ」と何度も言われたが、そういう話ではないのだ。

決勝当日となる7月15日、ザグレブ行きの朝便は母国を応援するために帰省するポーランド在住クロアチア人で賑わっていた。すでにユニフォームを着て搭乗する人もちらほらいて気合満点だ。
街は誇りに満ちていた。国民はひとり一着もっているものなのか、ほぼ全員がクロアチアのシンボルである紅白市松模様のシャツを着ていて目がチカチカする。犬も銅像も市松模様を纏う。観やすいパブリックビューイングを探って歩いていると、ボールを蹴りながら歩く少年に股抜きをされたりもした。4人全員がモドリッチのユニフォームを着た家族がハンバーガーで腹ごしらえする姿もあった。

広場では試合前から大合唱が始まり、その歌を聴いていたら、人口約400万人の小国の大躍進に感動がとまらない。ちなみに彼らが歌っていたのはクロアチア代表の応援歌となる“Lijepa li si”や“Srce Vatreno”という曲で、これらをYouTubeで検索するとなかなか熱い映像が出てくる。
いよいよ決勝戦が始まると、英雄たちへの声援は最高潮に。前半に同点ゴールが決まったあたりには夢が溢れ、しかし後半に3-1で突き放されると祈るムードに。結果、フランスがクロアチアを4-2で破り世界一の座についた。

クロアチアは負けたが、ザグレブに悲壮感はなかった。むしろ勇者を讃える空気で、試合後も大合唱は続いていた。
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驚いたのが、決勝翌日にさっそく帰国した選手たちのパレードが5時間以上も続いたことだ。3試合連続延長戦という死闘続きから決勝に挑み、試合終了から24時間も経っていない。それなのに空港から伸びる田舎道をゆっくり走り、沿道に詰めかけた人々の祝福に応える。どこまでもタフだ。やがてバスの上に立って発煙筒を焚きながら進む様子は『マッドマックス』。やばい奴らを国民が待っている。

メインイベントが行われる広場には10時間以上待っていたファンもたくさんいた。ようやくクロアチア代表が到着すると選手たちは笑顔で挨拶。最後までふり絞るものが半端ない。イベントの熱狂はクロアチアが優勝したと錯覚するほどだった。盛り上がりは夜更けまで続き、終わる気がしなかった。人々は市松模様の服でずっと歌っていたし躍っていた。
クロアチアを去る前夜、「この2日間で一生分の市松模様を見たな。明日からもう見ないんだ……」と思っていたら、翌朝現れたUberの運転手さんのシャツも市松模様。昨日のパレードと同じ田舎道を通り抜ける道中、クロアチアに来て本当によかったと思った。
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今年の決勝観戦はパブかバルか、それともパブリックビューイングか?

2022年12月18日、私はいったいどこにいるのだろうか? 大会前から、世界中でどの国が王者になるか様々な予想がたてられている。そのなかで目にとまったのは、EAスポーツ社の人気サッカーゲーム「FIFA23」による予想だ。テクノロジーを駆使したこのゲームのワールドカップ予想は、なんと2010年以降3大会連続で的中しているという。

気になる今年は、「決勝はアルゼンチン対ブラジルでアルゼンチンが優勝」と予想している。南米対決! しかし、その場合はどちらかが2位通過の必要がある。予想は当てにしないが、正直、観てみたい試合だ。

欧州勢が決勝に進んだ場合、どの都市で観るかも決めなければ。スペインならバルセロナ、イングランドならマンチェスターやリヴァプールなどの地方都市を想定。フランスならマルセイユもいい。オランダならアムステルダムかロッテルダム。史上初となる冬の開催なので、都市と見方によってはかなり寒そうだ。
実のところ、スペインかポルトガルあたりで観られたらよいなという気持ちはある。人生で一度は行ってみたいウェールズの奮闘も気になっている。

うれしい番狂わせも起こり、連日、目が離せない。やがてベスト8が決まった頃、旅の行き先はうっすら見えてくる。

何が起こるか未知数な残り23日間。でも考えてみたら4年後の世界も自分もどうなるか分からないし、こんな旅と抱き合わせたワールドカップ観戦も今年が最後かもしれない。千載一遇と思って、その時いる場所と試合を存分に楽しみたい。

まずは東京で日本代表の応援だ。この欧州の旅プランを滅茶苦茶にしてほしい。12月10日以降、日本にいないことを後悔したい。
サッカー ワールドカップ  LEON.JP  大石智子

● 大石智子(おおいし・ともこ)

出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、毎月海外に渡航。スペインと南米に行く頻度が高い。柴犬好き。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。

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