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  • 盛岡冷麺の名店は本当に美味しいのか? 盛岡、そして東京の店を訪ねた

2026.09.13

【第105回】 盛岡「冷麺」と東京「冷麺」

盛岡冷麺の名店は本当に美味しいのか? 盛岡、そして東京の店を訪ねた

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

BY :

文/山本益博
CREDIT :

写真/山本益博 編集/森本 泉(Web LEON)

日本初の料理評論家、山本益博さんが、B級グルメから一流の料理へと変貌を遂げつつある街のラーメンに注目し、自ら実食しつつラーメンの最前線をリポートする連載。今回は本場の盛岡冷麺を求めて盛岡「もりしげ」、蒲田「食道園」ほかを訪ねました。

盛岡冷麺の名店は本当に美味しいのか? 山本益博 ラーメン革命! WebLEON
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盛岡冷麺の元祖「食道園」の流れをくむ蒲田「食道園」を訪れたけれど……

いまから30年ほど前、週刊誌の連載で、盛岡の「平壌冷麺」を取り上げた。その時の記事が次のようなものだった。


「いつの頃からか、盛岡は冷麺の本場と言われるようになった。その元祖といえるのが『食道園』である。ここの看板には“平壌冷麺”とある。この店の初代が平壌近くに出身で、故郷をなつかしんで作りはじめたものだという。奇しくも、平壌と盛岡はほぼ北緯三十九度と、同じ緯度にある。

創業当初は焼肉と冷麺の二種のメニューのみだったとのこと。カルビはかなり甘めの味付けで、ここではすきやきのように溶いた玉子につけて食べる。冷麺は、現在メニューに<特辛、辛、普通、別辛>の四種あり、初回のおすすめは、やはり普通だろうか。麺は小麦粉と片栗粉を練ったもので、その腰の強さは当代随一だろう。噛み応えが十分だが、喉の通りはすこぶるスムーズ、この麺がたっぷりと横たわる脇に、カクテキ、甘酢のキュウリ、茹で玉子などが添えてある。スープの味は平壌と同じく甘めとのことだが、シンプルを極めた、王道をゆく冷麺といってよい」

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昨夏、今年こそは盛岡へ出かけ、本場の「冷麺」を食べてこようと考え、まず手始めに、盛岡の「食道園」で働いていた人が開いたという蒲田の「食道園」へ出かけた。ところが、営業時間内であるにもかかわらず、店はすでに「CLOSE」の看板。出鼻をくじかれた感じで、仕方なく東京の「冷麺」に的を絞って食べ歩いた。その記事が昨年の連載82回「真夏の冷麺」である。

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▲ 蒲田の「食道園」。

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盛岡「もりしげ」でいただいたのは、「冷麺」はこうでなくっちゃ! という一杯

今回、新幹線で盛岡駅に着き、駅前にでると「焼肉冷麺  盛楼閣」の看板が目に入る。「盛岡」と「冷麺」が直結している人は、つい足が向いてしまうだろう。私もそのひとり、目的地はここではないのだが、悔いが残ってはいけないので、食べてみることにする。


「やはり」というか、期待はしてなかったのだが、私が目指す「冷麺」とは大違い。冷麺のスープが、まるでできていない。というか、薄味なのではなく、次から次へと注文がきて、味が薄まってしまっていると思わざるを得ない。1500円という、とても立派な値段である。

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▲ 「盛楼閣」の冷麺。

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今回、わざわざやってきて目指すは、盛岡駅の隣の駅、仙北駅の「もりしげ」である。


ローカル線に乗り、仙北駅で降りるが、当然タクシーが待っている駅ではなく、地図を頼りに歩き出す。歩くこと約20分、目的の店は街道の三角筋にたっていた。「冷麺」と看板にある。


店から焼肉の煙が吹き出している。店に入ると、客はなく、従業員が昼ご飯に焼肉を食べているのだった。

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▲ 「焼肉・冷麺 もりしげ」の店構え。

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「冷麺」750円を注文、しばし待つと、ようやく登場。まず、スープをひと口。これが、とろりとするほどにコクのある立派な冷麺のスープ。麺も弾力があって、噛み心地がとてもいい。牛肉、玉子,胡瓜、ゴマと脇役もいい。「冷麺」こうでなくっちゃ! と満足の一杯だった。ただし、飲食店の店選びで、清潔を優先順位一番に考える方にはお薦めしにくい。

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▲  「もりしげ」の冷麺。

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三たびでかけて、ようやく巡り合えた「食道園」の冷麺は

東京へ戻ると、やはり蒲田の「食道園」が気になりだした。真夏の酷暑のなか蒲田まで電車を乗り継いで出かけると、またもや「CLOSE」の看板。よく見ると、3時閉店、2時ラストオーダーだった。自分の時計を確かめると、2時10分。なんともやるせない。

たまたま「食道園」の向かいが「焼肉・冷麺」の店で冷麺を食べる。これが、シンプルでなかなかの出来、スープにコクがあれば申し分ないのだが。

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▲ 「食道園」の向かいの「焼肉 冷麺 てっちゃん」の特製黒冷麺はなかなかの出来。

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翌日、再び出かける。1時半なので店は開いていたが、「冷麺」、昼は土日以外、ランチではやっていないとのこと。またもや、徒労に終わる。これで諦めるわけにはゆかない。これでは、原稿のオチが決まらない。土曜日に三たびでかけ、ようやく「冷麺」にありつけた。

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▲ 蒲田「食道園」の冷麺。

だが、残念ながら、スープからして期待外れ。冷た~いおしぼりだけは、特記して、褒めてあげたい。


「冷麺」はまた、来年! 30年ぶりの盛岡の「食道園」を目指し、さらに、新しいお薦めを探し出して、ご紹介いたします。

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山本益博 Web LEON ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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