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2023.09.10

【第39回】番外編:焼きそば

謎多き「ソース焼きそば」の名店を食べ歩いてみた

日本初の料理評論家、山本益博さんが群雄割拠する街のラーメン店を自ら実食リポートする本連載ですが、今回は番外編。塩崎省吾著『ソース焼きそばの謎』に刺激を受けた巨匠が名店の「焼きそば」を食べ歩きました。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(LEON.JP)

ラーメン 焼きそば 山本益博 LEON.JP
7月に塩崎省吾著『ソース焼きそばの謎』(ハヤカワ新書)が刊行された。一読して、すぐに再読した。「ソース焼きそば」への興味を掻き立ててくれ、そして、さまざまな「謎」、たとえば「焼きそば」は「なぜ醤油ではなくソースだったのか?」「なぜお好み焼き屋のメニューには必ず焼きそばがあるのか?」そして「ソース焼きそばはいつどこで生まれたのか?」などなど、様々な資料を可能な限り渉猟し、曖昧と憶測を徹底的に排除しながら、事実、真実に迫ってゆく。 

著者のその姿を簡単に「オタク」とか「変態」呼ばわりはできない。真犯人を、証拠を積み重ねて追いつめてゆく鬼刑事のようである。著者へ最大の敬意を払いたい。ラーメンの始祖と呼ばれている浅草「来々軒」説が否定されるなど、目から鱗が落ちる話が満載。ぜひとも、一読をお薦めしたい。
本では、「焼きそば」の歴史で、たびたび浅草が出てくるのだが、いきなり思い出したのが、地下鉄銀座線「田原町」駅浅草方面行きの改札を上がったところにあった「花家」である。階段を上がり始めると、いつも、あの「ソース焼きそば」の香ばしいソースの匂いが鼻を突いてくるのだった。  
浅草 花家 山本益博 LEON.JP
▲ 今は閉店してしまった田原町「花家」。
小学生の時分、浅草と上野の中間、永住町に住んでいて、浅草へ出かける時は、「稲荷町」駅から地下鉄に乗った。雷門あたりに出かけたい時は終着駅「浅草」で降りるのだが、繁華街の六区へ行きたい時は、一つ手前の「田原町」が便利だった。だから、子供のころからどれほど「花家」のソース焼きそばの匂いを嗅いできたことだろう。
それが、2021年5月末に店を閉めたので、いまはもう「田原町」駅の階段には、漂っていない。なんとも懐かしい記憶である。

浅草に昔から「ソース焼きそば」を食べさせてくれる店が多かったのは、舘林から製粉された小麦粉が東武鉄道によって「浅草」駅(現在のスカイツリー駅)まで運ばれ、そこから各地に運ばれていったからだという。それが明治の末のこと、浅草に数多くあった支那料理屋もそれゆえだという。
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「デンキヤホール」「みかさ」「浪花家総本店」「玉屋」……それぞれに味わいが 

「花家」はないが、今でも高見順の小説『如何なる星の下に』で有名になったお好み焼き「染太郎」は健在だし、露地をはいると、お好み焼きの店が何軒もある。
本で紹介されている浅草・千束の「デンキヤホール」は、今や地元の方たちのオアシスのような軽食・喫茶の店だが、ここへ出かけて「オムマキ」をいただいた。ソース焼きそばを、オムライスの如く薄焼きたまごで包んだものだが、なんともハイカラな味のする懐かしい焼きそばである。 
デンキヤホール オムマキ 山本益博 LEON.JP
▲ 「デンキヤホール」の「オムマキ」。
デンキヤホール オムマキ 山本益博 LEON.JP
▲ 「オムマキ」を割ると中はこんな風。
SNSで調べれば、焼きそば専門店が神保町にあり、鰻の寝床のような「みかさ」でいただいた。自家製麺の焼きそばでソース味がめっぽう強く、若者たちが、コップの水を飲み呑み、食べていた。 
みかさ やきそば 山本益博 LEON.JP
▲ 「みかさ」の「やきそば ソース」。
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さらに足を運んだのが、麻布十番のたいやき「浪花家総本店」。ここでは毎年夏になると、クーラーのない扇風機のみの1階の奥のテーブルで、まず、たい焼き1枚と氷宇治をいただく。たい焼きを片手に、かき氷を食べると、氷宇治金時を温冷で楽しむようなもので、そのあとに、順番は逆だが「焼きそば」で締める。割り箸でいただく「ソース焼きそば」が、キャベツ主体であっさりした、なんとも下町風なのだ。 
浪花家総本店 氷宇治 たい焼き 山本益博 LEON.JP
▲ 「浪花家総本店」の「氷宇治」と「たい焼き」。
浪花家総本店 焼きそば 山本益博 LEON.JP
▲ 「浪花家総本家」の「焼きそば」。
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最後は、やはりお好み焼き屋の「ソース焼きそば」を食べなければ、今回の話が完結しない。私のお気に入りは吉祥寺・四軒寺「玉屋」の「五目やきそば」。最初に、えび、いか、たこと豚肉、野菜それに揚げ玉を鉄板で炒め、そばを丁寧にからめて、調味料のソース、鰹節、青海苔をかけ、紅しょうがを添えて出来上がり。ゆうに2人分はあろうかというボリュームだが、ふうふう言いながらあっという間に平らげてしまう。うまいの、なんの!
玉屋 五目やきそば 山本益博 LOEN.JP
▲ 「玉屋」の「五目やきそば」。
玉屋 五目やきそば 山本益博 LOEN.JP
▲ 「玉屋」の「五目やきそば」完成形はこちら。
玉屋 豚天 山本益博 LOEN.JP
▲ 「玉屋」の「豚天」も美味しい。

浅草・千束「デンキヤホール」  HP/denkiya-hall.jp
神保町「みかさ」  HP/mikasain.com
麻布十番「浪花家総本店」  HP/azabujuban.or.jp
吉祥寺・四軒寺「玉屋」  Instagram/@no_okonomiyaki_no_life

山本益博 LEON.JP  ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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