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2023.01.15

【第23回】「牡蠣」の最強ラーメン

冬にぜひ食べたい「牡蠣」の最強ラーメンはどこだ?

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(LEON.JP)

牡蠣ラーメン 山本益博 LEON.JP
日本のレストランで「生牡蠣」が食べられなくなって久しい。今から40年ほど前の1980年代半ば、冬場に伊勢志摩の賢島にある「志摩観光ホテル」に出かけると、前菜に的矢の生牡蠣を食べるのが常だった。当時の高橋忠之料理長によれば、的矢で牡蠣を養殖している佐藤忠勇翁に敬意を払い、決して火を通した牡蠣をメニューには載せないとのことだった。潮の香りに満ち、まるで海のミルクとでも言いたいような的矢の無菌牡蠣は比類のない味わいだった。
ある時、高橋総料理長が、手にブルゴーニュの銘酒シャブリを下げて、私を的矢まで案内してくださった。90歳を超えた佐藤翁に会わせてくださるとのことで、研究所の所長のような白衣を身につけられたご本人は永年牡蠣ばかり面倒を見てきたためか、深いしわのお顔が牡蠣にそっくりのように見受けられた。

この佐藤翁がご馳走してくださったのが、ドラム缶で薪を焚いた上に網を渡し、殻付きの牡蠣を乗せ、殻の口が開いたところを見計らって、何もつけずにいただく焼き牡蠣だった。澄んだ冷たい空気の中でいただく焼き牡蠣とシャブリの美味しかったこと!
牡蠣ラーメン 山本益博 LEON.JP
的矢はスペイン村が出来て以来、牡蠣の出来栄えがいまひとつとなり、その後に知った、三陸は気仙沼の先、唐桑・水山養殖場の畠山重篤さんの養殖された牡蠣をいただくようになった。殻つきのまま東京まで送ってもらい、殻から生牡蠣を取り出し、そのまま食べるだけでも極上の味だが、それをカキフライにすると、信じられない味になった。東日本大震災前まで、我が家の冬の定番メニューだった。
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まるで「牡蠣のポタージュ」な「麺や佐市」の「牡蠣・拉麺」

こうして、私は筋金入りの牡蠣好きになったのだが、近年まで、ラーメンに牡蠣が使われているとは知らなかった。

一番びっくりしたのは、錦糸町「麺や佐市」の「牡蠣・拉麺」(Oyster Ramen noodles)である。玄関の看板には「牡蠣だし 無化調ラーメン」とあり、店内の壁の張り紙の説明では「牡蠣をたっぷり使い旨味を凝縮して抽出しました! 結果、もの凄く濃厚で旨味がたっぷりの麺や佐市のラーメンが完成!!」とある。
麵や佐市 牡蠣ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 「麺や佐市」の「牡蠣・拉麺」。
スープをひと口いただくと、まるで「牡蠣のポタージュ」なのである。

ニューヨークのグランドセントラル駅構内にある「オイスターバー」に出かけると、生牡蠣とともに必ず注文するのが「ニューイングランドクラムチャウダー」で、これは出汁をあさりから取ったクリームスープ。これの牡蠣版だと思うと、牡蠣好きにとっては贅沢極まりない。

ヨーロッパにあるかというと、フランスやベルギーにはムール貝を白ワインで蒸した「マリニエール」はあるが、牡蠣のスープは聞いたことがない。韓国にも「ムール貝のスープ」があるが、「牡蠣のスープ」もあるのだろうか。

「佐市」の「オイスターラーメン」には、海苔、ねぎ、青味、それに小粒の火入れした牡蠣が盛られている。中細の麺との相性も申し分ない。真冬の何よりのご馳走である。
佐市 牡蠣ラーメン 山本益博 LEON.JP

「麺や佐市」

住所/東京都墨田区錦糸4-6-9 小川ビル1階
TEL/03-3622-0141
Facebook/麺や 佐市 | Sumida-ku Tokyo

現在は、焼津に移転してしまったが、常盤台の「Soupmen」の「牡蠣塩らぁ麺」も素晴らしかった。塩味のスープの上にたっぷりと牡蠣のピューレがかかっていて、牡蠣の風味が抜群の一杯だった。いつか、焼津に出かけて、あの味に再会したいと思う。
Soupmen  牡蠣ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ かつて常盤台の「Soupmen」で食べた「牡蠣塩らぁ麺」。現在の「Soupmen」は焼津。Twitter/Soupmen スープメン(@Soupmen2)さん
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都内の注目“牡蠣”&“貝”ラーメンを一気にご紹介

杉並・方南町「クラム&ボニート 貝節麺raik」の「貝節潮そば」も美味しい。出汁は「あさり・しじみ・牡蠣」だそうで、牡蠣の風味はさほど強くないが、貝出汁のバランスが申し分なく、まあるい潮の味にまとまっている。「しじみ」と言えば、宍道湖のしじみを使った、西六郷の「琥珀」があるが、この店については、またいつか。
クラム&ボニート 牡蠣ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 「クラム&ボニート 貝節麺raik」の「貝節潮そば」。
牡蠣ラーメン 山本益博 LEON.JP

「クラム&ボニート 貝節麺raik」

住所/東京都杉並区方南2-21-21
TEL/03-5913-9119
Twitter/貝節麺raik(@CB_raik)さん

中野の「ただいま変身中」の「牡蠣ラーメン」も面白い。牡蠣の出汁に豆乳を合わせ、バーミックスで軽く泡立てたスープは牡蠣の風味が豊かな優しいポタージュ。牡蠣も添えられていて、ほうれん草との相性がとてもいい。フランス料理のアイデア満載。牡蠣ご飯を一緒に食べる若者が多い。
ただいま変身中 牡蠣ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 「ただいま変身中」の「牡蠣ラーメン」。
ただいま変身中 牡蠣ラーメン 山本益博 LEON.JP

「ただいま変身中」

住所/東京都中野区中野5丁目53-3 松本ビル101
TEL/03-5942-6636
HP/ただいま変身中 中野の牡蠣ラーメン

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最後にご紹介するのは、最近オープンしたての荻窪「蛤麺しちり」。下北沢の「貝麺みかわ」の姉妹店だそうで、荻窪駅前にできた。店名通り「はまぐり」のスープを売り物にしていて、「蛤麺」のほか「冬季限定メニュー」として「牡蠣とポルチーニの醤油そば」がある。牡蠣のピューレが添えてあり、ポルチーニ茸の香りがさらに高ければ、とてもユニークなラーメンと言えそうだ。
蛤麺しちり 牡蠣ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 「蛤麺しちり」の「牡蠣とポルチーニの醤油そば」。

「蛤麺しちり」

住所/東京都杉並区荻窪5丁目28-10
TEL/03-5335-7280
Twitter/蛤麺しちり(@shichiri_ramen)さん 

山本益博 LEON.JP  ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

山本益博 YouTube  MASUHIROのうまいのなんの!

山本益博さんがYouTubeを始めました!

日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
YouTube/MASUHIROのうまいのなんの!

「山本益博のラーメン革命!」、他の記事はこちらから!
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