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2022.12.25

【第22回】「トイ・ボックス」(東日暮里)

東日暮里の奇跡「トイ・ボックス」のラーメンはエレガントの極みだ

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(LEON.JP)

トイ・ボックス 山本益博 LEON.JP
2020年に初めて東日暮里にある「トイ・ボックス」へ出かけた時のメモがある。

東日暮里「トイ・ボックス」
かぎ型カウンター8席のみ。ラーメンは醤油、塩とあるが、どちらも鉢型のどんぶりに麺、スープ、チャーシュー、穂先メンマ、青味の簡潔した一杯。スープをひと口いただくと、仕上げにかけまわした鶏油が利いて旨味滋味が口中に広がっていく。切り立てのチャーシューも秀逸で、麺、スープ、具を交互に食べ進むうちに陶然となってゆく。最後はスープをゆっくりと飲み干す。店を後にして思い浮かんだ言葉はなんと「甘露」だった。
トイ・ボックス 山本益博 LEON.JP
▲ 「トイ・ボックス」のご主人、山上貴典さん。
そして、1週間後に仲間を誘い、再び出かけた。「甘露」の感想を今一度確かめたかったからである。券売機でチケットを買い、並び直して席に着いた。いよいよラーメンが目の前に運ばれてきた時、丼を差し出しながら「山本さんですよね?」と不意にご主人から声をかけられた。

それまで、ラーメン屋に出かけても、店の人から声をかけられたことは、まずなかった。食べ終えたところで、再び、ご主人が「親父が山本さんのファンで、家に本がいっぱいあります。そのご本人がいらしてくださったので、びっくりしました。先日いらしてくださった時、お声をかけようと思いながら、かけそびれてしまい、とても残念な思いをしていたので、まさか、すぐにまたお見えになるとは」とおっしゃった。40年前から食べ歩きをしていると、世代を超えた話も出てくるわけである。
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トイ・ボックス 山本益博 LEON.JP
▲ 「トイ・ボックス」の醤油ラーメン(950円)。
「トイ・ボックス」の醤油ラーメンは、醤油ベースであるのに、生醤油の辛さを感じさせない。仕上げの最後に、丼にひと廻ししてかける鶏油がアクセントになっていて、ひと言でいえば「エレガント」なラーメンである。
トイ・ボックス 山本益博 LEON.JP
▲ 「トイ・ボックス」のワンタン塩ラーメン(1150円)。
ご主人の山上貴典さんは昭和49年生まれの48歳。子供のころからラーメンが好きで、それが嵩じてラーメン店主になってしまったという。
そして、ある時、思いもよらないラーメンに出会った。それが「69’N‘ROLLONE」(現尼崎市塚口「ロックンビリ―S1」)嶋崎順一さんのラーメンで、衝撃を受けたという。山上さんはいま、その嶋崎さんに憧れ、その背中を追い続けているとのこと。つまり「トイ・ボックス」の醤油ラーメンは、嶋崎さんのラーメンがベースになっているということである。

先日、塚口まで出かけて、列に並んで「ロックンビリ―S1」のラーメンを食べてきたが、「トイ・ボックス」のラーメンはまったく負けていなかった。ガラではなく、鶏と水のみで出汁をとり、醤油は10種をブレンドしてタレを作っているという。
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トイ・ボックス 山本益博 LEON.JP
▲ 尼崎市塚口「ロックンビリ―S1」の「醤油らぁ麺 尼ロック」(1000円)。
「トイ・ボックス」で「醤油ラーメン」を食べ、店を後にした時、ふと心に浮かんだ言葉が「甘露」だったが、こんな感想を抱いた体験は初めてのことで、この時以降、ラーメンをさらに丁寧に注意深く食べようと心に誓ったほどである。

「RAMEN OF THE YEAR」のTRY大賞2年連続受賞は快挙だが、「ミシュラン東京」でもラーメンが初登場した2015年版から2023年版まで連続してビブグルマンである。「ラーメン」ではなぜか出入りが激しく、15年版からビブグルマンを獲得し続けているのは、私の知るところ「金色不如帰」と「トイ・ボックス」のみである。
トイ・ボックス 山本益博 LEON.JP

トイ・ボックス

住所/東京都荒川区東日暮里1-1-3
営業時間/11:00~15:00、18:00~21:00(日・祝は昼のみ)
定休日/月曜・第2火曜
TEL/03-6458-3664(営業時間外のみ対応)
HP/公式サイト

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山本益博 LEON.JP  ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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