2026.08.06
【実機レビュー】小さな存在感で、圧倒的な世界観。 DJI「Osmo Pocket 4」と過ごして、見えてきたもの
雑誌でもWEBでも、動画はもはや欠かせない時代になりましたね。旅先や出張先で、できるだけ身軽に、それでいて自然な映像を撮れる機材はないかずっと探し続けていたんです。連れ出しても億劫にならず、思い立った瞬間に撮れて、相手にカメラを意識させない。そんな一台を。
- CREDIT :
写真・文/市村広平(LEON)
旅や出張に、本当に連れて行けるカメラとは?

▲ Osmo Pocket 4。
編集という仕事柄、ホテルやレストラン、職人さんの工房で、人と言葉を交わしながらカメラを回す場面が本当に多いんです。一眼を持ち出せば画は文句なくきれい。けれど、出先で一日中首から提げて歩くには、いささか大げさですよね。ならばスマホだけで十分かというと、画質もデータ管理も、SNSへの連結も申し分ないけれど、手ぶれを考えるとこれも少し違う。そんなことを考えながら、これだ、という答えにはたどり着けずにいました。そこで今回、二つの組み合わせを実際に試してみたんです。
(1) iPhone+ジンバル
(2) DJI Osmo Pocket 4
本体からカメラを切り離せるアクティブカメラのタイプもありますが、バッテリー駆動時間が短いものが多いので、そちらは断念。
「やっぱり、かさばる」が正直な感想
まず手にしたのは、スマホ+ジンバル。画質は申し分ありません。歩きながらでも映像は滑らかで、クラウドと自動で連携してくれるので動画データの吸い出しも必要なく、実に優秀です。ただ、正直な感想を言えば——やっぱり、かさばる。ジンバルは、折り畳んだ状態で持ち運ぶものです。ですから「あ、コレ撮りたい!」と思った瞬間に、案外シャッターチャンスを逃してしまう。カバンから取り出し、ジンバルを広げ、スマホを装着。マグネットだけでも装着可能ですが、ちと心許ない。結局クリップで挟んでからマグネットに預ける。ひと手間ぶん、さらに遅くなるわけです。
その数十秒が、旅では意外と致命的。「あ、いまだったのに」という景色や、人の表情は、たいていその隙に過ぎ去ってしまいます。さらに厄介なのは、スマホが撮影専用ではないということでした。仕事の電話も鳴るし、見知らぬ街を歩けば地図も見たいし、メールにも返さなければいけない。そのたびに撮影を止め、スマホを外し、また取り付ける。つまりスマホ+ジンバルは、付けたり外したりしながら使うものではなく、ずっと付けっぱなしにしておかないと成立しないのです。使ってみて痛感したのは、取り回しの困難さ以上に、仕事道具と撮影機材を一台のスマホに兼ねさせる、ということの窮屈さでした。
イタリアで2度盗難に遭っているセキュリティレベル1のワタクシとしては、旅先で荷物が多い=怖いのです。特にイタリアではそれだけで狙われる対象になってしまいますゆえ、できるだけ荷物を持ち歩きたくない。荷物が増える。これが私には何より煩わしかった。
Pocketシリーズは、「撮ろう」ではなく「撮れる」カメラ

▲ ジャケットの内ポケットに収まるサイズは、想像以上に大きな武器になります。
一方のOsmo Pocketシリーズは、まるで印象が違います。私が以前使っていたのは初代Osmo Pocketで、いまよりさらに小さかった。ジャケットの内ポケットに滑り込ませると、「あれ、どこにしまったっけ」と探すほどです。小さすぎて、手から落としそうになることもあった。けれど、その小ささこそが探し求めていたものでした。ボタンを押せば、すぐに立ち上がる(初代のハナシ)。撮る・しまう・また撮る。このテンポが、とにかくスムースで心地良い。Vlogのように一日中カメラを回す使い方だと、この差はかなり効いてきます。
スペックを見比べると、どうしてもセンサーサイズや画質に目が行きますが、実際に使ってみて一番効いてきたのは、「撮るまでの時間」でした。撮りたいと思ってから、数秒で撮れる。撮り終えたら、数秒でしまえて手ぶらに戻ることができる。この小さな"差"の積み重ねが、最終的には撮影本数の"差"となっていったのです。「撮ろう」と構えるのではなく、今だと思った瞬間にポケットから取り出して「撮れる」。この機動力は旅先で想像以上の武器になります。
イイ顔は「OK〜チェックしま〜す」のあとにくる
これは、16年撮影に携わってきて、いちばん実感していることなのですが。ロケではたいてい「はい、OKでーす。チェックしま〜す」と声をかけたあと、フォトグラファーがカメラのファインダーから目を離した瞬間に、モデルはいちばんいい表情になります。カメラが回っている時は理想的な立ち方、表情をつくってくれて、それはそれでもちろん格好良い。ですが、たいてい現場で最高の一枚というのは、格好いい「モデル写真」ではなく「その人らしい写真」なのです。
その服を着させられているのではなく、ずっと愛用してきたかのような、スタイルがにじみ出るそんな写真。その"人らしさ"は多くの場合、カメラが回っていない時にふっと出るものです。男女の絡みの場合はお互い緊張しているからなおのこと、スイッチオフの時にいい顔をする。これがどうにも悔しくて。カメラマンによくお願いしたものです。「ボクがOKと言ったあとも、モデルに気づかれないように何カットか切ってください。ピントは来ていなくて構いませんから」と(笑)。結局、狙った自然体を完璧に収めることはできませんでしたけど、その経験があったからこそ、「Osmo Pocket 4」を手にした時「これ、近いかもしれない」と思えたのかと。
加えて、パン操作範囲(カメラレンズの水平方向の可動域)が58°〜-258°もあるため、本体は正面を向いたままで、レンズだけを横(なんなら斜め後ろ)にいる対象へひと知れず向けることができる。これはジンバルにはできない動きです。しかもオールブラックのボディはレンズが目立ちにくく、被写体との距離感を壊しません。この「存在感の薄さ」は、風景だけではなく、人を撮るカメラとしても大きな武器となってくれたのです。
この映像は、仕事ではありません。休暇で訪れたスリランカで、純粋に旅を楽しみながら撮ったものですが、それでも気づけば「Osmo Pocket 4」を手にしている時間が一番長かった。ホテルにいる時も、街を歩いている時も、誰かと話す時も。「撮ろう」と身構えて使うカメラではなく、「気づけば撮っているカメラ」。小さな存在感で、圧倒的な世界観。これがを使ってみた私の率直な感想です。
私は初代から「Osmo Pocket 4」へのアップグレードだったため、ズーム機能はもとより、スクリーンサイズのインチアップ、暗所での撮影の進化、この2点にもっとも強く感動を覚えました。それでいて本体サイズはそれほど大きくなっていないというのが驚異です。
二つ目の動画は、私がいま主戦場としている、北海道美瑛町の畑で撮り下ろしたもの。16ヘクタールの畑に赤麦という絶滅品種を植えているのですが、朝、昼、夕と光が刻々と変わるその時の畑の表情を撮影したくてトライ。光の質感を美しくとらえ、逆光でもディテールが潰れることはありません。そしてここでも小さな存在感が畑作業の邪魔をせず、大いに役立ってくれたのです。小さいは正義。冒頭の麦を摘む音は、マイクは繋げていませんが、きっちり音が拾えているのもGoodですね。次はMicシリーズと繋げて”音”にフォーカスした動画を撮ってみようと思います。
番外編として「Air 3S」も試してみた
もう一台試してみたかったのが、Air 3S。ドローンカメラマンに「初心者が一台買うなら?」という問いに対して口を揃えていうのがこの「Air 3S」。さらに気になっていたのは、自動追尾モードです。対象を追いながら滑らかに飛び続ける映像は、これまでひとりでは撮れなかった画ですからね。これは、映像を観ていただくのが早いと思います。
「Osmo Pocket 4」が「ひととの距離」を撮るカメラなら、「Air 3S」は「ロケーションのスケール」を撮るカメラ。この二台があれば、旅の映像表現はぐっと広がるはずです。今回の記事では編集者としての"使用感"を綴ってみました。次回はカメラ・ガジェット担当による製品レビュー、およびDJI本社からのリポート記事お届けしますので、お見逃しなく。
■Osmo Pocket 4
価格/7万9200円
重量/190.5g
サイズ/144.2×44.4×33.5mm(長さ×幅×高さ)
タッチ画面サイズ/2.0インチ
動作時間/約240分
HP/www.dji.com/jp/osmo-pocket-4
■Air 3S
価格/15万480円(DJI RC-N3付属)
重量/724g
サイズ/214.2×100.6×89.2mm(折りたたみ時・プロペラ除く/長さ×幅×高さ)
センサー/1インチCMOS+1/1.3インチ(70mm中望遠)デュアルカメラ
動作時間/最大45分
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