2017.08.25
ITジャーナリスト林信行が予想する、すべてのクルマをAIが運転する日
急速な進化を遂げているAIが、車の世界に大きな革新をもたらしつつある。そのもっとも重要なテーマとなるのが自動運転技術だ。すべての自動車が自動運転になる未来を、ITジャーナリスト林信行が考察する。
- CREDIT :
文/林 信行

AIが運転するクルマは事故らないのか?
今年に入ってからドローンブームで培われた技術でつくる「空飛ぶ車」に関する発表が相次ぎ、米Uber社が2020年までに空飛ぶタクシー実現を目指す目標などを発表している。
しかし、今、自動車業界が考える「未来の車」の本命はこれらとはかなり異なる。2017年、自動車業界がもっとも真剣に取り組んでいる「未来の車」は自動運転車だ。
車に乗り込んだらマイクに向かって目的地を告げ、あとは目的地までただ座っているだけ。かっこいいアクションシーンにはおよそつながりそうにない。だが、この技術により毎年、世界中で大勢の犠牲者を出している交通事故を激減させ、いずれは自動車移動を新次元のスピードにまで引き上げ、社会構造を変える可能性まで秘めているとしたら。
この自動運転車で人に代わって運転を行うのは、最近よく耳にするAI(人工知能)だ。車の前後左右につけられたカメラで周囲360度の映像を死角無しで確認し、人間では見逃してしまうようなはるか先の標識や工事の様子、突然飛び出してきそうな人や自転車も正確に把握し対処する。
交通事故は、それぞれで細かな状況も対処方法も異なるものだが、グーグル社が開発する自動運転技術、WaymoのAIはシミュレーション上ではあるが世界に実在する道路を年間10億マイル(16億Km)走行し、既に累積で50億Km以上、人間が300年かけて走る距離を走行した経験値を積んでおり、難しい交通状況にも人間よりはるかに冷静かつ正確に対処できる。一方、Tesla社が開発している自動運転技術もすでに人間のドライバーより2倍以上安全とされている。
すべてのクルマが自動運転になる時代はくるのか?

AIもコンピューターなのでメーカー側が予想していなかったバグによる誤動作の可能性もあれば、ウィルスやハッカーによる乗っ取りの危険性も心配されるところだ。
しかし、それ以上に大きな障壁となるのは法律の問題だろう。そもそも道路交通に関する国際条約「ジュネーブ道路交通条約」では、公道を走行できる自動車は「常時人間が運転する」と定義されている。また自動運転車といっても事故を0にできる保証はない。万が一の事故が起きてしまった場合、その責任を車の持ち主が持つのか、自動車のメーカーが持つのか、といった損害賠償責任上の問題もある。
さらに事故不可避の状況、例えば車に乗っている人か目の前にいる歩行者のどちらかを犠牲にしなければならないような状況にどう対処すべきか、など倫理的な議論に決着がつきにくいことも大きな要因の1つだ。
自動運転車が製品化されたからといって、現在の車をすべて捨てて、一斉に世界中の車を自動運転車に切り替えられるわけではない。となると人間の運転する自動車が間違って衝突することもある。
そういった問題・課題を考えていくと自動運転車の製品化が即無事故時代の到来にはつながらないといえるだろう。
実際に長距離を同じ方向に移動する車同士がカルガモ親子のように隊列を組んで高速移動する技術がかなり前から研究されており、特に物流用トラックへの応用が期待されている。
すべての車が自動運転になり運転手が不要になれば駐車の仕方も変わるだろう。車を停めたあとドライバーがドアを開けて降りてくる必要がないから、ビッチリと左右の車間を詰められるからだ。
このようにすべての自動車が自動運転になる時代を想像すると、今日とはかなり違う自動車社会が見えてきて夢が広がってくる。多くの研究者やメーカーは、現在、そんな時代も見据えながら、まずは自動運転車の一早い製品化を目指して研究を進めているところだ。
すでにそうした研究から誕生した自動ブレーキなどの安全支援技術や、ユーザーの運転を補助するアダプティブクルーズコントロールなどの技術が少しずつ発売中の自動車にも取り入れられ始めている。
現在、車はスマートフォンのようにソフトのアップデートで機能を追加できるように進化をしているところだ。遠からず、国の法律で認められれば、ソフトウェアのアップデートをかけて半自動運転(緊急時にだけ人間の運転に切り替わる)や完全自動運転にできる車が登場するかもしれない。













