フォトグラファー仁木岳彦のイタリア日記

ピッティ、レオンパーティーと「リアルクローズ」

仁木 岳彦
上智大学新聞学科卒。旅の途中、イタリアにただならぬ縁を感じ、2000年からミラノ在住。撮影対象は興味の赴くまま、テーマはむしろ神々しい光の空気感。

メンズファッションの記事を丹念に読んでいくと、いつか必ず
フィレンツェで行われる展示会「ピッティウオモ」の話題に打ち当たるはず。
「それって、ミラコレと比べて、そんなに大事なの?」という
疑問を持つ方もいるかと、、、どうっすか?


ミラノコレクションには、レディースだけでなく、
当然メンズのショーもあり、、、知っての通り、時代と格闘しつつ、
半歩先未来の気分をファッションで表現するっていう飽くなき試みを
繰り広げてるわけなんすが。。。ただ、ファッションショーってのは、
女性性や男性性の未来像やファンタジーを表現するモノですから、
多少現実的でないものも含まれるみたいっすね。女性の場合は、
そんなファンタジーを現実に反映させても華があって、
良い感じになる場合も多々ある様ですが、どうもメンズの場合は
難易度が高いすっね。男性の方が保守的だからっすかね???
メンズのショーに出てくる男性像を、そのまま現実に反映させてみると、
どうもフェミニンな感じになったり、アバンギャルドで
未来映画の主人公みたくなったりで、、、セルフイメージに
ブレない軸を持っている人なら似合うのですが、自分にかなりの
自信がないと着こなせない感じなんすよね。

その点において、展示会「ピッティウオモ」に出展しているブランドは、
「リアルクローズ」、要するに実際に道端でも簡単に着こなせる
服に焦点を絞っている場合が多いので、そこでのトレンドも、
商売的にはとても大事なんでしょう。ヨーロッパ人の主流が考える
「スノッブ文化としての(時にはアバンギャルドな)気取った
ファッション」という文脈からは外れてるのかもしれませんが、
実際は、巨大なマーケットがあるわけです。


そんな街でも着やすい「リアルクローズ」に焦点を当てた
ジャーナリズムというのは、世界でも割と稀で、なんと日本の
男性誌は最先端を行っているわけです!「うそだろー」って
言われるかもしれませんが、、、ヨーロッパでも
男性ファッション誌はスノップかアバンギャルドを
謳っているモノばかりで、この手の雑誌はないんすよ。
イタリアンテーラーの職人技が効いた「リアルクローズ」の
マッチョでマフィアな着こなしに、「ちょいワル」なんていう
ファンタジーを持ち込んじゃったわけっすからね。
これも、やはり洋服の文化を輸入する側にいたという、
日本人の自由さの御陰かもしれませんよ。ヨーロッパ人には、
そんなファンタジーは思いつかなかったはずですし。


「リアルクローズ」のファンタジーを、勤勉に切磋琢磨した
日本の男性誌の世界観が、最近ではイタリアのファッション関係者にも、
一目置かれている現場を何度か目にしました。
メンズファッションの仕掛人の重鎮の家に招かれた時も、
日本の男性誌がずらーっと並んでるんすよね。ビックリしました。
週末などに昔のハリウッドのスターの写真集を眺めたりするのと
同様に、そんな日本の男性誌を眺めたりするのが、至福の時であり、
インスパイヤーの源だそうですよ。日本人の友人に送ってもらったり、
海外雑誌を売っているオシャレ本屋で手に入れるらしいです。
不思議な感じがしますね、イタリア人が日本のファッション雑誌を
本屋で買うなんてね。


仕事を通して、つぶさに観察するに、そんな日本の
「リアルクローズ」の世界を盛り上げているのは、
ジャーナリズムだけではなくて、バイヤーだったりもする
みたいです。そういや、イタリアのメジャー経済紙の
「Il sole 24ore」の今年のピッティ総論みたいな記事では、
日本のバイヤー達の写真が主役でした。奇をてらった目立つ
服装ではなくて、完全にイタリアンファションをモノにしている
ニッポン男児の三人組の写真でした。絵になりますね。
ルパンと次元と五ェ門を彷彿させます。昔アニメで見た
格好の良い男の原風景を、実写で見た感じ!イタリアでも
マンガ「ルパン三世」は超有名ですから、ファッション担当の
報道デスクも、この三人組を見てきっと思い起こしたに
違いありません!!!「ピッティでは、展示場だけでなく、
バイヤーのファッションそのものも、ショーケースである」てな
タイトルが。写真と記事を読み合わせると、日本のバイヤーが
何を着ているかを注目するのも、ピッティの存在理由だという
文脈になりますからね、あっぱれです。実際、こういう正統的な
ファッションで極めるのは、ホントに難しいはずなんすよね。


あと、聞く所によると、彼らバイヤーはブランドが打ち出してきた
商品を大人しく選んで買うだけではないらしいですよ。例えば、
このデザインなら、この色で展開してくれとか、この縫い方では
ダメだとか、これじゃあ生地の照りが足りないだろーなんて、
うるさく注文をつけるらしいんです。ブランド側も
「じゃ、照りを出しゃ良いんでしょ?」って、スーパーカーが
買えるような値段の洗いのマシーンを導入したりする事もあるとか。。。
うるさい日本のマーケットの話を聞いておけば、
後々他のマーケットでも役に立つはずって算段だとか。
「リアルクローズ」とは言え、毎年毎年、デザインも生地も色も
ドンドン新しいものが出てくる、生き馬の目を抜くような
目まぐるしい世界なわけですからね。ある意味、イタリア人と
日本人のコラボで、コマを進めている場面もあるんだよって話で。。。。

そういや最近、ミラノの高級ホテルに勤める友人に、
「男性で服の着方を知っているのは、イタリア人以外には
日本人しかいないよね」なんて言われた事もありました。
自分たちが自覚してないうちに、、、日本の男性ファッションの
業界も、成熟しつつあるのかもしれません。ほんと、ここ数年ですが、
そういう意味での彼らからの尊敬の念を感じる事が増えました。

いやーでも、油断はできませぬ。

ミラコレの期間には、ミラノで日中韓合同のレオンパーティーが
行われたんすが。。。来ていた韓国人も中国人もなかなかお洒落で、
スケール感のあるナイスガイ、ナイスレディー達でしたよ。
レオンには中国版と韓国版があって、元祖日本版と合同で催した
パーティーでの話です。


編集者の意見の鵜呑みですが、「リアルクローズ」で
レオン的ファンタジーをクリエーションし続ける元祖日本版。
コミュニケーション能力が豊かな韓国版。いわずもがな
巨大マーケットを抱える中国版という役どころがあるそうです。

そういや、世界で活動する芸能人も韓国人が多いですもんね。
あのコミュケーション能力にはかなわない部分があるかもしれません。
そのパーティーも韓国人がオーガナイズしていたとか。パーティーで
流暢な英語で話していたアジア人は大抵が韓国人でしたし。

あと、ミラノのファッション業界のクリエーティブオフィスなんかに
行っても、中国の現代アートが壁に飾ってあるのを
よく目にするんすよね、最近。世界の富が、中国や世界の
中華コミュニティーにも移っている時代性を自覚しつつ、
イタリア人も巨大マーケットを虎視眈々と狙っているわけです。
今や、ミラノのショッピングストリートも中国人だらけですからね。
いわゆるメーカー品が流行った後には、品質の高い
「リアルクローズ」がブレークする可能性を秘めていますし。
ファッション業界に限らず、民族性や文化も含めて中華文明を
理解したいと言うのが、ヨーロッパ人の今時の気分なのでしょう。

ただ、中国は、国の成り立ちからいって簡単なマーケットでは
ないのと、中国人はアジアのファッション発信地「東京」で
何が流行っているかをとても気にしているという事実、
あと話が通じ合えて信頼できる日本人という意味もあって、
アジアや中国などを、まずは日本人の友人を通して知りたいという
想いがあるように、僕は感じています。

そんな背景はともかくも、このレオンパーティーが
かなりの盛り上がりで、、、ミラノっ子でファッションブランドの
PRを渡り歩いている友人も驚いていました。
「ミラノで最高のパーティーだった」とのお言葉。
最初はお世辞だと思ってましたが、どうもそうでもないようで。。。


まず、「ファッション関連のパーティーなのに、
全然スノップさがなくて、気取りのない人ばかりで、
人生を楽しむ余裕がある感じ」との事。まさに雑誌自体が
「スノッブ文化としての気取ったファッション」という文脈を
逸脱した、新しい世界観の上に成り立っている訳ですからね、、、
スノッブに気取る方が格好わるいし、とにかく楽しく
やろうよって言う。。。そんな雑誌の哲学が、そのまま
パーティーに反映されていた様子。ミラノのファッション系
パーティーでは、普通、相手を牽制するような独特な
スノッブな雰囲気がありますからね。それとは真逆なわけです。
ファッション文化の新しい解釈、良いじゃないっすか。


あと、「業界のVIPが、ずいぶんと来ていたわね」とのコメント。
なにせ、ひとつのパーティーに行くだけで、注目成長エリアである
大アジアマーケットをカバーする人達に、たくさん会えるわけですから、
その相乗効果といったら計り知れないものがあるのかもしれません。
日中韓のトライアングルが協力する事で、アジアの存在感が
倍増アピールなわけっすよ。こんな手法もありって事で。。。

「『リアルクローズ』ファンタジーのクリエーションでは、
世界を引っ張るぜ、負けねえぞ!」なんて言うのが今時の
日本男児ファッション野郎の立ち位置なのかな。日々精進!!!

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